文部科学大臣への報告書~上智大学教授中野晃一と元大学院生出崎幹根の「主戦場」 研究不正事件と大学当局の対応について

映画「主戦場」被害者を支える会から文部科学大臣への報告書「上智大学教授中野晃一と元大学院生出崎幹根の「主戦場」 研究不正事件と大学当局の対応について(令和元年10月1日付)」を転載いたします。

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令和元年(2019年)10月1日

文部科学大臣 萩生田光一 殿

ケント・ギルバート
藤岡信勝
藤木俊一
トニー・マラーノ
山本優美子

上智大学教授中野晃一と元大学院生出崎幹根の「主戦場」
研究不正事件と大学当局の対応について(報告)

1 研究倫理の存在理由

上智大学の中野晃一教授とその指導下の元大学院生・出崎幹根(日系二世の米国人)が犯した研究不正事件と大学当局の不誠実な対応について、被害者の立場からご報告いたします。はじめに、研究倫理の存在理由について基本的な位置づけを確認いたします。

一般社会では、法に違反しなければ、ほとんどのことが許容されます。しかし、学術研究の世界では、法を順守するだけではなく、研究倫理規範にも従わなければなりません。そのような倫理規範が独自に存在するのはなぜかというと、それなしには学術研究そのものが成り立たなくなるからです。

研究倫理規範の一つは、「捏造・改竄・剽窃」をしないという規範です。即ち、「嘘をついてはならない」というものです。学術研究において「嘘をつく」ことがありうるとしたら、真理探究の手段としての学術研究はその存在価値を失います。

もう一つの研究倫理規範は、「研究対象者に被害を与えてはならない」という規範です。人の行動や思考その他に関するデータを研究調査の対象とする全ての研究は、研究対象者からの善意の協力がなければ成り立たないものです。もしも、この「研究対象者に被害を与えてはならない」という研究倫理規範が守られなければ、善意で研究に協力する者は被害を受けることも覚悟しなければならない、ということになります。そうなったら、研究協力者は誰もいなくなり、研究基盤が崩壊します。

研究倫理規範に反する研究不正が発覚した場合、研究機関(大学等)は、研究不正を厳格に調べ上げ、再発しないように処分を下さなければなりません。そこに故意が認められた場合は、違反者は学術の世界からの追放をも免れません。もしも、こうした研究不正に厳正な対処がとられなかったとすれば、学術研究が「嘘をつき」「研究対象者を攻撃する」こともあり得るということになります。そうすると、学術研究は成り立たなくなります。ひとたび許されると、別の研究において繰り返されないという保障は何もなくなるからです。

研究不正は、学術共同体全体の信用を左右するものです。信用修復に一次的な責任を負うのは研究機関ですが、個々の研究機関は学術共同体からその調査と処分を委任されているという関係にあります。もしも、当該研究機関に再発防止の自浄作用が働かなかったならば、次に学術共同体全体の付託を受けている監督官庁が、研究不正の解明とともに、研究機関についてもその適格性を問わなければならなくなります。そうして、当該研究不正に関与した研究者と、その是正に失敗した学術機関の両方に処分を実施して、学術研究への信用を回復することになります。

監督官庁がこの信用修復に失敗したとすれば、その国の学術研究は終焉を迎えます。

 

2 研究協力者の安全を保障するインフォームド・コンセント

学術研究において研究対象者の安全を保障するために設けられているのが、インフォームド・コンセントと呼ばれる次のような権利義務確認の手続きです。

第一に、研究対象者には、研究計画の全容について事前に十分に説明を受ける権利があり、研究者には、誠実に説明する義務があります。

第二に、研究者は、研究対象者の研究参加への同意を取り付けた上で、それを書面(研究参加同意書)によって表明してもらう必要があります。

第三に、最も重要な実体的権利義務として、研究対象者には、研究参加への同意をいつでも撤回する権利(撤回権)の行使が認められています。そして、その権利の存在を、研究者は研究開始の前に、研究対象者に明確に伝える義務があります。撤回権行使の具体的効果は、当該研究調査によって入手した研究対象者本人に関わる全ての研究資料を、当該研究で使用させず、また、他の研究を含む一切の別の用途にも使わせないことです。理由の如何に関わらず、本人が研究参加への同意を撤回した時点で、本人から取得した研究資料を回収・破棄しなければならない研究倫理上の履行義務が研究者に発生するのです。

