Daily Archives: December 10, 2022

国連 自由権規約委員会 136セッション 対日審査会 参加報告

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国連 自由権規約委員会 136セッション 対日審査会 参加報告

国際歴史論戦研究所ではジュネーブの国連で行われた自由権規約委員会136セッション(2022年10月10日~ 11月4日)に3名を派遣し、期間中に行われた委員・NGO会合と対日審査会に参加しました。ここに参加報告と会議での発言資料を掲載いたします。

1. 参加報告 矢野義昭 (国際歴史論戦研究所 上席研究員)
「左翼・グローバリストが操る人権を口実とする日本破壊工作の震源地―国連自由権規約委員会」

2. 参加報告 山本優美子 (国際歴史論戦研究所 所長)
「自由権規約委員会における慰安婦問題と不甲斐ない日本政府―我々が声を挙げなければ誰が真実を言うのか」

3. NGO発言 慰安婦問題について 発言者:矢野義昭・藤木俊一・山本優美子

派遣者: 山本優美子(所長)、藤木俊一(上席研究員)、矢野義昭(上席研究員)
期間:2022年10月10日(月)~14日(金)
場所:スイス ジュネーブ 国連ウィルソン
日程:2022年
・10/10 (月)
10:00~10:30  オープニング セッション
11:00~13:00  NGO 公式ブリーフィング フィリピン、キルギスタン、日本
・10/13(木)
11:00~13:00  NGO 公式ブリーフィング 日本(10/10からの続き)、非公式ブリーフィング 日本
15:00~18:00  対日審査会
・10/14(金)
10:00~13:00  対日審査会

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【1-参加報告】 

左翼・グローバリストが操る人権を口実とする日本破壊工作の震源地
― 国連自由権規約委員会

国際歴史論戦研究所 上席研究員 矢野義昭

今回初めてジュネーブでの自由権規約委員会のセッションに参加した。

初日の10月10日月曜日は、11時頃からNGO側の公式的なブリーフィングが、事前に送付した文書に従い英語で行われた。各NGOのブリーファーが次々に、それぞれが採りあげた議題に応じて、一人4分の制限時間内で議長の指名に基づき意見表明を行った。

日本のセッションであり、オンラインのブリーフィングも認められていたため、今回は23名という多数の日本に対するNGOのブリーフィングが集中した。そのため、10日の予定された時間内で終わらず、木曜日13日の午前中11時から再開することになった。

木曜日13日の午後と金曜日14日の午前には、日本政府の各省庁から成る代表団の第7回日本政府報告に対する委員からの質疑が行われた。

そこで最も印象的だったことは、ブリーファーも取り上げるテーマも、我々のグループを除き、左翼勢力が大半を占めており、自由権規約委員会の委員も彼らと同じ人権至上主義の左翼・グローバリストでしかなかったことである。

10日のNGO側のブリーファーは、我々のグループ以外は、日弁連、部落解放同盟などの左翼団体のNGOグループであり、在日朝鮮人も含まれていた。彼らが次々に登場し、左翼勢力の一方的な主張を、日本国内でおなじみのテーマについて、事実誤認や誇張、虚偽も交えて展開していた。

これを日本の実情や正当な歴史についてほとんど知識もないと思われる、自由権規約委員会の委員たちが聞き取り、それに質問を投げかけるという形で、NGOの公式ブリーフィングの開陳と質疑は進められた。

左翼NGOが訴えたテーマは、男女共同参画・男女平等、死刑廃止、LGBT差別反対、福島原発の放射能汚染補償、在日朝鮮人・琉球人・アイヌなどの少数民族に対する差別とヘイト・スピーチ反対、セクハラ反対など、日本国内でも左翼勢力が採りあげてきた問題ばかりである。

これに対し我々のグループからは日本沖縄政策研究フォーラム会長の仲村覚氏は、沖縄の歴史と遺伝子分析結果などに基づき、沖縄の人がれっきとした日本人であり少数民族ではないこと、また沖縄の本土復帰運動は日本人が心から祖国復帰を願ったからこそ実現したことを、オンライン・ビデオを通じて訴えた。

私も、ヘイト・スビートについて、多数者の意思を尊重する民主主義の下では、少数者といえども法規とルールに順なければならず、米国のBLMのような暴力行為は少数者でも許されないと訴えた。

