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ハーバード大ラムザイヤー教授 論文 1991年「芸娼妓契約-性産業における信じられるコミットメント」、2021年「太平洋戦争における性サービスの契約」

米国ハーバード大学ロースクール教授のJ・マーク・ラムザイヤー氏の二つの論文のついて「YouTubeつくる会チャンネル」の番組で山本優美子がお話しさせていただきました。


番組で使用したフリップと説明をご紹介します。

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産経新聞の令和3年(2021年)1月31日付 オピニオンにこのような記事が掲載されました。(↓記事画像をクリックすると別ウィンドウに拡大表示されます)

この記事ある論文は、こちらです。

International Review of Law and Economics Volume 65  March 2021
Contracting for sex in the Pacific War 太平洋戦争における性サービスの契約
J. Mark Ramseyer
Harvard University, United States
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0144818820301848

戦前から日本には 公認の売春婦「公娼」がいた。公娼は年季奉公の契約で働いた。

戦時中の日本軍が使った慰安所で働いていた日本人、韓国人の慰安婦たちも、この年季奉公契約のシステムと同じだった。

日本人慰安婦も朝鮮人慰安婦も強制的に働かされた性奴隷ではない。

日本軍が拉致したり、奴隷労働させたものではないし、そんなことする必要もない。

朝鮮の募集業者側に悪徳業者がいたりして問題があったそれは、日本や日本軍が起こした問題ではない。

ということを、他の研究者の研究や当時の日本・朝鮮の資料に基づいて理論的、実証的に研究した論文です。

論文には二つのキーワードがあります。

売春宿で働こうとする女性や親にとっては、心配なことがあります。

一般的にあまり人に言えない、女性自身の評判を落としてしまう職業であること。でも家は貧しく自分には学歴もなく他に職もない。働いた場合、高額の収入は本当にもらえるのか、悩みます。

雇い主にとっては、事業がうまくいくように女性にはちゃんと働いてもらいたい。

そこで、雇い主は多額の前金を渡しました。女性は、給料から前金を返済して返済が終わったら辞める、または契約期間が終わったら辞めました。これが公娼の「Indenture contracts 年季奉公契約」です。

実際、公娼の多くはまじめに働き返済を進めて、契約期間前に完済して辞めていきました。

これは雇い主と雇われる側の双方の思惑が一致する、双方にとって良い契約であり、ゲーム理論でいう「credible commitment 信頼できるコミットメント」の論に沿ったものである、ということが論文に書かれています。

具体的な数字として、産経の論文要約にはこのように書かれています。

公認の売春婦は以下のような年季奉公(indenture) 契約のもとで働いていた。前借金が本人または親に支払われ、全額返すか、契約期間満了のどちらか早い時点まで働く。1920年代半ばの前借金の水準は1000~1200円で無利子、最も一般的な契約期間は6年で、部屋と食事は売春宿が無料で提供する。売り上げの3分の2から4分の3は売春宿が取り、残った額の6割は前借金返済に、4割は本人に渡された。1925年の東京における売春婦の場合、返済相当分が393円、本人受取分が262円で合わせて年655円ちなみに、ラムザイヤー教授の別の論文によると、1926年の女性工員の年平均賃金は312円である」。
 売春宿が売春婦をだまして借金漬けにしたと主張する歴史研究者がいるけれども、少なくともそのようなことは大規模には行われなかった。実際、売春婦の平均労働期間は3年程度、つまり標準的な契約期間6年の半分で返済を終えている。

これを纏めたのがこちらです。円グラフは、売春宿が売り上げの4分の3を取った場合です。


確かに、公娼の年収655円の6割393円を毎年返済すると契約期間6年の半分の3年間で完済することになります。

では、戦時中の慰安婦の場合はどうだったのか。

産経の論文要約によると慰安婦の場合は

女性たちは慰安所と1~2年の年季奉公契約を結び、多額の前借金を受け取って戦地に赴き、契約期間を勤め上げるか、期限前に前借金を全額返済して、故郷に帰っていったのである。

とあります。

ここからは私が計算した数字になりますが、京城日報(1944年7月26日付)に掲載された慰安婦募集の広告に当てはめてみました。


月収300円以上となっていますので、年収は3,600円以上。そのうち4割の1,440円を手元に、6割の2,160円を前金の返済に充てた場合、1年半で前金の3千円を完済できます。

ラムザイヤー教授の論文にある「1~2年の年季奉公契約を結び、多額の前借金を受け取って戦地に赴き、契約期間を勤め上げるか、期限前に前借金を全額返済」とぴったり一致します。

ちなみに、年収3,600円は当時の陸軍でいえば、三等大佐の年額3,720円とほぼ同じ。1,440円は三等大尉1,470円とほぼ同じ(赤枠)。慰安婦と同世代の下っ端の兵隊さんの月給は数十円でした(黄色枠)。


実はラムザイヤー教授は30年前の1991年春にこの二つのキーワード

Indentured Prostitution  年季奉公 契約
credible commitment 信頼できるコミットメント

についての論文を発表していました。それが今回2021年の論文の元となっています。

1991年春というと、1993年河野談話、1991年8月最初の元慰安婦 金学順が名乗りを挙げたその前です。ラムザイヤー教授は慰安婦が今のように問題となる前から、年季奉公契約の研究をしていたのです。