上記3つの権利義務の履行を研究者が意図的に懈怠した場合、「人を対象とする研究」倫理上の重大な研究不正があったことになります。上智大学を含む各大学は、こうした研究不正が起こらないように内規を定め防止に努めています。ただ、個々の大学でどの程度の内規が整備されているかに関わりなく、上記の権利義務関係が成立することは学術共同体の共通了解事項であり、研究者なら誰もがわきまえている自明の規範です。

 

3 出崎の「卒業制作」研究の実施経過

今回の上智大学を舞台とした研究不正事件を時系列的にまとめると次のようになります。

① 大学院生出崎幹根は、指導教員中野晃一教授の指導の下に、自身の学位審査要件である学術研究(卒業制作)として、フィールド研究における聞き取り調査映像によって構成される映像作品を制作する研究計画を立てた。(2016年4月頃と推定される)

② 上智大学では、フィールド研究において聞き取り調査を実施する場合、その研究によって研究対象者に苦痛を与えるなどの利益侵害が起きることを未然に防ぐために、「人を対象とする研究」の倫理委員会の審査を事前に受けることを研究着手条件として定めている。ところが、本研究は、その手続きを完全に無視して研究に着手した。

③ 大学院生出崎は、2016年5月から翌年2月までの期間に、研究対象者8名(本報告発出主体の上記5名に加えて、加瀬英明、櫻井よしこ、杉田水脈の3名)に対してメールその他の方法で個別に研究協力を依頼し、8名のインタビュー映像を研究資料として入手した。

④ しかし、インタビュー調査は、「人を対象とする研究」の実施要件として上智大学が定める要件、即ち、研究対象者への研究計画書の交付、研究同意書書式の交付、同意書面の保管、同意撤回書式の交付、その他インフォームド・コンセントの手続きをことごとく無視して実施された。

⑤ その一方で、大学院生出崎は、インタビュー調査実施時に、学術研究への「研究参加同意書」であるかのように擬装して「承諾書」「合意書」のサインを詐取した。これは、被害者からの予想される抗議に対して法的に対抗するための準備であり、それを後に、商業的に公開された映画への「出演承諾書」であると強弁するための行動であった。

⑥ 指導教員中野晃一教授は、大学院生出崎に対して、上記のかくれた目的をもった「承諾書」の取得を、出崎の学位審査要件である学術研究課題作成の着手要件として課しており、商業映画への映像の転用は指導教員中野教授と示し合わせて行われたものであった。この点について具体的に言えば、承諾書へのサインを拒否した藤岡へのメールで、出崎は「私たちの指導教官(ママ)と話しましたところ、(中略)やはり承諾書へのサインなしには、ドキュメンタリーの製作へ着手することが難しいと言われました」(出崎から藤岡へ、2016年9月12日)と書いている。

⑦ 大学院生出崎は、完成した学術研究課題(卒業制作)を2018年1月10日、上智大学大学院に提出し修士の学位を得たが、卒業制作についても学位取得についても、何ら研究協力者8名には連絡しなかった。

⑧ その一方で、学術研究を通して入手した研究対象者らの研究資料(インタビュー映像)を研究対象者に無断で用いて映画を作成し、2018年10月釜山での映画祭において一般公開し、2019年4月からは配給会社を通して商業映画「主戦場」として日本で一般公開した。

⑨ 商業映画の一般公開後、8名の研究対象者(研究協力者)は、初めて出崎の学術研究の意図と性格を伝え聞くことになり、その内容が、8名の研究対象者(研究協力者)を一方的に攻撃し、反論を許さず、しかも人格的に侮辱するものであることを認知するに至った。

⑩ 7名の研究対象者(研究協力者)らは、5月30日、記者会見を開き、公開されている映画の上映中止を出崎に対して要求した。しかし、出崎は映画配給会社・東風とともに、6月3日、対抗して記者会見し、私たちの要求を拒否した。そこで、被害者5名は、6月19日、出崎と東風を相手取り、上映中止等を求めて東京地裁に民事訴訟を起こした(令和元年(ワ)第16040号)。

 

4 インタビューを受けさせるための詐欺的手口

出崎が私たちに研究協力を求めてアプローチしてきた方法は主にメールによるものでした。アプローチの具体的方法や文面は様々ですが、全てに共通していたのは、「上智大学」の「学術研究」として、協力を依頼してきたことです。出崎が最初にアプローチした山本優美子(上智大学の卒業生)に送ったメールには、インタビューについて次のように書かれていました。

