学者55名共同声明「映画『主戦場』に係る上智大学の研究倫理を問う」

「不当な日本批判を正す学者の会 Academics’ Alliance for Correcting Groundless Criticisms of Japan ( https://aacgcj.org/ )」が声明を発表してくださいました。
是非お読みください。

学者の声明:映画『主戦場』に係る上智大学の研究倫理を問う
https://bit.ly/3fDBGjB

Scholars’ Statement: We Question Sophia University’s Academic Integrity regarding the Film Shusenjo
https://bit.ly/3bkr1XL

2020年5月11日発表プレスリリース
https://bit.ly/3cq6Zw6

呼びかけは、「不当な日本批判を正す学者の会」(AACGCJ)の

会長=田中英道、東北大学名誉教授・文学博士
理事・事務局長=山下英次、大阪市立大学名誉教授・経済学博士
理事=伊藤 隆、東京大学名誉教授・文学博士
理事=小堀桂一郎、東京大学名誉教授・文学博士
理事=渡辺利夫、東京工業大学名誉教授・経済学博士

が中心となり、合計55名の先生方が賛同して下さいました。

声明より一部ご紹介
「このように、この研究を直接実施した当時上智大学の大学院生だった出崎幹根とその指導教員の中野晃一教授は、上智大学が定めている研究倫理規定に完全に違反して、詐欺的行為によって、インタヴュー映像を撮影し、それをきわめてアンフェアに編集し、なおかつ無断で商業映画に仕立て上げ、大々的に、映画館や大学等で拡散してきた。すなわち、今日に至るまで、保守系論者 8 名の名誉を著しく棄損する行為が続いている。しかも、日本の国と日本人を国際的に貶める状態が続いているわけであり、われわれとしては座視できない。」

「今回のような極めて深刻な研究倫理規定違反を放置したとすれば、上智大学の社会的信用が失墜するだけでなく、わが国の学術共同体全体の信用が問われることになる。本件に関して、上智大学が、調査委員会を中心に、しっかりした対応を取らなかったとすれば、研究倫理の信頼性は、上智大学一校にとどまらず、日本の学術研究全体が後退するという深刻な事態へと進展しかねない。」

「研究を実施した当時の上智大学の大学院生の出崎幹根とその指導教員の中野晃一は、文科省のガイドラインの趣旨に沿うという意味からも、同大学によって、厳正に処分されるべきである。」

<参考ニュース>
産経ニュース 2020.5.11
慰安婦扱った映画「主戦場」めぐり、学者の会が上智大の研究倫理を問う声明
https://www.sankei.com/world/news/200511/wor2005110012-n1.html

国連女子差別撤廃委員会宛て「女子の皇位継承に関する事項を問題点一覧表より削除するための要請」

国連の女子差別撤廃委員会が日本政府に対し
「皇室典範について、現在は皇位継承から女性を除外するという決まりがあるが、女性の皇位継承が可能になることを想定した措置についての詳細を説明せよ」
という質問を出しました。(詳細はこちら

これに対して市民団体「国連委信頼性向上協会」が質問の削除を求める要請を送りましたのでご紹介します。

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原文英語/English

 

2020年4月15日

発信: 長尾秀美、国連委信頼性向上協会代表

宛先: 国連女子差別撤廃委員会

主題: 「女子の皇位継承に関する事項」を問題点一覧表より削除するための要請

出典: 日本政府が第9期定期報告書提出前に考慮するべき問題点および質問事項一覧表(2020年3月9日付けCEDAW/C/JPN/QPR/9 未編集版)

親愛なる委員会の皆さま

1. 要請

小生は国連委信頼性向上協会代表として、貴委員会が差別および法制化構想と題された第2段落にある以下の文章を撤回・削除されることを要請します。

「現行の女子を皇位継承から除外する皇室典範に関し、女子を継承させるべく、どのような方途が審議されているのかについて詳細を報告されたい」

2.  撤回・削除を求める理由

貴委員会は、誤解に基づいて上記文章を挿入されたのではないでしょうか。その誤解を解くために皇室に関連する重要事項などを説明させていただきたい。簡潔に述べることが肝心なので、ヘンリー8世イギリス王が6人の妻に対し述べたように、長い時間は掛けません。