その論文がこちらです。


Indentured Prostitution in Imperial Japan: Credible Commitments in the Commercial Sex Industry
J. Mark Ramseyer
Journal of Law, Economics, & Organization Vol. 7, No. 1 (Spring, 1991), pp. 89-116 (28 pages)
Published By: Oxford University Press
https://www.jstor.org/stable/764879

日本語訳で公開されています。こちらです。

タイトル: 芸娼妓契約 -性産業における「信じられるコミットメント (credible commitments)」
タイトル: Indentured Prostitution in Imperial Japan: Credible Commitments in the Commercial Sex Industry
著者: ラムザイヤー, マーク
曽野, 裕夫//訳
著者別名: RAMSEYER, Mark
SONO, Hiroo//translated by
発行日: 1993年10月25日
出版者: 北海道大学法学部
誌名: 北大法学論集
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/15533/1/44%283%29_p206-160.pdf

論文は、20世紀初めの日本の性サービス市場における親、娼婦、売春宿の間の稼働に関する取り決めである年季奉公契約をデータで検討したものです。産業組織の研究であって、売春について合法化すべきか否かとか、売春が良い悪い、の研究ではありません。

冷静に数字を見たうえで、「雇い主が契約したのは 期間を超えて売春婦を売春宿に縛り付けておくように契約を操作することができたのでないか、つまり債務の奴隷にすることが出来たのではないか、という仮説についてはそれを支持する根拠は見当たらない。多くは契約期間の相当前に借金を返済し、廃業していた。」としています。

上でご紹介した円グラフの数字もこの論文で詳しく説明されています。

他にも収入についてはこういう表があります。


当時の女工や農家と比較して、公娼の年収が高かったことが分かります。

では、働いた期間はどうだったのか。

このような表や数字があります。


左表、公娼は年齢が高くなるほど減っています。雇い主が契約期間を超えて使ったり、借金を操作して雇い続けたりしたならば、20代後半まで数は減らないはず。

右の数字、公娼は約37%が入れ替わっている。

下の表は論文の数字を円グラフにしたものですが、3年以内で辞めるのが65%、契約期間6年で殆どが辞めています。


ここにご紹介したのは、論文に書いてあるほんの一部の数字です。

論文を読むと、

貧しくて学もない農民を騙して契約させて 娘を売春宿に売って性の奴隷にまで貶めた、という仮説は現実を見ていない。農家は厳しい状況でも生き延びる工夫をしていた。

貧しい農民は、高い賃金を確実に得られるという保証、契約があったから娘を公娼にする契約をした。

売春宿の抱え主は、年季奉公契約を悪用して借金漬けにして売春婦をいつまでも働かせることはできなかった。つまり、売春婦は債務の奴隷にはならなかった。

ということが分かります。

是非日本語の全文を読んでみてください。

慰安婦は被害者で、とにかく日本が悪い、日本軍は悪であると、ほとんど学者、ジャーナリスト、メディア、活動家は他の論を受け付けません。

そんな中で、冷静にデータをもって理論的・実証的に労働の契約としてどうであったかという論文を1991と2021にも発表してくれたラムザイヤー教授に心より感謝申し上げます。

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< 参考 >
◆ International Review of Law and Economics
Volume 65  March 2021
Contracting for sex in the Pacific War
太平洋戦争における性サービスの契約
J. Mark Ramseyer
Harvard University, United States
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0144818820301848

◆ Indentured Prostitution in Imperial Japan: Credible Commitments in the Commercial Sex Industry
J. Mark Ramseyer
Journal of Law, Economics, & Organization Vol. 7, No. 1 (Spring, 1991), pp. 89-116 (28 pages)
Published By: Oxford University Press
https://www.jstor.org/stable/764879

<日本語訳>
タイトル: 芸娼妓契約 -性産業における「信じられるコミットメント (credible commitments)」
タイトル: Indentured Prostitution in Imperial Japan: Credible Commitments in the Commercial Sex Industry
著者: ラムザイヤー, マーク
曽野, 裕夫//訳
著者別名: RAMSEYER, Mark
SONO, Hiroo//translated by
発行日: 1993年10月25日
出版者: 北海道大学法学部
誌名: 北大法学論集
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/15533/1/44%283%29_p206-160.pdf

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< 参考ニュース >
◆ JapanFoward
Recovering the Truth about the Comfort Women
As academics, we are used to dealing with exaggerations. We are not used to finding that the story is pure fiction. But that is the nature of the comfort-women-sex-slave story.
Mark Ramseyer
January 12, 2021
https://japan-forward.com/recovering-the-truth-about-the-comfort-women/

◆産経2021.1.28
世界に広まる「慰安婦=性奴隷」説を否定 米ハーバード大J・マーク・ラムザイヤー教授が学術論文発表
https://special.sankei.com/a/politics/article/20210128/0001.html

◆ 産経2021.1.25
【JAPAN Forward 日本を発信】偽善と歪曲を斬る
https://www.sankei.com/column/news/210125/clm2101250004-n1.html