2025年11月15日に開催した「対国連活動 報告会」(主催:国際歴史論戦研究所)での山本優美子の発表「国連参加のノウハウ」をここに纏めて掲載します。
***************************************************************
2025.11.15 国際歴史論戦研究所 対国連活動報告会 山本優美子
国連参加のノウハウ
国連には様々な人権関連の委員会があり、NGOが参加できる仕組みがあります。自分が「訴えたい問題、テーマ何か」、「国連で何がしたいか」を明確にし、その問題はどの委員会が扱っているか、その委員会でNGOは何ができるか、を調べることが重要です。NGOの参加方法は全て各ウェブサイトに公開されていますので、自分で丹念に調べる努力も必要です。
ここではNGOが参加できる1.人権条約関連の委員会、2.人権理事会 について簡単に説明します。
1. 人権条約の委員会 human rights treaty bodies
人権条約を批准した国が条約の委員会に定期的に政府報告書を提出し、委員会から審査を受ける仕組みです。委員会と政府代表団との審査会合にNGOとして傍聴参加ができます。委員会にNGO意見書を提出、委員とNGOの会合にも参加、発言もできます。
NGOの意見を委員が参考にし、審査会後に発表する総括所見(concluding observations最終見解書とも訳される)における勧告(recommendation)にNGOの意見が反映されることもあります。
– 委員会開催:ジュネーブ国連
– 参加:オンライン登録で、誰でもNGOとして参加できる https://indico.un.org/
– NGOが出来ること:意見書提出(図1参照)、審査会参加、NGO会議に参加・発言
– 参加方法、手続き:それぞれの委員会のウェブサイトに全て書いてある。まめにサイトを確認し、調べることが必要
– 訴える問題:条約の第何条何項に関わる問題かを把握する
– NGO:どんなNGOが、どういう意見を、どういう文章構成で、出しているかを調べておく
– 日本の審査だけでなく、他国の審査にも意見書提出、参加ができる。
<委員会 と 前回の対日審査会の年>
自由権規約委員会 Human Rights Committee (CCPR) 2022
社会権規約委員会 Committee on Economic, Social and Cultural Rights (CESCR) 2013
人種差別撤廃委員会Committee on the Elimination of Racial Discrimination (CERD) 2018
女子差別撤廃委員会 Committee on the Elimination of Discrimination against Women (CEDAW)2024
拷問禁止委員会 Committee against Torture (CAT) 2013
児童の権利委員会 Committee on the Rights of the Child (CRC) 2019
障がい者権利委員会 Committee on the Rights of Persons with Disabilities (CRPD) 2022
強制失踪委員会 Committee on Enforced Disappearances (CED) 2018
<図1> NGO意見書の受付、締切、文字数、提出方法等は各委員会のウェブサイトで確認

2.人権理事会 Human Rights Council
年3回、ジュネーブ国連で開催され、世界各国の政府代表、NGOが参加します。スケジュール等は全て人権理事会のウェブサイト(https://www.ohchr.org/en/hrbodies/hrc/home)に掲載されます。NGOは意見書提出、発言(ビデオ可)、会議室を利用してのイベント開催ができます。
ただし、参加できるNGOは「経済社会理事会との協議資格Economic and Social Council (ECOSOC) Consultative Status」NGOに限られています。
3.国連協議資格NGO
このNGO資格は、国連のNGO委員会(The Committee on NGOs)に申請し、審査で承認されれば取得できます。申請にあたっての条件としてNPO法人、社団法人として2年以上の実績が必要です。他に規約、決算等の書類揃えて、オンラインでアップロードして申請します。
この資格があればNGOとしての活動の幅が広がります。
- 人権理事会に参加、意見書提出、発言申込ができる
- 国連建物内の会議室を利用 イベント開催できる
- ジュネーブ、ニューヨーク国連の年間パスが申請取得できる
- 参加できる会合が増える
現在6,657のNGOがこの資格を取得しており、その中で日本のNGOは80です。
この資格が無くても参加できる委員会はあります。自分が訴えたい問題、興味のあるテーマがどこの委員会に当てはまるか調べてみてください。
<資格なしでも参加できる委員会 例>
– Human rights treaty bodies 人権条約の委員会
– UPR Universal Periodic Review 普遍的・定期的レビュー
– CWS Commission on the Status of Women 女性の地位委員会
– Expert Mechanism on the Rights of Indigenous Peoples (EMRIP)先住民族の権利に関する専門家機構
4.参考情報
・UN Human Rights Civil Society Weekly Newsletter
登録 https://shorturl.at/lLP0B
※国連のCivil Society(https://www.ohchr.org/en/resources/civil-society)が発行するニュースレター。NGOがどのような活動ができるか纏まっている。対国連活動には登録必須。
・日弁連 国際人権ライブラリー
https://www.nichibenren.or.jp/activity/international/library.html
※外務省サイトより情報が分かりやすく整理されている
・外務省 人権外交 人権条約体(Treaty-based body)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken.html
※情報が上手く纏まっていなく、分かりにくいが公式情報なので必ず確認する
以上