2.1. 皇室の歴史

2.1.1. 初期皇室の歴史は、712年に編纂された古事記と720年に編纂された日本書紀に書かれています。歴史家は最初期の歴史を神話だとみなし、これについては議論の余地がありません。その神話によれば、日本の島が誕生後、3柱の神が降臨されました。その神はそれぞれ天と夜と海とをつかさどられました。注目するべきは、最初の2柱は女子で、残りの1柱が男子だったことです。神話自体に男尊女卑はありません。

2.1.2. 皇室(天皇)が歴史上いつから実在したのかについてはいまだに議論があります。初代神武天皇は紀元前660年に即位され、今上天皇は第126代目になりますが、4世紀の第16代仁徳天皇は実在したと考えられています。言い換えると、皇室には少なくとも1800年以上の歴史があります。

2.1.3. 皇室は現在まで男子による皇位承継を維持されています。しかし、日本には女子の天皇が8人おられました。最初は推古天皇(在位592-628年)で最後は御桜町天皇(在位1762-1770年)でした。8人の内お2人は2度重祚(ちょうそ)されたので、その御代(みよ)は10代となります。これは例外でした。なぜなら、8人の女子天皇は、皇室の家系を維持するために即位されたからです。つまり男子の子孫が承継するまでの間だけ在位されました

2.1.4. 男子承継を維持するため、皇室が子孫を探した例があります。山田宏参議院議員は、2019年12月1日の講演会で、以下のように述べています。

「第26代継体天皇が皇位を継承された時、皇室は男子皇孫を探すため、数代まで尊属を遡り、福井県でやっと子孫を見つけられた。」

2.2. 女子天皇と女系天皇制度

2.2.1. 先ほど述べたように、女子天皇は存在しましたが、それは例外でした。皇室が男系天皇制度を維持しているのは、皇統の血筋を承継するためです。その血筋とは人のDNAに関連していますから、それを簡単に説明します。

「DNAは、遺伝情報を持つ鎖状に連なった化学物質で、2本鎖で2重らせん構造となっていて、タンパク質と結合し、染色体を作ります。人の細胞核には、46本(23組)の染色体があり、22組は常染色体、23組目は性染色体と呼ばれ、X+Xとなれば女子となり、X+Yとなれば男子となります。」

2.2.2. つまり、女系天皇制度の導入は、内親王や女王が外部の男子と婚姻することになり、これまで続いていた皇室のY染色体を断絶させることになります。したがって、女系天皇制度は受け入れられません。

2.2.3. 皇室に男子承継者がいない場合、国会決議により特例法を定め、暫定措置として、内親王や女王を天皇にすることは可能です。しかし貴委員会の勧告はその点を明らかにしていません。

2.3. 不当な介入

2.3.1. 皇室典範改正により女子天皇を制度化するという勧告は、一見、問題ないように思われます。しかし、その勧告は主権国家に対する越権行為になります。

2.3.2. なぜならば、上記2.1-2.2.で述べたように、勧告が日本の皇室が長い間守り続けてきた血筋、すなわち、歴史を否定するからです。歴史が否定されれば、皇室が執りおこなう神式の儀式も否定されます。

2.3.3. 世界にはユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教や仏教を信奉する国家があり、それぞれの宗教には神話らしい事柄も含まれていますし、さまざまな形で儀式がおこなわれます。宗教上の教えが史実と異なるとしても、国際機関や諸外国はその是正を求めるでしょうか。主権国家の宗教に介入するでしょうか。それこそ越権行為になります。

2.3.4. 1947年に施行された皇室典範附則第2項「現在の皇族は、この法律による皇族とし」は、連合国軍最高司令官総司令部の意向を忖度(そんたく)したもので、その意図は皇室を絶やすためだといわれています。これにより、皇室は天皇と2親王と天皇の弟とその弟の3親王と天皇の甥の1親王だけに限られました。これこそが連合国軍の越権行為だったのです。1947年10月、同附則第2項に基づき、経済的な理由もあったので、11の旧皇族が皇籍を離脱されました。