NGOの訴えを受け止める側の委員たちは、途上国を中心に18カ国から成り、日本の古谷委員は日本の本セッションには参加しなかった。委員の中で積極に発言し、NGOの見解を質したのは、エジプト、ギアナ、ウガンダ、ポルトガルの委員など、小国の途上国の委員であった。彼らの質問は、日本の実情も歴史・文化も考慮せず、紋切り型の人権至上主義に立った、左翼グループの主張そのままの問いかけであった。

質問は細部にわたり、具体的な事例、例えば日本人がヘイト・スピーチを受けた具体例などの問いかけもあった。

ヘイト・スピーチについては、質問を受けて藤木俊一氏は、性奴隷との表現は根拠がないと反論した。私からも、慰安婦問題において日本軍による強制性は全く認められなかったが、慰安婦が日本軍により強制的に拉致されたかのような虚偽が広められている、そのため、海外において日本人の子供たちがいじめにあうといった事例もあると反論した。

しかし仲村氏や私たちの反論は、日本政府に対する自由権規約委員会の質疑では、全く考慮されなかった。NGOに質問したメンバーとほぼ同じ委員が、日本の各省庁から成る約30名の日本政府代表団に、以前の総括所見の勧告がどの程度履行されたかを確認し、今回のNGOなどの訴えを踏まえ、さらに新たな意見を付して質疑を行った。

上に述べたように、我々のグループの主張は考慮されず、予期したように、左翼勢力のNGOの主張に沿った、日本の実情も歴史も文化も無視した、後進国同然の国と見なすかのような、人権至上主義に立った「上から目線」の委員ばかりであった。

委員達から日本政府代表団に対し、例えば、琉球人もアイヌも在日朝鮮人も、日本国内で不当な差別やヘイト・スピーチに苦しむマイノリティであるとの事実に反する一方的な観点に立ち、彼らの人権状況改善策が具体的にどのようにとられているのか、あるいは日本国内では女性が差別されているが、前回からどの程度の改善が見られたのか統計データを示し説明し今後の改善策を示せ、あるいは、死刑廃止についての具体的な日本政府としての姿勢を問いただす、福島原発の放射能汚染の被害の実態はどうなっているのかと言った、日本国内や今回参加した左翼勢力と軌を一にした問題について、一人当たり数十項目、計数百項目の細部質問がつぎつぎに投げかけられた。

その際に、委員側が日本の実態として挙げた論拠は、いずれも山城博治など、左翼の一部活動家の主張を、裏付けも採らずに引用した、公平性と客観性に欠けたものであった。科学的、学問的手法を使い、歴史的事実の確認や現地調査結果を踏まえた質問とは思えない。

これらの指摘に対し、日本側の各省庁代表の回答は、それぞれの所掌に応じて回答していた。その回答内容はそれぞれに異なっている。死刑廃止などについては、先例を踏まえ日本政府の立場を繰り返したに止まった。

しかし、中には主要な管理職に占める女性の比率を、いつまでに何パーセントにするなど、必要もない約束をして、日本政府の政策に反映せざるを得ないような回答もあった。慰安婦問題についても、明確に虚偽と否定しない、事実を認め謝罪したともとれる、あいまいな回答に終始している。

このような政府回答の姿勢では、左翼人権派の主張に沿い国連の権威をかさに着た自由権規約委員会の主張に押し切られ、日本に対する内政干渉を許すことになる。かついったん勧告に従い、国内での政策に反映すれば、さらにその成果を毎回追求されるなど、日本国内の政策を、一方的に左傾化、グローバリズム化、非日本化の方向に傾斜させることにもなる。

特に、日本国民も政府も外務省など官庁もマスコミも、国連の権威に弱い。国連関係者の偽善性、腐敗や無能を見抜くことができず、その勧告を妄信する傾向がある。そのために、日本国内で批判しても時すでに遅く、国際的な普遍的価値観に立つ公約であるとして批判が封じ込められ、法として制定され政策化されることになる。

例えばアイヌ新法では、アイヌが先住民との誤った歴史認識に基づく、いつわりの「先住民」が捏造され、アイヌを自称する一部反日活動家の活動に法的根拠を与える結果を招いている。彼らは、沖縄の日本からの分離独立運動を画策している勢力と通じており、いずれも中国の影響力が浸透し、北朝鮮・韓国の旧「挺隊協」現「正義連」の勢力が主導している。

世界で最も人権弾圧を行っている中国は、国連の自由権規約委員会に代表団を送っているもののウイグル、チベットなどの人権状況は改善されていない。北朝鮮に至っては、2001年の前回の審査に代表団の記録はなく、他委員会には10名ほどの代表団を送る程度だ。

