【報告】「主戦場」訴訟第1回口頭弁論 2019.9.19

映画「主戦場」に抗議します!から「「主戦場」訴訟第1回口頭弁論報告」の記事を転載いたします。
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藤岡信勝

9月19日(木)午後2時から、東京地方裁判所第806号法廷で開かれました。

廷内は、傍聴席から向かって左側が原告席で、原告の山本優美子、藤岡信勝と代理人弁護士髙池勝彦ほか3人が座りました。右側の被告席には、被告の出崎は欠席で、映画配給会社東風の代表社員・木下繁貴と弁護士岩井信ほか4人が座りました。傍聴席はほぼ満員。大雑把にいうと、原告側が約30人、被告側が約10人という比率でした。どういうわけか、被告側の傍聴者は途中から数人、帰ってしまいました。

2時キッカリに裁判官が入廷。全員起立しました。中央が裁判長で、裁判長の左となりは男性、右となりは女性の陪審裁判官でした。

裁判長が口を開き、原告側の訴状と甲(原告側)証拠1~5が出ていること、被告の答弁書と乙(被告側)証拠1~2が出ていることを確認しました。

裁判長から、被告側に「この他に反論を出す予定はあるか」と尋ねました。それに対し岩井弁護士は、「答弁書で完結している。訴状に過不足なく答えているので、これ以上付け加えることはない」と答えました。

裁判長から原告側に、①答弁書への反論、②訴状で「追って主張する」と書かれている著作権に関わる法理論についての新たな主張の展開、の2点について、次回口頭弁論までに提出することを求めました。

ここで、原告側代理人の髙池弁護士が、映画のDVDを証拠として出すよう被告側に求めました。これに対し、被告側は「検討します」と答えました。荒木田弁護士が、「被告側に、出さないという選択肢はあるのか」と訊きました。それに対しては、「使われ方にいろいろあるので、検討します」と答えました。裁判長は、被告側に「検討して下さい」と言いました。

あとでの報告会では、被告側は、DVDを商業的に使わないことなどの条件を付けてくるのではないかとのことです。もし映画のDVDを出さなければ、原告側の主張が100パーセント通ることになります。

このあと、原告の山本優美子、藤岡信勝の両名が意見書を読み上げました。発言時間は両者ともキッカリ5分でした。それもそのはず、5分ということを事前に求められていて、時間を計って臨んでいました。

第2回口頭弁論は11月14日(木)午後2時で、法廷は変わる可能性もあるとのこと。原告の上記①②の文書は、10月30日までに、裁判所と被告側に送達することになりました。

2時25分、閉廷。終了後40分ほど、別室で報告会を行い活発な質疑がなされました。

傍聴者の感想を2件紹介します。

 

■ 佐藤和夫氏

慰安婦捏造映画主戦場訴訟第一回公判に行ってきました。

原告側から山本優美子さんと藤岡信勝先生が出崎氏の嘘により名誉毀損を受けたと上映の禁止と賠償金の請求を求めた。お二人共堂々と論点を明瞭に説明された。

傍聴席は大半が保守側、記者会見の時とは打って変わった状況だった。国内戦では言論、裁判とも負け続けていたので、出崎の映画は左翼側の溜飲を下げた。しかし表現の自由とか著作権とか言って目くらましをしても騙した事実は隠せない。旗色の悪さに左翼側の傍聴者も来づらいと思ったのだろう。

しかし朝日の北野記者、元北海道記者も傍聴しており、左翼側の我が方の情報収集には感心する。

11月14日、二回目の公判(正しくは民事では口頭弁論という-藤岡注記)がある。裁判は長期戦になるのでその間日本の映画館やアメリカの大学で放映されると言う。捏造映画が裁判中も放映されるのを止める為に仮処分の訴訟を起こすそうだ。(正確には検討中-藤岡注記)慰安婦歴史戦の本丸はアメリカである事が明らかになった。

 