3. 結論

3.1. 日本の皇室を断絶させるような権利は、国際機関や諸外国に与えられていません。

3.2. そのような権利の行使は、皇室がこれまで育くんできた貴重な文化的遺産を遡及的に否定することにもなります。皇室の存在がなければ、11世紀初頭までに完成したとされる2人の女子が書いた『源氏物語』(世界最古の長編小説)や『枕草子』(随筆)は生まれませんでした。

3.3. 以上の説明に基づき、貴委員会が冷静な判断をされ、皇室に関わる勧告の撤回・削除を伏して要請いたします。

4.  補足

2020年4月6日、エリザベス2世英国女王は、テレビを通じ、コロナウィルスに立ち向かう国民に対し次のように述べています。

「私たちが何者かという誇りは、過去の一部ではなく、現在と将来を決める。」

とはいえ、エリザベス女王は過去を否定してはいません。伝統を受け継ぐからこそ英国人は国家に誇りを持ち、その誇りがあるからこそ、彼らと国家は現在と将来に立ち向かうことができるのです。同じことが日本にも当てはまります。もちろんそこには天皇制の保持と皇室の歴史が含まれます。

敬具

長尾 秀美

国連委信頼性向上協会代表

REQUEST FOR RETRACTION OF ONE ISSUE FROM THE LIST, REGARDING “FEMALE SUCCESSION TO THE THRONE”

日本語訳/Japanese

Date:    April 15, 2020

From:  Hidemi Nagao, Chairman of the Association to Boost Credibility of United Nations Committees (ABC-UNC)

To:   Honorable Members of the United Nations Committee on the Elimination of Discrimination against Women (CEDAW)

Subj:  REQUEST FOR RETRACTION OF ONE ISSUE FROM THE LIST, REGARDING “FEMALE SUCCESSION TO THE THRONE”

Ref:  List of issues and questions prior to the submission of the ninth periodic report of Japan (CEDAW/C/JPN/QPR/9 of March 9, 2020, ADVANCE UNEDITED VERSION)

Dear Sirs and Madams,

  1. Request

I, as Chairman of the Association to Boost Credibility of the United Nations Committees (ABC-UNC), request that your committee (CEDAW) to retract and rescind the following statement in paragraph 2 (Definition of discrimination and legislative framework) of the reference.

“Regarding the Imperial House Act, the provisions of which currently excludes women from succeeding to the royal throne, please provide details on the steps envisaged to enable female succession to the throne.”

  1. Reasons to call for retraction of the statement

I suspect some misunderstandings had contributed to the committee’s formulation of the statement above.  Please allow me to explain key matters related to the Imperial Household so that they can be duly allayed.  Brevity is essential and, therefore, I will try “not to keep you long” as British King Henry VIII said to his six wives.

2.1.  History about the Imperial Household

2.1.1.  The early days of the Imperial Household are written in both Kojiki (the Records of Ancient Matters, compiled in 712) and Nihonshoki (the Chronicle of Japan, compiled in 720).  Historians regard those days as belonging to myths; there is no argument among them.  According to the myths, three important deities came into existence after the islands of Japan were created.  They were allotted the heaven, the night, and the seas respectively.  Of note is two of them were women and one is a man.  In the myths is no sexual discrimination among the deities.

2.1.2.  There are, however, controversies about since when the Imperial Household (emperors) existed.  The first Emperor Jinmu ascended the throne in 660 BC, which makes Emperor Naruhito of today the 126th Emperor of Japan.  The 16th Emperor Nintoku who reigned in the 4th century is known to have existed.  In other words, the Imperial Household is blessed with more than 1800 years of history at least.

2.1.3.  The Imperial Household maintains until today the male succession policy.  History saw there were eight empresses in Japan, the first one being Empress Suiko from 592 to 628 and the last one being Empress Gosakuramachi from 1762-1770.  The empresses reigned for ten eras because two of them were enthroned twice.  They were exceptions.  For, eight empresses ascended the throne for the purpose of maintaining the imperial lineage.  Each of them reigned for a certain period till a male descendant got enthroned.

2.1.4.  There was a serious search to locate imperial descendants for the male succession policy.  Senator Hiroshi Yamada of the House of Councilors said at his speaking engagement on December 1, 2019 as follows.

“Before the 26th Emperor Keitai ascended the throne, the imperial court did an all-out search of ascendants up to several generations and found a descendant in Fukui (in the north of Kyoto).”

