映画「主戦場」に抗議します!から「上智学院理事長・上智大学学長あて通告書(8月28日付け)」の記事を転載いたします。 ****************************************************************
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★映画「主戦場」で侮辱され、人権を侵害された被害者のうち、ケント・ギルバートら5名は、代理人弁護士を通して、8月28日付けの「通告書」を上智学院理事長・上智大学学長に内容証明郵便として送った。発送は29日、配達証明書の日付けは30日であった。
内容証明郵便は1ページ20字×26行の制約があり、全ページに印鑑が押されている。分量は全体で30ページにもなっているが、これはそのテキスト版である。読みやすくするために、段落の区切りを「一行アキ」とした。なお、本筋に関係のない住所・電話番号等の情報は省略し、あまりに煩雑な詳細はカットした。誤字・誤植の類は修正ズミである。適宜必要に応じて[ ]で括って注記を入れる。
(9.24藤岡信勝記)
通告書(内容証明郵便)
令和元年8月28日
東京都千代田区紀尾井町7-1
学校法人上智学院
理事長 佐久間勤 殿 上智大学
学長 曄道佳明 殿
弁護士 髙池 勝彦
前略 小職は、別紙代理人目録記載の弁護士25名を代表して
ケント・エス・ギルバート(タレント、アメリカ合衆国カリフォルニア州弁護士)
トニー・マラーノ(国際ジャーナリスト)
藤岡信勝(元東京大学教授、新しい歴史教科書をつくる会副会長)
藤木俊一(会社社長、「テキサス親父」日本事務局長)
山本優美子(「なでしこアクション」代表)
5名の委任を受け、貴学院及び貴職らに対し、下記のとおり質問・通告します。
記
1 経緯
小職らが貴大学との関連で問題にする事案の従前の経緯は次のとおりです。すなわち、
(1)かつて貴大学大学院グローバル・スタディーズ研究科修士課程(前期博士課程)に在学した大学院生で平成30年に同課程を修了した日系二世のアメリカ人ミキ・デザキ(日本名・出崎幹根。以下「出崎」という)が「監督」した映像作品「主戦場」(以下「本件映画」という)は、いわゆる慰安婦問題を中心テーマとしたドキュメンタリー映画という触れ込みで、本年4月20日から東京を初め全国の映画館で上映され、すでに数万人に及ぶ多数の観客を動員しているとのことです。
本件映画には、日本語・英語・韓国語の三つのバージョンが存在するとされ、7月25日からは韓国での上映が始まり、アメリカでも今後上映される可能性があると見られています。
(2)ところで、上記5名(以下、単に「5名」という)は、その意に反して、この映画に「出演」させられている者たちです。
5名は、確かに出崎の求めに応じインタビューを受けましたが、それは出崎が大学院の修士課程を修了するために修士論文に代替する研究として大学に提出する「卒業制作」「卒業プロジェクト」(以下「修了研究」という)に協力を求められたからであり商業映画への「出演」は承諾していません。
例えば5名のうち、出崎が最初にアプローチした山本優美子の場合、出崎は同人に対するメールの依頼文の中で、インタビューの目的を次のように説明していました。
「これは学術研究でもあるため、一定の学術的基準と許容点を満たさなければならず、偏ったジャーナリズム的なものになることはありません」「私が現在手がけているドキュメンタリーは学術研究であり、学術的基準に適さなければなりません。よって、公正性かつ中立性を守りながら、今回ドキュメンタリーを作成し、卒業プロジェクトとして大学に提出する予定です」と。
また、同じく出崎のインタビューを受けたジャーナリスト櫻井よしこの場合、同人に対するインタビューの趣旨を説明した出崎の依頼状には、ことさら、上智大学の校章の入った便箋を用い、白々しくも、次のように書かれていました。