「大学院生として、私には、インタビューさせて頂く方々を、尊敬と公平さをもって紹介する倫理的義務があります。これは学術研究でもあるため、一定の学術的基準と許容点を満たさなければならず、偏ったジャーナリズム的なものになることはありません」(2016年5月24日)
「公正性かつ中立性を守りながら、今回のドキュメンタリーを作成し、卒業プロジェクトとして大学に提出する予定です」(同年5月31日)

もし仮に、一人の映像作家が自身の自主制作映画のためにインタビューを依頼してきたのであれば、私たちは応じていなかったでしょう。映像作家の自主制作映画には、法律以外に何の制約も及びません。他方、出崎の場合には、「学術研究」であるため、研究協力者は学術倫理によって保護されるという期待が存在します。しかも、「上智大学」という権威ある学術機関の信用が、この期待を裏付けています。そのため、私たちは出崎の研究に協力しました。
しかし、このインタビューのプロセスには、出崎の数々の欺瞞が仕込まれていました。まず、上智大学の校章が大きく描かれた出崎の名刺には、肩書きに「大学院生」とだけしか書かれておらず、所属機関が全く不明です。そのうえ、住所や電話番号には四谷校舎の代表のものだけが記載され、連絡先として意味をなさないものでした。E-mailのアドレスも、XXX.sophia@gmail.comという、大学が正規に発行して学生に割り当てるアドレスを擬装するという手の凝ったものでした。もちろん、大学が正規に発行するアドレスのドメインは、XXX@sophia.ac.jpです。この奇妙な名刺が示しているのは、上智大学の権威によって私たちを信用させたいが、決して、身元につながるような情報は与えたくないという意図と作為です。
出崎は、「人を対象とする研究」において交付が義務付けられている「研究内容説明書」などの書式を一切見せていません。被害を受けた一人である櫻井よしこに対しては、唯一、「企画書」なる文書を提出していますが、そこにも「研究内容説明書」において明示が義務付けられている「研究責任者」「研究への参加と撤回」「予測されるリスク」「研究成果の公表」などの重要事項が省かれています。
そこまでして出崎が隠蔽したかった最大の事項は、研究責任者(指導教員)の名前です。その指導教員中野晃一教授は、従前より私たちを敵対視する言動を繰り返していました。映画「主戦場」においても、出演者の中で最長の時間を使って私たちを一方的に批判し、被害に遭った5名を「この顔見てるのは苦痛だなっていう人たち」などと、公の場で露骨に嫌悪の情を示してののしっている人物なのです。さらに、「今になって騙されたなんだって言ってるけど、全部自分がしゃべっている話なんですね」(4月19日、参議院議員会館における講演)などと言い、映画に使われているのが「自分がしゃべっている話」でありさえすれば、どのように騙しても、どのように不当なレッテルを貼って攻撃しても何ら問題ないという論理を展開する、研究倫理感覚が麻痺した人物なのです。
こうして出崎は、研究計画の全容について事前に十分かつ誠実に説明する義務を意図的に怠ることで、私たちから出崎の攻撃意図を見抜く機会を奪い、私たちを攻撃する映画の完成に漕ぎつけたのです。

※補足説明 出崎氏が櫻井よしこに送った企画書

 

5 出崎と中野教授の研究不正

今回の事件を研究不正の観点から整理すると、次の4点が倫理違反となります。

① 参加同意撤回要求に対して研究資料の破棄を履行しない義務違反
研究資料の社会的公表の中止と回収は、学術倫理上、研究協力者に保障された最重要の権利であり、研究者はそれに応じる絶対的な義務があります。5月30日、私たちが「上映中止」という形でこの要求を突きつけたのに対して、出崎はこれを拒否し、現在も映画の公開を続けています。研究協力者からの研究撤回要請を履行しないという行為は、重大な研究倫理義務違反であり、悪質な研究不正です。私たちは、今後、出崎の学位(修士号)の取り消しを大学に求めます。