■ 関野通夫氏

この問題については、藤岡先生や「発信する会」から詳細な説明がなされており、私が何か書く必要はありませんが、本日、第一回公判を傍聴し、今後もできる限り傍聴するつもりなので、特にかつて吉見義明対桜内文城の裁判公判をほとんど(籤に外れたとき以外)傍聴したので、特にその時との比較などレポートしてみたいと思います。

吉見教授が起こした裁判では、ほとんど常に、傍聴は籤にあたらねばできず、その分早く家を出るとか、くじに当たった篤志家に譲っていただけなければ傍聴できなかったが、今日は、くじ引きもなく、そのために並ぶ必要もなく806号法廷に入廷できました。

このことは何を言っているのでしょう。出崎と吉見の左翼の中における立ち位置が違うのでしょう。出崎を支持する組織的動きは日本ではあまりないのでしょうか。吉見教授は、それなりに人格的にも左翼の中で尊敬されていたのではないでしょうか。そういうものを出崎は持っていないのか、そのバックにいる中野教授もそれほどの勢力はないのか、あるいは出崎は、日本でより、アメリカでのほうがパワーがあるのかいずれかだと思いますが、今後も継続的に見守っていこうと考えています。

一方、出崎の基本的な狙いや作戦をできるだけ早く知る必要があります。普通なら、あれだけの詐欺行為をやれば訴えられるのは当然と考え、それでもよしと考えたのでしょうか。彼を裁判でやっつけることのほかに、出崎は建前上、慰安婦という虐げられた人を擁護するという正義を行っていることになっているのでしょうが、その男が、大勢の人を騙すという不義を行うという矛盾を強調すべきだと思います。

また、彼をアメリカで訴えられないかというようなことも頭に浮かびます。一般的に、アメリカでの損害賠償は、べらぼうに高いと理解していますが。

■ 原告 山本優美子が読み上げた意見書

私は、いわゆる慰安婦問題に取り組む市民団体「なでしこアクション」代表 山本優美子と申します。

慰安婦について世界中に広まった誤解を解き、日本と日本国民の名誉を守るために海外の慰安婦碑や像の設置反対運動、国連の人権委員会やユネスコにおいて慰安婦の真実や日本の立場をアピールする活動を続けてきました。

世界中に広まった誤解とは「慰安婦の強制連行、数20万人以上、性奴隷」です。これらがいずれも真実でないことは、日本政府の見解でもあります。

ところが、海外では、依然として「慰安婦はアジアのホロコースト」のプロパガンタが広がっています。その影響で、私たちが様々な資料を提示して、それが虚構であることを証明しても、「リビジョニスト、ナショナリスト、レイシスト、ファシスト」などと呼ばれることがあるのです。

例えば、私が2014年7月国連の人権委員会に参加した時、何と、国連側のスタッフから「リビジョニスト」と呼ばれました。また、2014年12月、サンフランシスコで講演した時は、プラカードを掲げた人たちから「ヤマモトユミコ レイシスト、ナショナリスト、出て行け」との罵声を浴びました。ニューヨーク市でも同じ様な経験をしました。

慰安婦強制連行説や性奴隷説を否定する立場の私たちは、海外では、このように不当に侮辱され、時には身の危険に晒されることもあるのです。

私が映画「主戦場」に登場するに至った経緯(いきさつ)を説明します。

私が役員の一人である「歴史の真実を求める世界連合会」という団体が、2016年5月23日、議員会館で米国グレンデール市慰安婦像撤去訴訟の報告会を開きました。当日、上智大学院生で「慰安婦の研究のために報告会のビデオ撮影をしたい」という出崎幹根氏が友人たちと一緒に撮影機材を持って参加し、私は彼らから挨拶されました。

報告会翌日、出崎氏から「件名:上智大学院の出崎幹根のドキュメンタリーインタビューご協力のお願い」のメールを受信しました。メールには丁寧な日本語で次のように書いてありました。

「私は日系アメリカ人で、現在上智大学で大学院生をしております」

「慰安婦問題をリサーチするにつれ、欧米のリベラルなメディアで読む情報よりも、問題は複雑であるということが分かりました。慰安婦の強制に関する証拠が欠落していることや、慰安婦の状況が一部の活動家や専門家が主張するほど悪くはなかったことを知りました。私は欧米メディアの情報を信じていたと認めざるを得ませんが、現在は、疑問を抱いています」