国際歴史論戦研究所のメンバーもNGOとして登録し、中国や北朝鮮のウイグル、チベット、香港などでの人権弾圧に対する非難を行っているが、その成果が具体的に中国や北朝鮮の政策に反映されることは期待できそうもない。

逆に、先進国であり人権擁護が最も進んでいる日本が、約30名の大代表団を派遣し、神妙に途上国の委員の一方的意見を拝聴しているのは、滑稽とすら言える。おそらく、この代表団派遣には、約3千万円の税金が投じられているであろう。日本の将来を思いボランティアで活動し、日本のために弁護している、我々のようなNGOには予算もなく、支援の根拠となる法制もない。

これまで自由権規約委員会に大規模な代表団を出しながら、日本の国益や歴史的事実に基づく客観性・公平性に十分に配慮せず、無責任かつ無知な国連自由権規約委員会の「勧告」を拝聴することに終始してきた、日本政府の責任も重い。

派遣された官僚にも責任がある。本来ならば外務省が主導して、関係各省庁が、謂われなき日本の人権状況に対する非難や誤解に対しては、堂々と正論を展開し一歩も譲歩すべきではないであろう。もしもそれをしない官僚がいれば、政治がそれを把握し人事権を発動して更迭するくらいの措置が必要ではないだろうか。

このような内政干渉まがいの国益侵害を黙認してきた日本政府の姿勢は、早急に改められねばならない。また日本国民特に政治家とメディアは、この現実を知るべきである。

日本国民が知らないまま、ジュネーブの国連機関の中で、日本の左傾化を推進する活動が、左翼主導で、それと同調する左翼・グローバリストから成る日本の実情を無視して憚らない委員達と結託して進められている。その現場を目の当たりにして、この現実をこれ以上放置できないとの思いを新たにした。

以上

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【2-参加報告】

自由権規約委員会における慰安婦問題と不甲斐ない日本政府
我々が声を挙げなければ誰が真実を言うのか

国際歴史論戦研究所 所長 山本優美子

自由権規約委員会の対日審査会では、1993年に行われた49セッションから慰安婦問題が扱われています。今回参加した2022年10月の136セッションの対日審査会で慰安婦問題が委員会と日本政府の間でどのように議論されたのかとその感想を記します。

1. 委員からの質問

委員会から慰安婦問題について日本政府代表団に質問したのはエチオピアのイゲズ委員(Mr. Imeru Tamerat YIGEZU男性)でした。

委員会から日本政府に事前に出された質問事項(CCPR/C/JPN/QPR/7)では慰安婦問題を「第二次世界大戦中の日本軍による性奴隷(「慰安婦」)の問題」(原文:the issue of sexual slavery (“comfort women”) perpetrated by the Japanese military during the Second World War)と記していました。対日審査会では、イゲズ委員はこの問題は議論のあるセンシティブな問題なので適切な用語として、と前置きして「第二次世界大戦中に日本軍によって人権侵害された被害者と申したてられている慰安婦」(発言原文:comfort women who are allegedly have been victims of human rights violations perpetrated by the military during WW2)と表現し、発言中は「性奴隷」(sexual slavery)という言葉は使いませんでした。アフリカの男性委員が慰安婦問題について詳しいとは思えませんが、論争になっている複雑な問題であることは認識していたようです。

イゲズ委員からの意見と質問は、委員会の事前質問事項を繰り返す内容でした。
・2015日韓合意は被害者中心ではなく、日本政府の公式謝罪でもなく、被害者とその家族への賠償金も充分ではない。
・合意を再検討し、被害者とその家族に充分な賠償と政府の公式な謝罪を行うのか。
・日本政府は委員会の勧告に従って慰安婦への加害者の調査と訴追を行っていない。
・慰安婦は日韓だけでなく様々な国と地域に被害者がいる。これらの地域の加害者についても調査し、罰すべきである。
・日本政府は過去の歴史を否定し、慰安婦を中傷する動きがあるが、教科書などの教材で慰安婦問題を記述し、慰安婦への中傷をさせない為の対策をとるのか。

これらのイゲズ委員発言を随分偏った一方的な質問だと感じる方は多いと思います。しかし、これが国連における慰安婦問題の扱いの標準です。自由権規約委員会も他の委員会もこれと同様の質問と勧告を毎回繰り返しているのです。

2. 日本政府の回答

イゲズ委員からの質問に対する日本政府の回答に期待したいところですが、現実は日本政府にとっての真摯な謝罪の取り組みを並べただけの回答で、聞く方にとっては慰安婦に悪いことをしたことを認めた上での言い訳としか受け取れない内容でした。これも日本政府のいつもの回答パターンで、他の委員会でも同様です。だから委員会はいつまでも納得できず、また同じ勧告を繰り返すのです。