「我々が慰安婦問題について研究を進める過程で、日本の保守派がこの問題に関して説得力のある議論を展開していることが明らかになった。慰安婦問題に関わる右派・左派両方当事者へのインタビューをもとに、両者の議論の対立点を鮮明化することを目的としたインタビュー」であると。
(3)このように表現は様々ですが、出崎は、
①修士課程の修了要件である修士論文に代替する研究としてのビデオ製作であること
②製作して大学に提出するためのものであること
の2点を全員に共通するインタビューの目的として述べていました。5名は、すべて、この出崎の発言を信じて、善意から貴重な時間を割き、無償で出崎のインタビューに応じたのです。
(4)出崎は修了研究のために他の二人の大学院生、岡本明子、オブリー・シリヴィとともに修了研究制作チームをつくり、5名に対するインタビューを実施しました。その各インタビューの申込日・撮影日・撮影場所は次のとおりです。[省略]
(5)ところで、出崎の修了研究として大学院に提出したはずのドキュメンタリー・ビデオはどのようなものになったのか、5名のうちの誰一人として知らされた者はおりません。そうするうちに、出崎は、藤岡を除く4名に対し、ドキュメンタリー映画が完成し平成30年10月に釜山の国際映画祭にて上映されることになったと通知してきました。映画のタイトルは「主戦場」とのことで、卒業制作のテーマとして5名に告げていた「歴史議論の国際化」とは全く異なるものでした。そして、その後平成31年3月と4月に開催された本件映画の試写会で明らかになったことは、この映画の実態が学術研究とはおよそかけ離れた韓国の元慰安婦の確証のない「証言」なるものを真実と前提して、日本政府及び日本人を糾弾する運動のための一方的でグロテスクなプロパガンダ映画となっていることでした。
本件映画は、慰安婦問題を取り扱っているのですが、終幕に至るや、やおら、安倍政権の政策全般の批判に転ずるのです。時の政権を批判することは、もとより、国民の表現の自由に属するでしょう。しかし、問題は、そういうことではなく、本件映画の製作が学術研究目的にあるのではなく、専ら自らの政治的メッセージを観客に伝えることを目的としていることを端的に示していることです。
それだけではありません。本件映画は、始まるや否や、藤岡、衆議院議員杉田水脈、ケント・ギルバート、藤木俊一、トニー・マラーノの5名の顔写真を並べたうえ同人らを「歴史修正主義者」として紹介しているのです。 いうまでもなく「歴史修正主義者」(Revisionist)とは、ナチスのホロコーストを否定する道徳心の欠けた人間として社会的に抹殺されて当然と見なされているような存在です。しかも、本件映画は、REVISIONISTというレッテル貼りのための文字を画面いっぱいに大映しして、上記5名を断罪し、先ずこれを観客の脳裏に刷り込むことを意図してつくられています。
本件映画の「公式プログラム」には、もっともらしく、「対立する主張の数々を小気味よく反証させ合いながら、精緻かつスタイリッシュに一本のドキュメンタリーに凝縮していく」などと書かれていますが、その実態は5名が何かを話すや、これに反対する論者らが寄ってたかって5名の話を叩くという構成になっています。しかし、5名の側にはこれに対する反論・「反証」の機会が与えられていないのです。
「反証させ合い」など全くしておりません。出崎は撮影時の「公正性かつ中立性を守りながら、今回ドキュメンタリーを作成」するとの約定を完全に裏切っています。かくして、本件映画は、一方的なプロパガンダ映画になっているのです。
取材対象者の5名は、それぞれ根拠をもって体系的に話しているにもかかわらず、前後の脈絡を無視し、発言者の一部の言葉尻を恣意的にとらえ、したがって、結果的に発言者の真意を歪めてインタビュー対象者を人格的に貶める巧妙な手口が駆使されています。先のレッテル貼りと併せて、本件映画の真の狙いは、「慰安婦=性奴隷」否定派の論者の人格を攻撃し侮辱することにあったと断定できます。ちなみに、慰安婦性奴隷否定論は日本政府の見解でもあります。
