カナダ通信NO.2「カナダ発の慰安婦映画 “The Apology” が全米で放映」

カナダの在住のマリノフ利江さんの「カナダ通信NO.2」をご紹介します。
日本の外に住んでいるからこそ見える日本、カナダの現地の情報などをお届けします。
是非お読みください!

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カナダ通信 No.2

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カナダ発の慰安婦映画「The Apology」が全米で放映

神奈川県茅ケ崎市で上映予定の慰安婦映画、「沈黙-立ち上がる慰安婦」に抗議が殺到しいると産経新聞が報じた。抗議の理由は市と教育委員会が上映会の後援をしているからだという。もしそうなら、Public Broadcasting Service (PBS)が全米で放映する「The Apology」に対しても抗議の声をあげるべきだろう。抗議する相手はカナダ国立映画制作庁(National Film Board of Canada: NFB)である。

「The Apology」は2016年にカナダの中国系カナダ人、ティファニー・ション(Tiffany Hsiung)が監督として初めて制作したドキュメンタリー映画である。問題はこの映画の制作にNFBが関わっていることである。NFBはカナダ文化遺産省の管轄下にあり、ドキュメンタリーやアニメの制作や配信を行っている。

「The Apology」がカナダの国立の機関が制作したこと、そしてそれがNHKの教育番組のような公共放送サービスで放映されることは、慰安婦の強制連行を事実としてお墨付きを与えるようなもので、北米における影響は計り知れない。その上、トロントで毎年開催される北米最大のドキュメンタリー映画祭、Hot Docs Canadian International Documentary Festivalをはじめとする5つの映画際にノミネートされたり賞を取っている。複数の雑誌の映画レビューでも取り上げられ、私が読んだ「The Apology」のすべてのレビューはティファニー・ションの功績を称える内容だった。こうして今までふわっとした慰安婦のイメージしか持っていなかった人々の頭のなかに、日本軍により「性奴隷」にさせられたおばあさんの姿がしっかりと埋め込まれてしまう。

強制連行が無かったことは日本ではかなり浸透してきているが、カナダでは平成27年末の日韓合意などなかったかのように日本に対する非難はまったく衰えていない。

「The Apology」は慰安婦の真実を追求するドキュメンタリーではない。強制連行がなかったことを知っている私たちが見ると「この映画は嘘だ!」と叫びたくなるが、映像と音楽とおばあさんの証言を非常にうまく組み合わせて感情に訴えている。悔しいがこれが成功していると思う。慰安婦のことを知らない人がみたら映画のおばあさんの証言を信じてしまうだろう。

「The Apology」の上映に対して民間人が抗議の声を上げるべきだが、カナダ国立映画制作庁が慰安婦映画が関わっていることに対して外務省からもしっかりと抗議をしてもらいたい。すでに制作されてしまった「The Apology」をNFBのアーカイブから削除することはできないのかも知れないが、少なくとも今後は日本の歴史問題に関する映画はNFBの判断だけで制作しないようカナダ政府に申し入れるべきである。

TH

NFB

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