日本政府の回答は以下の内容でした。
<外務省>
・2015年の日韓合意で慰安婦問題は最終的不可逆的に解決し、国連等でお互いを非難しないこととした。
・日韓合意で日本政府は10億円を拠出し韓国政府は財団を設立、元慰安婦47名のうち35名、死亡した199名のうち62名の遺族に資金を支給した。
・1990年代、日本政府は慰安婦問題について調査を行った
・1995年にはアジア女性基金を設立し、韓国だけでなくアジア諸国の元慰安婦に償い金を支給し、当時の首相が公式なお詫びの手紙を送った。
・2015年当時の安倍首相が述べたように。20世紀において戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去をこの胸に刻み、日本は21世紀には女性の人権が傷つけられることがない世紀とするため世界をリードしていく。
・慰安婦問題は日本に自由権規約が発行した1979年より前の問題であり、遡った問題は適用されないため、委員会で取り上げるのは適切でないと考える。
<文科省回答>
・教科書は民間の複数の教科書会社により発行され、学習指導要領に基づいて、教科書会社が具体的な記述内容を決める。
・検定を経た教科書の中から、個々の学校において使用される教科書が選択される。
・慰安婦について記載された教科書は、中学校、高等学校で複数発行されている。

3. 日本政府は何を言うべきか

日本政府はまず、日本軍慰安婦とは何なのかの説明をするべきです。委員会と日本政府はではそもそも「慰安婦とは何か」の理解が違うので、いつまでも話が食い違うのです。
委員会の事前質問事項では慰安婦を「日本軍による性奴隷」、イゲズ委員は「日本軍によって人権侵害を侵された被害者」としています。慰安婦は本当に性奴隷なのか、被害者なのか。その点を反論し、慰安婦とは何かを明確にしなければ、委員会にとって慰安婦は国連特別報告者クマラスワミやマックドゥーガルの報告書に書いてあるように拉致され、残酷に扱われ、その多くが殺された戦時性奴隷被害者のままなのです。
本来ならば1993年に委員会で最初に慰安婦問題が取り上げられた時点から、慰安婦とは何であるかを説明すべきでした。クマラスワミ報告書が出た時に反論書を取り下げずにいたら、と今更ですが非常に悔しく思います。

4. 我々が言わなければ誰が真実を言うのか NGO発言から

NGOは傍聴のみの審査会議とは別にNGOが委員に直接意見を表明できるNGOブリーフィンングという会合があります。90年代から左派NGOの主張が浸透しているのが国連の人権の場です。そこで日本政府があまりにも不甲斐ない主張を繰り返していますが、NGOは会合のルールに則していれば自分たちの意見を自由に表明できます。
国際歴史論戦研究所から派遣された我々3人はこの会合で慰安婦問題について次の意見を発表しました。外務省が日本政府代表の立場では言えないことも我々の発言の中に盛り込まれていたのではないでしょうか。

(発言の抜粋)
矢野義昭 発言 より
いわゆる「慰安婦」問題について、第二次大戦中の日本の帝国陸軍による強制性を裏付ける歴史的事実はない。現在、海外に在住する日本人の生徒たちが、時々そのような誤った歴史により責められることがある。いわゆる「慰安婦」問題も含め、合法的な反対意見は、すべての国とすべての社会において許容されるべきである。

藤木俊一 発言 より
日本と韓国の間で現在もくすぶり続けている問題に慰安婦問題があります。
日本政府は慰安婦問題に関する本格的な調査をしましたが、日本政府や軍による強制連行などを示す証拠は見つかりませんでした。
さらに、第二次世界大戦末期の1944年、米軍の朝鮮半島出身の慰安婦の尋問報告書には、彼女たちが「高給取りの売春婦」であり、「自由に買い物や活動を楽しんでいた」と記されているのです。
韓国政府と民間団体は、日本政府に圧力をかけ続けるために、国連を悪用しています。その結果、日本人の評判は各国で大きく傷つき、屈辱的な思いをすることになっています。
当委員会より以下の3点を締約国に対して勧告していただきたいと思います。
1. 河野談話を破棄すること。
2. 日本政府は韓国政府に対し、「日韓基本条約」の履行を強く求めるべきであること。
3. 日本政府は、今後、韓国政府に対し、歴史の捏造をやめるよう働きかけ、建設的な二国間関係を構築するよう努力するよう勧告すること。