出崎は、山本優美子宛に「大学院生として、私には、インタビューさせて頂く方々を、尊敬と公平さをもって紹介する倫理的義務があります」などと書いていましたが、実際に行ったことはそれとは正反対のことでした。
5名のインタビュー映像がこういうかたちで用いられることを少しでも予想していたなら、この5名は絶対に出崎のインタビューの申し入れに応じることはありませんでした。したがって、出崎の5名に対するインタビューの趣旨説明は、必然的に欺罔的にならざるを得ず、上記のような多くの詐言を弄することになったのです。このようなやり方が学術研究の名でなされることが許されるはずがありません。このことは政治思想の左右の対立・論争の問題などではなく、したがって、貴学が局外中立に立てる問題でもありません。
(6)かくして、5名は共同声明にサインした上で、5月30日、日本記者クラブにおいて開かれた記者会見の場でこれを発表し、本件映画の上映中止を求めました。すると、出崎と本件映画の配給会社東風は、これに対抗して、6月3日、記者会見を開き、映画の差し止め要求を拒否しました。そこで、ケントら5名は、やむなく、6月19日、出崎と東風を被告として、本件映画の上映中止と損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴するに至りました(令和元年(ワ)第16040号映画上映禁止及び損害賠償請求事件)。
2 上智大学の責任
(1)5名が出崎のインタビューに応じた根本理由は、本件映画が上智大学という日本を代表する私学における学術研究であることを信用した点にあります。
出崎が、山本優美子へのメールにおいて「これは学術研究でもあるため、一定の学術的基準と許容点を満たさなければならず、偏ったジャーナリズム的なものになることはありません」(下線は引用者による)として示したように、「偏ったジャーナリズム的なもの」になるのではないかという研究対象者の懸念を「学術的基準と許容点を満たした」「学術研究」を偽装することで払拭しているのです。
つまり、上智大学への社会的・学術的信用を利用して、プロパガンダ映画が作成されたのです。もし、出崎が正面から一人のジャーナリストとして取材を申し込んだのであれば、当然ながら5名は「偏ったジャーナリズム的なもの」に利用されることを警戒して、当然、インタビューを断ったであろうことは明らかです。
(2)学術研究が政治的・商業的・宗教的プロパガンダに利用されるような事態を防ぐため、各大学は、研究倫理規定を設け、学術機関の信用毀損を未然に防ぐ手立てを講じております。
貴学においても、研究倫理規定を定め、特に、今回の件のような聞き取り調査に基づく研究については、研究対象者の権利を守るために「人を対象とする研究」についての事前審査規定を定めておられます。
ところが、出崎は、当該研究において、この審査を受けておりません。どのように優れた倫理規定を定めても、それを端から回避することが容認されてしまっては、何の実効性もありません。
出崎および出崎の指導教官である中野晃一教授は、学術上の重大な倫理義務違反を犯しているといえます。
(3)中野教授は単にその指導学生が研究倫理上の問題行動を起こしたことについて管理責任を問われているというだけではありません。
中野教授は出崎の修了研究の単なる指導教官だったのではなく、
①みずから映画「主戦場」に登場し、しかも、一方に偏した重要なコメントを最も長くほしいままに述べていること
②製作過程でも、藤岡信勝が承諾書のサインを拒否したことへの対応として、サインをとれなければ製作を続けることはできないと指示していたこと
③取材対象者を欺罔し誹謗する映画の問題点が指摘された後でも、なんらその問題性を認識することなく「今になって騙されたなんだって言ってるけど、全部自分がしゃべっている話なんですね」などとの言辞を弄し、研究倫理上の問題性を省みなかったこと
④さらに、みずから商業映画の宣伝役まで買って出ていること
⑤被害に遭った5名を「顔も見たくない人たち」などと公の場で露骨に嫌悪の情を示してののしっていること
