「男系男子は女子差別?」国連女子差別撤廃委員会が日本政府に皇室典範について質問

国連女子差別撤廃委員会から日本政府に質問が出されました。

日本語(仮訳なでしこアクション)「皇室典範について、現在は皇位継承から女性を除外するという決まりがあるが、女性の皇位継承が可能になることを想定した措置についての詳細を説明せよ。」
原文英語 “Regarding the Imperial House Act, the provisions of which currently excludes women from succeeding to the royal throne, please provide details on the steps envisaged to enable female succession to the throne. ”

この質問は同委員会が2020年3月9日付で発表した「事前質問リストList of issues and questions prior to the submission of the ninth periodic report of Japan(CEDAW/C/JPN/QPR/9)」に書かれていたものです。

この質問に対して日本政府は報告書で回答せねばならず、日本政府の回答に対して委員会が審査し、勧告を出します。

一度勧告が出る、つまり問題化されると日本政府はまた回答しなくてはなりません。同じ事が繰り返されます。

ある委員会で問題化されると、他の人権委員会でも取り上げられる可能性が高くなります。慰安婦問題も同じでした。

そうすると、「日本の皇室典範は女性差別」が国連のお墨付きで国際社会に広がり、更に日本に逆輸入されて「国連や国際社会も日本の皇室の男系男子は女子差別だと言っているぞ!」と宣伝されてしまうかもしれません。

今回何故このような質問が出たのでしょうか。それは、NGOからの意見書です。

公益社団法人 自由人権協会 」が皇室典範についてNGO意見書(2020年2月28日付)を送っていました。

意見書の内容は

  • 日本の皇室典範が天皇となりうる者を皇統に属する男系男子にしか認めないのは、女子差別撤廃条約の差別の定義に該当する
  • このような法の規定は性差別主義に根ざすものであり、日本社会における女性に対する差別を助長するものである
  • 女子差別撤廃委員会で取り上げるべき問題である

というものです。

この意見書を受けて女子差別撤廃委員会が質問事項に盛り込んだとみて間違いありません。

同委員会の委員らは有識者ではありますが、日本の事情、伝統、文化、ましてや皇室について詳しくしっている委員がいるとは思えません。

委員は会期にジュネーブに集まって条約批准国(189か国)のそれぞれの人権状況を短期間(数日)で審査します。その際、NGOの意見書に書いてあることをそのまま取り入れることがあります。

日本人委員(Ms. Hiroko Akizuki)もいますが、日本の審査に加わることはできません。

女子差別撤廃委員会は、2016年3月発表の総括所見にも皇室典範についての勧告が突然盛り込まれそうになり、発表直前に削除されたことがありました。

2016.3.9 産経 【国連女子差別撤廃委】男系継承を「女性差別」と批判し、最終見解案に皇室典範改正を勧告 日本の抗議で削除したが…

この時は日本政府の抗議で削除されましたが、今回はどうして事前質問リストに載ってしまったのでしょうか。外務省は抗議したのか、それとも知らなかったのか。

NGOからの意見書を真に受けた人権委員会の対応は、最近では2018年11月、拉致問題を扱うはずの強制失踪委員会が慰安婦問題について勧告を発したことがありました。

今回の女子差別撤廃委員会の皇室典範については、事前質問リストに載ったのでこれから他のNGOも同様の意見書を送る可能性があります。

「皇室典範の男系男子は女性差別ではない」「女子差別撤廃委員会で扱う問題ではない」という意見書も送るべきではないでしょうか。

意見書(英文・ワード)は誰でも送ることができます。
宛先 cedaw@ohchr.org

ご参考に、日本の市民団体「国連委信頼性向上協会」が女子差別撤廃委員会宛て送った「女子の皇位継承に関する事項を問題点一覧表より削除するための要請」の日本語版原文英語をご覧ください。

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<参考資料>
◆女子差別撤廃委員会
「日本政府への質問事項リスト」List of issues and questions
prior to the submission of the ninth periodic report of Japan(CEDAW/C/JPN/QPR/9)
※皇室典範については第2パラグラフの最後の三行

自由人権協会が女子差別撤廃委員会に送った意見書
「国連女性差別撤廃委員会の日本政府に対する事前質問票に対する要望事項」
日本語
http://jclu.org/wp-content/uploads/2020/03/289117afc2bbe058a8ea5f5cb82e5a62.pdf
原文英語
http://jclu.org/wp-content/uploads/2020/03/1f05968ea8e23e78810b4d5a7333d860.pdf

◆女子差別撤廃委員会
外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/index.html

国連のサイト
https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/CEDAW/Pages/CEDAWIndex.aspx

現在の委員のリスト https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/CEDAW/Pages/Membership.aspx

◆女子差別撤廃条約
原文英語 国連のサイト
https://www.ohchr.org/EN/ProfessionalInterest/Pages/CEDAW.aspx

日本語 外務省のサイト
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/3b_001.html

One thought on “「男系男子は女子差別?」国連女子差別撤廃委員会が日本政府に皇室典範について質問

  1. 774 says:

    前回は委員長が日本人で草案を事前に知って政府が抗議して削除されたと聞きました。条約には留保が認める条文があります。英国は第1条に関して、モロッコは第2条に関して、ルクセンブルクは第7条に関して、スペインは条文を示さずに王位継承問題は該当しないという留保を付けて条約に加入しています。
    日本は留保を一切付けずに加入した。付けなければ勧告はできるし、以下のように否定しても受け入れられずに繰り返し勧告が行われることになります。外務省の愚行が今回の事態を招いた。加盟国の1/3が留保を付けています。加入後に留保はつけられません。条約から脱退するしかないと思います。

    ——-
    第102回衆議院外務委員会議録第16号8頁。 「皇位継承資格が男系の男子の皇族 に限られていることは、 本条約第1条に定義され ているところの女子に対する差別には該当しない。、、本条約にいう女子に対する差別とは、 性に基づ く区別等により女子の基本的自由および人権を侵 害することを指すわけで、 …皇位につく資格は基 本的人権に含まれるものではない。」 (安倍外務大臣)


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