山本優美子 発言より
自由権規約7条(拷問)と8条(奴隷)は慰安婦問題については当てはまりません。よって、委員会は15条(遡及処罰禁止)に則って慰安婦問題を取り下げるべきです。
慰安婦問題については論理的な瑕疵があります。その理由は
1. 慰安婦の強制連行を証明する文書は存在しません。
2. 慰安婦による貯金・送金・映画鑑賞・宝石で着飾ったなどの供述は、性奴隷の環境と違背します。
3. 第三者の誰も自称慰安婦証言を十分かつ的確に立証していません。
4. 日本には戦前戦中、戦後1950年代まで公娼制度があり、公娼制度と戦争犯罪とは無関係です。
歴史について言えば、日韓併合時代、前帝国の統治能力欠如が朝鮮半島に影を落とし、貧困層は人身売買などにより搾取されていました。人身売買は併合時代にも罰せられました。登録事業者と雇用契約を結んだ慰安婦と人身売買の被害者とは違うものです。歴史認識はその時代の背景を織り込むべきです。当時の加害責任が、仮にあったとしても、それを現在に持ち出す合理性はありません。

5. イゲズ委員に伝えたこと

イゲズ委員の発言を聞いていて、アフリカ出身の男性委員はどの程度慰安婦問題について知っているのだろうかと興味を持ち、対日審査会が終わった直後、まだざわついている会議室で委員に話しかけてみました。委員はNGOが話しかけるとにこやかに答えてくれます。イゲズ委員もそうでした。

私が伝えたことは
「委員の慰安婦の定義は何でしょう。私の理解している慰安婦と違うのですが。慰安婦の本や資料は読んだことがあますか。
前回2014年の自由権規約委員会に私は参加しました。慰安婦問題は前回も今回も同じような話が繰り返されています。次の委員会が行われるのは何年も先になるでしょう。元慰安婦は今90代です。次の委員会までにはもういなくなります。この問題は今、または数年内に終わらせなくてはならないと思います。
私の仲間には歴史家や専門家がいます。慰安婦問題には委員(の見方)と別の面(見方)があります。カナダの女友達と纏めたのがこの資料です。是非目を通して下さい」

イゲズ委員の反応は
「(慰安婦についての本や資料は)読んだことがあります。」
「(将来、慰安婦被害者がいなくなっても)家族がまだいます。」
「慰安婦問題について別の見方があるのはよく理解しいます。」
というものでした。

短い間でしたが、委員は慰安婦問題について特に知識や意見をいうことなく、やはり特別詳しく調べてはいないのではないか、と感じました。イゲズ委員は対日審査会では慰安婦問題だけでなく他の様々な問題、反差別法、メディア・ネット上の差別、死刑制度、デモ集会への不当な制限、外国人地方参政権、についての質問も担当していました。

6. 慰安婦問題について委員会勧告を有難がたく受け入れる必要は全く無い

今回の136セッションでは、委員は4週間のうちに6カ国を審査して総括所見を作成、3カ国について事前質問事項を検討し纏めます。自由権規約委員会ではセッションが年3回行われます。
一つの国についても幅広い分野の様々な問題が多くあります。自由権規約を批准している国、つまり審査対象国は173か国あります。委員は18名で任期は2年(延長あり)です。
このような制度の委員会で、日本の国柄を理解した上で、日本国内における様々な人権問題を扱えるでしょうか。その中でも歴史や外交も絡む複雑な慰安婦問題について委員がどれほど理解しているのか。改めて調べたり調査したりするのかと言えば、それは期待するのが無理です。
過去の委員会の所見に倣って、これまでと同じような勧告の繰り返しになってしまうのだろうと想像がつきます。委員会の仕組み自体が、人権問題を改善できるのに本当に役立っているのか疑問です。
いずれにしても、慰安婦問題についての委員会勧告を有難がたく受け入れる必要は全くありません。日本にとって一番良いのは自由権規約の審査対象国とならず勧告も受けないようにすることです。そうは言っても、現実には規約の廃棄は難しいでしょう。
従って、こういった委員会の実態を多くの政治家、識者、一般国民に周知することが重要だと改めて痛感しました。また、NGOとしての意見表明を継続していくこと、我々と同じ意見のNGOを国連の場で増やすことの必要性も感じています。