2.2.  A woman on the throne and the matrilineal imperial system

2.2.1.  As mentioned earlier, several empresses were in the Imperial Household history.  But they were exceptions.  The policy is to maintain the authentic imperial lineage, the emperor’s bloodline.  The bloodline which relates to DNA is briefly explained here.

“DNA is a chemical molecule composed of two chains that coil around each other to form a double helix carrying genetic instructions.  It forms a chemical union with protein to produce chromosomes.  In a human cell are 23 pairs of chromosomes in which 22 pairs are autosomes and one pair are sex chromosomes.  A female has X+X chromosomes while a male has X+Y chromosomes.”

2.2.2.  The introduction of the matrilineal imperial system to the Imperial Household would mean, for example, the emperor’s daughters get married to males outside the imperial lineage, which translates to discontinuance of the imperial Y-chromosomes.  This system is not acceptable.

2.2.3.  If the Imperial Household happens to have no male descendants for the throne, it is possible for the Japanese parliament to pass a special law to ascend a daughter to the throne as a temporary measure.  CEDAW’s recommendation mentioned in paragraph 1 above does not clarify the issue of the authentic imperial lineage.

2.3.  Unwarranted intervention

2.3.1.  The recommendation to revise the Imperial Household Law to accommodate empresses seems to be without problem at first glance.  it would, however, be a case of “ultra vires” (beyond the powers).

2.3.2.  For, as mentioned in subparagraphs 2.1-2.2 above, the recommendation would deny the bloodline the Imperial Household has kept for a long time; it would amount to denying its history.  Once its history is denied, the Shinto rituals conducted by the household gets denied, too.

2.3.3.  There are many countries in the world that embrace Judaism, Christianity, Islam, Hinduism, and Buddhism, each of which has semi-mythical or mythical elements and conducts rituals in some form or another.  Even if some teachings in those religions are contrary to historical facts, would international organs and foreign governments call for correction of them?  Would they intervene those religions sovereign states embrace?  Such an act would become a case of “ultra vires.”

2.3.4.  Section 2 of the Additional Clause of the Imperial Household Law enacted in 1947 states “the present imperial family shall be the imperial family under this law.”  The clause is said to have seriously regarded the opinion of the General Headquarters, the Supreme Commander for the Allied Powers.  That is, the Allied Powers intended to make the Imperial Family eventually become extinct.  Because of section 2, the imperial family was limited to the emperor, his two sons, his brother, the brother’s three sons, and his nephew’s son.  The act was nothing but an unwarranted intervention.  In October 1947, 11 former imperial families—according to the section and due partly to economic hardships anticipated—voluntarily separated from the imperial family.

  1. Conclusion

3.1.  No international organs or foreign governments have any vested right to call on Japan for discontinuing the Imperial Family.

3.2.  Such an intervention would be an act to retroactively deny rich cultural heritage the Imperial Household has nurtured until today.  Were it not for the Imperial Family, such great works as the Tale of Genji (the oldest and longest novel in the world, written by a woman) and the Pillow Talks (a collection of essays authored by another women) would not have been created at the turn of the 11th century.

3.3.  Based on my background explanations, I humbly request the honorable CEDAW members to retract and rescind the recommendation concerning the Imperial Household, by making a philosophical judgement.

  1. Supplementary note

On April 6, 2020, British Queen Elizabeth II made a televised address to her people as follows amid corona virus pandemic (COVID 19).

“The pride in who we are is not a part of our past, it defines our present and our future.”

The queen’s intention is not to deny the past.  Observing tradition will make the Britons proud of their nation.  They and their nation, with the pride, can tackle with their present and their future.  The same is equally true of Japan, not to mention the continuity of the Imperial Household.