② インフォームド・コンセントの手続きを履行しない義務違反
出崎は、私たちの取材において、誠実な研究であれば当然に履行するはずの、インフォームド・コンセントの手続きを全く履行していません。研究計画書の交付、研究同意書の交付および同意書面の提示と保管、同意撤回書の交付、その他インフォームド・コンセントの要件などがことごとくネグレクトされました。それによって、私たちを一方的に攻撃し侮辱する内容の映画を作成する意図が隠蔽され、私たちがその被害を受ける前に研究参加を撤回する機会が失われました。

③ 研究着手要件である倫理審査を受けていない義務違反
もしも、出崎が倫理委員会の事前審査を受けていれば、インフォームド・コンセントの手続きを義務付けられたはずです。もちろん、審査を受けなかったからといって、研究倫理上の義務を免れるものではありませんが、上記の②に挙げた事実に鑑みれば、倫理審査の回避は、実質的な研究不正です。

④ 許諾書面を詐取した研究遂行上の倫理違反
出崎は、私たち研究対象者にインタビュー取材を実施する過程において、研究倫理上必要な「研究参加同意書」を全く提示しない一方、「承諾書」なるものへのサインを執拗に迫っていました。この「承諾書」 なる文面は、現在公開されている商業映画への「出演承諾書」であるとして、私たちの抗議に法的に対抗する口実に使われているものです。
もしも、取材の過程で、卒業制作への「研究参加同意書」と、それとは別に商業映画への「出演承諾書」が研究協力者に提示されていたら、どうだったでしょう。「研究参加同意書」にはとりあえずサインするが、「出演承諾書」に対しては、完成して全編を見てから、改めてサインをするかしないかを決めるとしてサインを保留したはずです。
他方、「出演承諾書」だけが示された場合はどうでしょう。研究協力者においては、今しがた受けたインタビュー取材は、学術研究への協力であるという頭があります。学術研究は学術倫理の制約下にあり、研究協力者は保護されるという信頼があるため、サインが卒業制作の完成に必要だと言われれば、「研究参加同意書」のようなものとして受け取り、容易にサインしてしまうでしょう。そして、実際に、何人かは、そのままサインさせられたのです。
そもそも、真面目な研究において、学術研究として作成した映像作品が高評価を博し、配給会社を通じた一般公開を企画するのであれば、その時点で研究協力者に完成した全編を見せて、改めて出演承諾書にサインをもらえばよいことです。そうした手続きを踏まないで、研究調査の過程で研究対象者を法的に拘束しようとする書面を入手しようとすること自体、学術研究に対する信頼を毀損する行為です。ましてや、「研究参加同意書」と錯誤される状況を巧妙に作り出し、のちにそれを盾に法的に対抗しようとするなど、「詐欺」と言われても仕方のないものです。

今回の研究不正は、単なる規定上の手続きの形式的な懈怠ではありません。研究倫理規定の立法趣旨である「研究協力者の権利保護」を侵害することを目的として、規定上の手続きに意図的に違反したのです。本件研究不正は、形式的なものではなく、実質的で本質的なものなのです。

また、以上の研究不正は、直接の実施者は出崎ですが、その最終責任者は中野晃一教授です。中野教授の言動と証拠から、一連の研究不正行為が中野晃一教授の実質的な指導によるものであることは明らかです。

 

6 研究協力者の権利回復の進捗

前述の通り、私たちは5月30日の記者会見において、元大学院生出崎に対して、現在公開中の映画の上映中止を要求しました。出崎には、研究実施者として、研究資料を自身の研究で使用せず、また、他の研究を含む一切の別の用途にも使わない学術倫理上の責任が生じました。しかし、これを、出崎は拒否しました(6月3日の記者会見)。
次に責任履行義務があるのは、研究責任者(指導教員)です。研究責任者が誰であるかは、本人および上智大学当局の隠蔽により長らく確定的には判明しなかったのですが、東京地裁にて係争中の前記民事訴訟の被告側答弁書(9月17日付け)において、研究責任者(指導教員)が中野晃一であることが、初めて公式に判明しました。私たちは、その研究責任者である中野晃一教授に対して、本日付で出崎の「卒業制作」作品及び現在公開されている映画「主戦場」から、私たちの研究資料を回収し、残余の全てのコピーを破棄するよう要求する「研究参加同意撤回書」を配達証明郵便にて送付します。私たちのこの要求に対して、中野教授が誠実に履行する姿勢を示さなければ、故意による研究倫理違反が確定し、処分の対象となります。
中野教授が誠実に履行義務を果たさなかった場合は、履行責任は中野晃一教授の所属する研究機関である上智大学に移ります。上智大学は、回収・破棄を機関の行為として誠実に取り組むとともに、回収・破棄の履行義務に意図的に違反した、出崎および中野教授に対し、故意の研究倫理違反として処分を実施しなければなりません。
上智大学が仮に、この回収・破棄の履行に誠実に取り組まなかった場合、監督官庁(文科省)に責任は移り、監督官庁は指導・省令その他の方法により、同学に対して履行を命じなければなりません。同時に、学術研究機関としての上智大学に対して、研究不正への自浄能力の欠如に関して一定の処分を実施しなければなりません。