以上

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【3-NGO発言 慰安婦問題について】

CCPR136  NGO ブリーフィング   10/13(木)11:00~  ※発言は英語
発言者:矢野義昭・藤木俊一・山本優美子

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矢野義昭 発言
<日本語訳>
回答1
民主主義の原理によれば多数者の意見と意思は尊重され政策に反映されねばならない。言うまでもなく、少数者の権利も尊重されねばならないが、少数者であっても民主的社会の規則と法には従わねばならない。暴徒が少数者に属するからという理由で、不法な暴力が許されることがあってはならない。
米国のシアトルでは2020年に、BLM(“Black Lives Matter”『黒人の命が問題だ』)が引き起こされた。BLMメンバーの暴徒たちは多数派の人たちが経営する商店を襲った。黒人の経営する商店すら襲われた。
中国やミャンマーの少数民族を含め、世界中の人びとの人権が尊重されるべきである。これらの国においては、独裁体制や権威主義的態勢の下で明らかな人権侵害が行われているが、民主的な社会においては不法な暴力は許されてはならない。すべての国のすべての人々の人権が尊重されねばならない。
一部では、少数者保護の名目で不法な暴力を行使するのを躊躇しない少数者のグループが優越した力を持っている。そのような不法な暴力はいかなるグループのものであっても許すべきではない。少数者の権利の擁護は合法的で平和的な方法により実現されるべきである。

回答2 (日本人に対するヘイトスピーチが加えられた事例はあるかとの委員からの質問に対する回答)
ヘイトクライムについて、少しコメントを付け加えたい。日本では少数者に対するヘイトクライムが極めて厳格に禁じられており、一般の多数者の日本人が、彼らの合法的な要求や歴史的事実に基づく彼らの権利や名誉を守ることを明言することができない場合もある。
例えば、いわゆる「慰安婦」問題について、第二次大戦中の日本の帝国陸軍による強制性を裏付ける歴史的事実はない。現在、海外に在住する日本人の生徒たちが、時々そのような誤った歴史により責められることがある。いわゆる「慰安婦」問題も含め、合法的な反対意見は、すべての国とすべての社会において許容されるべきである。

<発言英語>
A1; According to the principle of the democracy, the opinions and the will of the majority should be respected and reflected in the policy. Of course, the rights of the minorities should be respected, even the minorities should obey the rules and the order of the democratic society. We should not allow the illegal violence for the reason that the riots are belonging to the minorities.

In Seattle, the United States, the violence caused by the BLM members in 2020. The riots of the BLM members assaulted the shops owned by the inhabitants belonging to the majority. Even the African American people’s shops were assaulted.

We should respect the human rights of the people in the world including the minorities in the PRC and Myanmar. In those countries, the clear violations of the human rights are conducted under the dictatorship or the authoritarian government. However, we should not allow the illegal violence of the minorities in the democratic society. We should respect the human rights of all people in all countries.

In some cases, the dominant power belongs to the minorities who would not hesitate use the illegal violence under the name of the protection of the minorities. We should not allow such illegal violence conducted by any groups. The protection of the minority’s right should be realized in the legal and peaceful ways.

A2: I’d like to make some additional comments on the hate crimes.
The hate crimes against minorities are too severely restricted in Japan, the majority of the ordinary Japanese people in some cases cannot declare their legal requirements and the historical facts for the protection of their rights and honor.
For examples, concerning the so-called comfort women issue, there are not any historical facts verifying the coercion of the Japanese Imperial Army during WWII. Currently some Japanese students living in foreign countries, are sometimes blamed by such a fault history. The legitimate opposing opinions should be allowed in every country and every society including the issues concerning the so-called comfort women issue.

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藤木俊一  発言
<日本語訳>
議長、そして、名だたる委員の皆様、有り難う御座います。

日本は、2600年を超える歴史の中で日本以外では理解する事が難しい独特な文化や習慣があります。

そんな中の1つに、争いが起きる前に話し合いで解決するというのがあります。自らが悪くないと考えていても、その場を納めるために謝罪する事がしばしばあります。

日本には、それを奨励する「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という諺(ことわざ)があります。これが意味するのは、偉くなればなるほど、謙虚になるということですが、日本政府は、この日本的な手法を外交に適用したために、過去に多くの失敗を繰り返してきました。

日本と韓国の間で現在もくすぶり続けている問題に慰安婦問題があります。
日本政府は慰安婦問題に関する本格的な調査をしましたが、日本政府や軍による強制連行などを示す証拠は見つかりませんでした。