「大学院生として、私には、インタビューさせて頂く方々を、尊敬と公平さをもって紹介する倫理的義務があります」

「これは学術研究でもあるため、一定の学術的基準と許容点を満たさなければならず、偏ったジャーナリズム的なものになることはありません」

「公正性かつ中立性を守りながら、今回のドキュメンタリーを作成し、卒業プロジェクトとして大学に提出する予定です」

私は、出崎氏が在学したと同じ上智大学の卒業生です。海外からの留学生が多かったこともあり、日本で学ぶ学生を応援したい気持ちが強くありました。また、米国で慰安婦問題が広がる中、日系人である出崎氏が慰安婦問題を研究するなら協力したいと思ったのです。

私は、6月11日、母校上智大学四谷キャンパスの教室で2時間ほど出崎氏らのインタビューを受けました。

インタビューに際して、私は、承諾書に捺印しましたが、それは、当然、出崎氏がメールで説明した「学術研究の卒業プロジェクト」であると理解していました。よもや、街中の劇場で入場料を徴収して一般公開するような映画になるなどとは説明を受けませんでしたし、想像もしませんでした。

それから卒業プロジェクト完成の連絡もないまま、2年以上経った2018年9月30日、突如、出崎氏から「10月7日に釜山国際映画祭において公開」とのメール。次いで、2019年2月28日に「4月20日から東京・渋谷を皮切りに、全国で順次公開」とのメールを受信しました。

映画を見ました。「尊敬と公平さ」「公正性かつ中立性」などかけらもないものであることに心底驚きました。

映画は、先ず、冒頭で、保守系の人たちを画面いっぱい大きな文字で「右翼」「ナショナリスト」「歴史修正主義者」「歴史否定主義者」とレッテルを貼ることから始ります。終盤で今度は、私たちを「人種差別主義者、性差別主義者、ファシスト」と罵るのです

もし上智大学院生の卒業プロジェクトでなかったなら、もし一般公開される商業映画であることを知っていたなら、もし「主戦場」のシナリオを知っていたなら、私は、出崎氏のインタビューに協力することなど絶対にありませんでした。なぜなら、冒頭で述べたように、慰安婦の強制連行や性奴隷説を否定する立場の私たちは、特に海外では一方的に酷いレッテルを貼られ、罵られ、時に身の危険を感じることもあるからです。

このような映像が、堂々とドキュメンタリーと称する商業映画となり国内外で一般公開されつづけて良いものでしょうか。既にこれまで公開された間の私たちの精神的苦痛、名誉と尊厳への損害は計り知れません。

私はこの映画の一般公開の即刻中止を求めます。

以上、私は、裁判所の良識を信じて私の意見陳述を終えます。

■ 原告 藤岡信勝が読み上げた意見書

(1)私は、約40年間、北海道教育大学、東京大学、拓殖大学に奉職し、研究と教育に携わって来た者です。専攻は教育学です。現在は一切の職を退いております。

(2)日本で慰安婦問題がテレビを含めメディアで広く取り上げられるようになったのは、1991年の12月でした。

当時、私は文部省派遣の在外研究員としてアメリカにおりましたが1992年8月に帰国してからこの問題を調べました。

すると、秦郁彦という歴史学者が、奴隷狩りが行われたという韓国の済州島で現地調査をしたところ、誰一人そんなことは見たことも聞いたこともないと言っていたことを知りました。

また、西岡力という韓国研究者は、元慰安婦の女性からの聞き取り調査などによって、日本の官憲による強制連行を矛盾無く証言した者はただの一人もいないことを突き止めました。

慰安婦問題とは、日本から補償金を取るためと、日本人が悪逆非道であると世界に印象づけることに利益を感じる勢力によって、日本叩きの目的で捏造された問題であることがわかりました。