 

7 上智大学当局による研究不正調査の懈怠と進捗

被害者の藤岡信勝、藤木俊一、山本優美子の3名は、4月27日、不正な研究が行われた上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科の委員長あてに問題の発生した経緯を説明するとともに、インタビューに訪れた3名の元大学院生に関する質問状を送りました。すると、デヴィッド・ワンク委員長から、出崎本人からの書面による同意がない限り対応しないとの返信があり、回答を拒否されました。つまり、門前払いです。
そこで、6月21日、藤岡信勝は、山本優美子の協力のもと、「告発窓口」として大学が指定している監査室に電話をし、窓口担当者に30分ほど説明をしました。そして、同学の責任者の立場にある学長または研究倫理担当の副学長に説明のための面会のアポを求めました。ところが、当方への返事は、学長・副学長との連絡がつかない、連絡はついたが検討中である、面会するかどうかも検討中だ、いつまでに結論を出すかは答えられない、などの極めて不誠実な、際限のない引き延ばしでした。
上智大学当局において、事件に誠実に向き合う姿勢が全く見られないために、私たち5名はやむなく、出崎幹根および中野晃一の研究不正に関する「通告書」(8月28日付け)を内容証明郵便として代理人経由で、上智学院佐久間勤理事長と上智大学嘩道佳明学長あてに送付しました。すると、事件の最初の告発から実に4か月以上も経過した9月2日、告発者側は、大学が調査委員会を組織する予定であるとの連絡を電話にて受けました。9月4日には、「上智大学における研究活動上の不正行為に係る調査の手続きに関する内規」の規定に従って、大学から9月3日付けの調査委員名簿が送られてきました。しかし、5名で組織される調査委員のうち、研究者は2名であり、驚くべきことに、その両名ともが、明らかに研究上・運動上、中野の人脈に属する人物でした。私たちは、三度、裏切られたのです。当然、私たちは、詳細な忌避理由を記した異議申立書を提出しました(9月11日)。
その後、9月25日付けで、①「通告書」および「異議申立書」を踏まえ、②調査対象事項を改めて検討すべく、③調査委員を一部交代させたうえで、④予備調査の実施を予定している旨の「ご連絡」が学長からありました。しかし、①「通告書」の発出主体は5名であるにもかかわらず藤岡信勝のみを告発者として位置づけ、②交替する調査委員が誰なのかも明示されず、③予備調査の役割は本調査を実施するかしないかの判断材料を集めるものであるため、本調査を取りやめにする意図と可能性も否定し得ないものです。
私たちは四度裏切られるわけにはいきません。そこで、今度は「公開質問状並びに異議申立書」として、本日付けで文書を発出しました。

8 文部科学省への報告

学術は真理を探究するための厳粛な手段であって、人を攻撃するための道具ではありません。そうであるがゆえに、学術には高度の倫理的規範が課されると同時に、その信用が社会的に担保されるのです。今回、研究不正の実行者たち(中野晃一、出崎幹根)がやったことは、人を攻撃するための手段として学術的信用を利用するという、最も悪質なものでした。
ことは、日本の学術共同体全体の信用にかかわる問題です。もし仮に、この研究不正が放免されれば、わが国の学術共同体全体の信用毀損として、日本のアカデミズムは深刻な事態に陥らざるを得ないでしょう。この事件によって、日本の学術研究は危機にさらされているのです。
研究実施者および研究責任者において、研究協力者への攻撃意図が明白であり、権利回復を完全には期待できず、また、研究機関である上智大学の対応も自浄能力に疑いを持たざるを得ないものであるため、本日、やむなく私たちは文部科学大臣に事態を報告することとした次第です。

以上

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