さらに、第二次世界大戦末期の1944年、米軍の朝鮮半島出身の慰安婦の尋問報告書には、彼女たちが「高給取りの売春婦」であり、「自由に買い物や活動を楽しんでいた」と記されているのです。
1970年に韓国が漢字を使わなくなってから、多くの韓国人は、歴史的な出版物を読むことが出来なくなりました。さらに、1995年には、日本が韓国を併合していた時代に建てられた立派な(朝鮮総督府の)建物を爆破しました。

現在でも、韓国政府は自らの負の歴史を消し去るために爆破しています。爆破が不可能な場合は、教科書の歴史を書き換えています。

1993年、韓国の歴史修正主義に基づくこの捏造を終わらせるため、韓国政府の要求に応じて日本の官房長官が「河野談話」を発表しました。

その代わり、韓国政府はこれ以上補償を要求しないことを約束しました。 しかし、彼らの要求はいまだに続いています。

同様に、韓国の修正主義は、戦時中の労働者が「奴隷として働かされた」と主張し、韓国人が、日本企業への補償を要求する事態にもなっています。

朝鮮にルーツをもち日本に住んでいる人たち、韓国から移住してて日本で通名を使って日本人が発言しているように見せかけている人たち、韓国人の配偶者を持つ活動家や弁護士たちが韓国政府と連携して、歴史的出来事を改竄し、お互いの金銭的利益と、日本を見下すために動いています。

韓国政府と民間団体は、日本政府に圧力をかけ続けるために、国連を悪用しています。その結果、日本人の評判は各国で大きく傷つき、屈辱的な思いをすることになっています。

私たちは、日本政府がこの河野談話を速やかに撤回し、事実を世界に公開し、日本人の尊厳を回復するために努力することを望みます。

1965年、日本と韓国は「日韓基本条約」を締結し、国交を回復しました。 この条約で、日本は韓国に対して「完全かつ最終的に解決する」ための金銭的援助を行い、それ以前のことに関しては、双方とも一切主張しないと約束しました。

名だたる委員の皆様、当委員会より以下の3点を締約国に対して勧告していただきたいと思います。

1. 河野談話を破棄すること。

2. 日本政府は韓国政府に対し、「日韓基本条約」の履行を強く求めるべきであること。

3. 日本政府は、今後、韓国政府に対し、歴史の捏造をやめるよう働きかけ、建設的な二国間関係を構築するよう努力するよう勧告すること。

ご清聴、有り難う御座いました。

<発言英語>
We appreciated tireless works of committee members and thank you for giving me an opportunity to speak today.

Japan has a unique culture and customs in its over 2600-year history that are difficult to be understood outside of Japan. One is “to resolve disputes through discussion before conflicts occur,” and even if one is not at fault, apologies are often made in order to keep the situation calm. In Japan, there is a saying that encourages this: “The boughs that bear most hang lowest.” This means, “the more noble, the more humble.” The Japanese government has failed many times in the past by applying this Japanese approach in diplomacy.

One of the historical issues still smoldering between Japan and Republic of Korea (ROK) is the comfort women issue. The Japanese government conducted a full-scale investigation, but didn’t find any evidence to show forcible mobilization either by the Japanese government or military. Furthermore, in 1944, at the end of World War II, U.S. military interrogation reports of comfort women from the Korean Peninsula, stated that those women were “well-paid prostitutes,” and “They enjoyed shopping and activities freely.”
After Korea ended using Chinese characters in 1970, many of them no longer can read historical publications. Further, the Korean Government has been conducting anti-Japanese education, and in 1995, they even blew up a magnificent building built during the Japanese annexation period. To this day, the government blows up its own negative history to erase it, and if it cannot blow it up, they revise history in their text books.
In 1993, in order to end this fabrication based on ROK’s historical revisionism, a Japanese cabinet secretary issued a statement called the “Kono Statement” as the ROK government demanded. In exchange, the ROK government promised that they would not demand any further compensation. However, their demands still continue. This has caused the relationship to remain cold.
Similarly, ROK’s revisionism has also led Korean people to demand compensation from Japanese companies for wartime workers whom they claim were “forced to work as slaves.” The ROK government and private organizations have misused the United Nations to keep pressure on the Japanese government.
As a result, the reputation of the Japanese people has been severely damaged and humiliated in various countries. We hope that the Japanese government will quickly withdraw this Kono Statement, disclose the facts to the world, and work to restore the dignity of the Japanese people.
In 1965, Japan and ROK signed the “Basic Treaty between Japan and Korea,” to restore diplomatic relations. In this treaty, Japan provided Korea an aid package to “completely and finally settled” the dispute, with neither side making any claim for what happened before that time.
We would like CCPR to recommend the following three points to the Japanese government:
1. Withdraw the Kono Statement.
2. The Japanese government should strongly urge the Korean government to implement the Basic Treaty between Japan and Korea.