⑥指導教官なら院生のインタビューへの協力にまずは謝意を表するのが礼儀であるにもかかわらず、全くそのような姿勢を示さず、逆に、してやったりの態度をとったことなどを指摘できます。
上記各事実を総合すると、上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科中野晃一教授は、単なる指導教官の域を超えて、当初から研究対象者・協力者をペテンにかける不正な企みに積極的に加担し、出崎の詐欺的行為を出崎と一体となって企画・推進したことが明らかです。ここに事態の深刻さがあります。
(4)かかる事情を鑑みれば、貴学には以下の責任があることが明らかです。すなわち、
①出崎が貴学の「人を対象とする研究」の審査を受けずに作成した卒業研究を修士課程修了の要件として認定したこと
②「人を対象とする研究」の事前審査を受審する義務について、貴学の指導教官が意図的に懈怠したこと
③出崎の修了研究についてその共同制作者とも言える中野教授に、学術の名を騙った詐欺行為を許した貴学の人事管理上の責任です。
かかる詐欺的行為が、上智大学の研究手法として何ら問題のないものとみなされるのであれば、過去に築きあげられてきた学術研究機関としての貴学の名声と信用は、根底から破壊されます。
それは同時に、貴学に籍を置き、真面目に研究活動に勤しむ他の同僚研究者(院生・学部生を含む)の今後の学究活動に重大な障害をもたらすものと危惧されます。
(5)被害者の藤岡信勝・藤木俊一・山本優美子の3名は、4月27日、貴学大学院グローバル・スタディーズ研究科の委員長あてに問題の発生した経緯を説明するとともに、インタビューに訪れた3名の元大学院生に関する質問状を送りました。
ところが、委員長からはこれに対し、本人の文書による許可がなければ答えられないとの返信が来ました。
そこで、藤岡信勝は貴学の卒業生である山本優美子の協力のもとに、研究倫理上問題のある事案の告発窓口である監査室に電話をし、窓口担当者に30分ほど説明をしました。
そして、貴学の責任者の立場にある学長または研究倫理担当の副学長に説明するためのアポを求めました。
その趣旨は、事態が悪化する前にこの件について、学問の府である大学にふさわしい主体的な判断によるけじめをつけていただくことを期待したからです。ことは上智大学の名誉にも深く関わることです。
ところが、当方への返事は、学長・副学長との連絡がつかない、連絡はついたが検討中である、面会するかどうかも検討中だ、いつまでに結論を出すかは答えられないなどの全く誠意を疑われるような対応に終始しました。
かくして、小職は、貴学に対し、直接、本書によって問題の所在を知っていただくべく、本書の送達に到った次第です。
3 質問・要請事項
従前の経緯の概略は、前項記載のとおりでありますが、小職らは、貴職らに対し、以下のとおり質問・要請いたします。
すなわち、
(1)本件映画の製作に携わった出崎幹根、大学院生岡本明子、同オブリー・シリブィの3名の在学期間と修士課程卒業年次並びに修了研究(「卒業制作」)のテーマ、概要、課程修了の可否、評点をご教示ください。
(2)修了研究の聞き取り調査として作成されたインタビュー素材を、研究協力者に事前に知らせることなく商業映画に転用した出崎の行為について、貴学・貴職らは何ら問題ないとお考えですか。見解をお聞かせください。また問題ないとされる場合には、今後も同様の事態が貴学の学術研究の下で生じても、問題はないと認識されますか。
(3)出崎の修了研究は、研究対象者への聞き取り調査を中心に構成されており「人を対象とする研究」に該当します。
貴学が定める「人を対象とする研究」に関するチェックシートでは、24の項目について、<yes‐no>で答えるようになっていますが、そのうち一つでもyesがあれば、委員会による審査の対象となり得るとされています。今回のケースでは、以下の各項目につき、Yesとなり、明らかに審査を受ける研究に該当すると考えられます(番号はチェックシートの番号)。[*従って、番号はとぶことがある]