今では、日本国内の慰安婦論争は決着がつきました。

(3)2016年9月9日、私は上智大学大学院生・出崎幹根のインタビューを受けました。

この件に関して二つの論点があります。

第一は、インタビューの目的が学術研究だったことです。

私がインタビューに応じた最大の理由は、目的が「学術研究」であったからです。

被告・出崎は、「卒業制作として、他の学生と共にビデオドキュメンタリーを製作しておりまして、ドキュメンタリーは『歴史認識の国際化』をテーマとしています」と書いていました。

私も大学で学生の卒業論文や修士論文を指導していた時には、学外の多くの方々にお世話になりました。

学問研究の世界は一種の共同体で、特に学生の研究にはお互いに協力してやらねばならない、という規範があります。

私は被告・出崎に何の疑念を持ちませんでしたが、ただ一度だけ、強い不審の念をいだいた瞬間があります。

それは、ビデオ撮影が終わって、被告・出崎から承諾書にサインしてほしいと切り出された時です。

こちらは善意で協力しているのになんで承諾書が必要なのか、と腹立たしい思いをしたのです。

「そういう文書にサインするのは私の趣味に合わない」と言ってサインを拒否し、出崎らを追い返しました。

ところが、『ニューズウィーク日本版』6月25日号の朴順梨のレポートでデザキは、承諾書・合意書には「学術プロジェクトとは一切書かれていない」とシラを切りました。

これは詐欺的行為の自白に等しいものです。

アプローチの段階では、学術研究であるとして商業映画であることを徹底的に隠蔽し、映画を公開するときは、それが大学院の卒業制作であることをあくまで否定する。

これはデザキの企画が初めから協力者をペテンにかけて騙すために、巧妙に仕掛けたものだったことを疑問の余地なく示しています。

(4)第二の論点は、私に無断で商業映画に映像・音声を使用することは「合意書」違反であるということです。

指導教官・中野晃一教授から私のサインを貰わなければ研究を始めることはできないと言われた被告・出崎は、藤木俊一氏と交わした「合意書」を送ってきて、これで何とかサインしてほしいと懇願しました。

藤木氏の書き直した「合意書」は、取材される側の権利も書かれていました。

それで私は妥協して、合意書にサインしました。

出崎の行為は合意書の5・6・8項に違反しますが、ここでは、8項のみ問題にしてみます。

8項には、「甲[デザキ]は、撮影・収録した映像・写真・音声を、撮影時の文脈から離れて不当に使用したり、他の映画等の作成に使用することがないことに同意する」と書かれています。

私は、被告・出崎の「卒業制作」には協力しましたが、商業映画に使用してよいという許可を与えたことは一切ありません。

私の許可なく、無断で、私のインタビュー映像等を自分の商業映画に使ったデザキは、「他の映画等の作成に使用することがないことに同意する」という合意書の禁止規定に明白に違反しています。

(5)学術研究は人を傷つけるためにあるものではありません。

まして、学術研究を騙って善意の協力者を騙すこのような行為は決して許されるものではありません。

映画の上映地域の拡大に比例して、私の精神的苦痛、人権侵害の被害は増大しています。

裁判所の賢明なご判断が得られますことを信じております。

One thought on “【報告】「主戦場」訴訟第1回口頭弁論 2019.9.19


  1. >まして、学術研究を騙って善意の協力者を騙すこのような行為は決して許されるものではありません。

    この文章に、「公序良俗の観点から」決して許されるものではありません。。。と入れると、もっと良かったですね。

    「公序良俗に反する行為」は契約書用語で、社会的制裁の対象になります。会社員なら免職の理由になり、アパートの賃借人なら大家さんから追い出される。雇用契約に反して不当に解雇された、賃貸借契約に反して不当に退去要求をされたと訴えても、「あんたのほうに公序良俗に反する行為があったからだ」と反論されたら、裁判所には社会の公序良俗や秩序を守る法の運用をする義務がありますから、契約書の文言にのみ囚われた判断はしません。口頭弁論は、これからも何度かあるようですから、善意の協力者を騙した出崎の行為は「公序良俗に反する」と、どこかでこの文言を出しましょう。


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