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山本優美子  発言
<日本語訳>
私は、二つの問題について発言します。

一つ目は自由権規約12条に関連する問題、「北朝鮮による日本人失踪者について」です。

ご存じのことと思いますが、日本政府が公式に認めた北朝鮮による拉致被害者は17名います。しかし、これは氷山の一角に過ぎません。

こちらは日本のNGO「特定失踪者問題調査会」の報告書です。日本人拉致被害者と失踪者のリストに540名の名前があります。

更には警察のリストによると、北朝鮮による拉致の可能性のある失踪者がおよそ900名もいます。家族の不在により、明らかになっていないケースはもっとあるでしょう。

何故このような酷い人権侵害が何十年も解決されぬまま放置されているのでしょうか。家族は帰りを待ち望んでいますが、年老い、残された時間は限られています。

日本政府は全ての拉致被害者を早急に救出すべきです。そして委員会には、この深刻な人権侵害について日本政府と話し合うよう、心よりお願い申し上げます。

二つ目に、慰安婦問題について発言します。

自由権規約7条(拷問)と8条(奴隷)は慰安婦問題については当てはまりません。よって、委員会は15条(遡及処罰禁止)に則って慰安婦問題を取り下げるべきです。

慰安婦問題については論理的な瑕疵があります。その理由は
1 慰安婦の強制連行を証明する文書は存在しません。
2 慰安婦による貯金・送金・映画鑑賞・宝石で着飾ったなどの供述は、性奴隷の環境と違背します。
3 第三者の誰も自称慰安婦証言を十分かつ的確に立証していません。
4 日本には戦前戦中、戦後1950年代まで公娼制度があり、公娼制度と戦争犯罪とは無関係です。

歴史について言えば、日韓併合時代、前帝国の統治能力欠如が朝鮮半島に影を落とし、貧困層は人身売買などにより搾取されていました。人身売買は併合時代も罰せられました。登録事業者と雇用契約を結んだ慰安婦と人身売買の被害者とは違うものです。歴史認識はその時代の背景を織り込むべきです。
当時の加害責任が、仮にあったとしても、それを現在に持ち出す合理性はありません。

ありがとうございます。

以上
<発言英語>
I would like to speak two issues.

The first one, in relation to article 12, is “Missing Japanese Probably Related to the Democratic People’s Republic of Korea”
As you might know, the Japanese government has been officially identified 17 Japanese citizens as “abductees by DPRK.”
But these cases are just only “the tip of the huge iceberg”.
This is an NGO report submitted by “the Investigation Commission on Missing Japanese Probably Related to North Korea”
There is a list of Japanese Abductees and Missing Persons.
You find 540 (five hundred and forty) names.
Moreover, the National Police Agency has its own list of approximately 900 (nine hundred) missing persons possibly abducted by DPRK.
We assume there could be more cases because of absence of family members.
Why have such terrible human rights violations been left unsolved for decades?
Families have been waiting for them to come home.
However, as families get older, their time is very limited.
The Japanese government must rescue all the victims immediately.
And we sincerely request CCPR to discuss this gravest human rights violation during the dialogue with the Japanese government.

Secondly, I would like to speak “comfort women issue.”
The Articles 7 and 8 are not pertinent to the Comfort Women.
We request that the committee must dismiss the issue in accordance with Article 15.

Claims regarding the Comfort Women have critical flaws in the logic.
The reasons are;
(1) There has been no documentary evidence to corroborate abduction of the women;

(2) The statements made by the Comfort Women that they put some earnings in postal savings, mailed home some money, enjoyed watching movies in town, decorated themselves with jewels etc. do not make sense if they were sexual slaves;

(3) No third parties have yet presented sufficient and competent evidential matters as to the assertions of the self-proclaimed comfort women;

(4) Because the licensed prostitution was in place in Japan before and during the war, and until early 1950s, the licensed prostitution has nothing to do with war crimes.

Speaking of the history, during Japan’s Annexation, the Korean peninsula saw remnants of governance flaw of the former empire.
Impoverished members of society were exploited by human trafficking.
Human trafficking was punishable during the Annexation years.
And victims of human trafficking were irrelevant to the Comfort Women who signed the employment agreements with registered business operators.
A firm perception of history must factor in the background of the times.
There is no objective rationality to extend the act of misconduct, if at all, of those times to the present.

Thank you very much.

以上