◇
<1>試料・情報・データ等の収集
(1)侵襲・危険性
①研究対象者が何らかの身体的または精神的な負担、不快、苦痛あるいは危険性を伴う可能性がある。yes
②研究対象者となることで、研究対象者個人や集団が差別を受けたり、経済状況や雇用・職業上の関係、私的な関係や財産等に損害を与える危険性がある等、研究対象者に不利益が生じる可能性がある。yes
(3)情報・データ等収集の手法
① 実験、調査の正確性を期すなど、研究遂行上の止むを得ない理由により、研究対象者に真の研究目的を知らせることができない。yes
(4)研究対象者・研究対象者との関係
③ 研究対象者や、研究対象者の関係者との間に、利益相反関係がある。(例えば教師、同僚、雇用主、親族等、当該研究の実施、協力以外に何らかの力関係や血縁関係等がある。) yes
<2>情報・データ等の分析
(1)プライバシー
① 個人が特定される情報・データ等に基づき、分析活動を行う。 yes
<3>試料・情報・データ等の管理(保管・廃棄)
(2)試料・情報・データ等の廃棄時期・方法
② 収集した試料・情報・データ等の全部または一部につき、検証や将来の研究利用または他機関への提供等研究遂行上の理由により、当該研究終了後も廃棄しない予定である。yes
<4>情報・データ等の公表
(1)結果の公表
① 研究・調査結果の公表の際に、研究対象者個人や特定の集団が不利益、不快感を被る可能性がる。yes
② 研究遂行上の止むを得ない理由により、研究・調査結果の公表の際に、研究対象者に公表内容の全てを開示できない。yes
(2)プライバシー
① 研究・調査結果の公表の際に、個人が特定される可能性がある。yes
◇
上記各項への判定(yes)につき、以下補足説明をします。次のとおりです。
<1>
(1)①については、現実に上記の 苦痛を感じた者がおり、被害をアピールし訴訟にまで及んでいるのですから、明らかです。
(1)②については、出演者が学術上の手法とは全く関係のないレッテル貼りによって批判されており、研究協力者の社会的評価を貶めることは明らかです。
(3)①については、商業プロパガンダ映画への転用という、真の目的が秘匿されています。
(4)③については、同映画に指導教官である中野教授自身が出演しており、研究対象者との間に利益相反関係があり得ます。
<2>
(1)①については、修了研究中において本人が特定されていることは明らかです。
<3>
(2)②については、商業作品に転用されており、当該研究終了後も廃棄されていません。
<4>
(1)①については、プロパガンダ映画として公表されており、研究対象者個人が不利益、不快感を蒙っている。
(1)②については、研究対象者にプロパガンダ映画への転用という公表内容が開示されていません。
(2)①については、個人が名指しで公表されています。
以上、1 箇所でも該当すれば「人を対象とする研究」の審査を受ける理由となるところ、9箇所にも亘って該当しています。
貴学にお尋ねします。出崎の卒業研究は「人を対象とする研究」の事前審査を受けるべき研究と考えられますか。<yes> または<no> でご回答ください。
また、<no>である場合には、上記9項目について、いずれにおいても該当しない理由をご教示下さい。
(5)「人を対象とする研究」においては、研究協力者に対してインフォームド・コンセントの徹底が義務付けられています。当該研究においては、そもそもが「人を対象とする研究」の審査を受けておらず、5名に対して要件に課されているようなインフォームド・コンセント自体が全く実施されておりません。審査を通過したと想定される場合でも、その研究条件にはインフォームド・コンセントの実施が含まれるはずですが、仮に当該研究について真実に基づいた説明が行われていた場合、5名は誰一人聞き取り調査に協力することはなかったはずです。インフォームド・コンセントには、「研究への参加は任意であり、参加に同意した場合であっても随時これを撤回できること」が研究協力者に認められた権利として確認されておりますが、5名がこの権利を行使し、インタビュー素材の撤回・破棄を要求した場合、貴学としていかなる対応を講じられるのか、お答えください。
(6)出崎の修了研究について、学術研究上の倫理規定に対する重大な逸脱があったと認識されますか。<yes>または<no>でご回答ください。<yes> の場合はその具体的な問題箇所をご指摘ください。 <no>である場合、今回の出崎の修了研究のような手法・手続きにおいて再び同様の研究が今後生じた場合でも、上智大学は全く問題なく、学術研究の正当な方法であると認容されますか。<yes> または<no>でご回答ください。
(7)出崎の修了研究を指導・監督する責にあった貴学の中野教授の指導責任について、重大な過誤があったと認識されますか。<yes> または<no>でご回答ください。<yes> の場合はその具体的な問題個所をご指摘ください。<no>である場合、今回の出崎の修了研究に対する指導・監督として再び同様の対応が指導教員によって繰り返されたとしても、上智大学は、学術研究上正当な指導であると認識されますか。<yes> または <no> でご回答ください。
(8)貴学の中野教授は、指導・監督の立場を超えて、本件修了研究の共同制作者としてこれに密接に関与しております。学術研究とは名ばかりのプロパガンダ映画を上智大学という信用度の高い学術研究機関の看板を利用した詐欺的手法によって製作したこと自体、貴学に社会的責任が発生すると考えます。貴学は、中野教授が貴学の社会的信用を騙って詐欺的手法によってプロパガンダ映画を製作したことを貴学の名誉と信用を傷つける行為であると認識されますか。<yes> または <no> でご回答ください。<no>である場合、今回と同様の手法で貴学の教員が、類似の作品を今後製作するようなことが再びあっても、貴学として容認されますか。<yes>または<no>でご回答下さい。
(9)最後に、貴学に要請したいことがあります。出崎が卒業プロジェクトとして大学院に提出した映像作品のコピーをご供与ください。
供与を求める理由ですが、5名は、貴学の大学院生である出崎に学術研究に資するため無償で協力したのですから、貴学には協力者に作品を見せる学術的・道義的義務があると考えるからです。なお、卒業制作と商業映画が別のものであることは、指導教官の中野晃一教授が4月19日に国会内で行った政治集会「安倍政治を終わらせよう! 4.19院内集会」において講演し「オリジナルカットのものが修士論文に代わる学位を取るための制作物」(A)であるとし、「その後、さらに編集やったり音楽入れたり」してつくった映画(B)を別のものとして区別して説明しています。この点は5名の認識とも一致しています。貴学にコピーの供与を求めているのは(A)の作品です。
4 結語
貴職らは、真理を探究する学問の府の責任ある立場にあられ、とりわけ「カトリシズムの精神に基づき、学術の中心として真理を探究し、文化の発展と人類の福祉に寄与する研究活動を行ってきた」ことを標榜する権威と実績のある上智大学の最高管理者として、今回の事案の重大性に鑑み、10月末日までに上記各質問に誠実に回答し、また、要請事項にも応じていただきたく、本書を以って要望する次第です。
また、ご参考までに別便にてご関係資料をお送りするとともに、求められれば、5名が直接事情を説明します。
なお、本「通告書」の2(5)で述べたとおり、本事案の被害者らが研究倫理上の不正行為に関する貴学の告発窓口に事の次第を申し出たにも関わらず、貴学の対応に真剣さと誠実さがうかがえませんでした。よって、小職らは、本問題が貴学の信用と名誉にかかる重大・深刻な事案であることに鑑み、本事案に関する情報を貴学の教授会構成員全員に告知することさらに貴学からの回答を含め所轄官庁たる文部科学大臣に事案の詳細を報告する予定であることを申し添えます。
草々
(別紙)代理人目録[省略]