Very respectfully yours,

Hidemi Nagao

Chairman, the Association to Boost Credibility of United Nations Committees (ABC-UNC)

「男系男子は女子差別?」国連女子差別撤廃委員会が日本政府に皇室典範について質問

国連女子差別撤廃委員会から日本政府に質問が出されました。

日本語(仮訳なでしこアクション)「皇室典範について、現在は皇位継承から女性を除外するという決まりがあるが、女性の皇位継承が可能になることを想定した措置についての詳細を説明せよ。」
原文英語 “Regarding the Imperial House Act, the provisions of which currently excludes women from succeeding to the royal throne, please provide details on the steps envisaged to enable female succession to the throne. ”

この質問は同委員会が2020年3月9日付で発表した「事前質問リストList of issues and questions prior to the submission of the ninth periodic report of Japan(CEDAW/C/JPN/QPR/9)」に書かれていたものです。

この質問に対して日本政府は報告書で回答せねばならず、日本政府の回答に対して委員会が審査し、勧告を出します。

一度勧告が出る、つまり問題化されると日本政府はまた回答しなくてはなりません。同じ事が繰り返されます。

ある委員会で問題化されると、他の人権委員会でも取り上げられる可能性が高くなります。慰安婦問題も同じでした。

そうすると、「日本の皇室典範は女性差別」が国連のお墨付きで国際社会に広がり、更に日本に逆輸入されて「国連や国際社会も日本の皇室の男系男子は女子差別だと言っているぞ!」と宣伝されてしまうかもしれません。

今回何故このような質問が出たのでしょうか。それは、NGOからの意見書です。

公益社団法人 自由人権協会 」が皇室典範についてNGO意見書(2020年2月28日付)を送っていました。

意見書の内容は

  • 日本の皇室典範が天皇となりうる者を皇統に属する男系男子にしか認めないのは、女子差別撤廃条約の差別の定義に該当する
  • このような法の規定は性差別主義に根ざすものであり、日本社会における女性に対する差別を助長するものである
  • 女子差別撤廃委員会で取り上げるべき問題である

というものです。

この意見書を受けて女子差別撤廃委員会が質問事項に盛り込んだとみて間違いありません。

同委員会の委員らは有識者ではありますが、日本の事情、伝統、文化、ましてや皇室について詳しくしっている委員がいるとは思えません。

委員は会期にジュネーブに集まって条約批准国(189か国)のそれぞれの人権状況を短期間(数日)で審査します。その際、NGOの意見書に書いてあることをそのまま取り入れることがあります。

日本人委員(Ms. Hiroko Akizuki)もいますが、日本の審査に加わることはできません。

女子差別撤廃委員会は、2016年3月発表の総括所見にも皇室典範についての勧告が突然盛り込まれそうになり、発表直前に削除されたことがありました。

2016.3.9 産経 【国連女子差別撤廃委】男系継承を「女性差別」と批判し、最終見解案に皇室典範改正を勧告 日本の抗議で削除したが…

この時は日本政府の抗議で削除されましたが、今回はどうして事前質問リストに載ってしまったのでしょうか。外務省は抗議したのか、それとも知らなかったのか。

NGOからの意見書を真に受けた人権委員会の対応は、最近では2018年11月、拉致問題を扱うはずの強制失踪委員会が慰安婦問題について勧告を発したことがありました。

今回の女子差別撤廃委員会の皇室典範については、事前質問リストに載ったのでこれから他のNGOも同様の意見書を送る可能性があります。

「皇室典範の男系男子は女性差別ではない」「女子差別撤廃委員会で扱う問題ではない」という意見書も送るべきではないでしょうか。

意見書(英文・ワード)は誰でも送ることができます。
宛先 cedaw@ohchr.org

ご参考に、日本の市民団体「国連委信頼性向上協会」が女子差別撤廃委員会宛て送った「女子の皇位継承に関する事項を問題点一覧表より削除するための要請」の日本語版原文英語をご覧ください。

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<参考資料>
◆女子差別撤廃委員会
「日本政府への質問事項リスト」List of issues and questions
prior to the submission of the ninth periodic report of Japan(CEDAW/C/JPN/QPR/9)
※皇室典範については第2パラグラフの最後の三行

自由人権協会が女子差別撤廃委員会に送った意見書
「国連女性差別撤廃委員会の日本政府に対する事前質問票に対する要望事項」
日本語
http://jclu.org/wp-content/uploads/2020/03/289117afc2bbe058a8ea5f5cb82e5a62.pdf
原文英語
http://jclu.org/wp-content/uploads/2020/03/1f05968ea8e23e78810b4d5a7333d860.pdf

◆女子差別撤廃委員会
外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/index.html

国連のサイト
https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/CEDAW/Pages/CEDAWIndex.aspx

現在の委員のリスト https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/CEDAW/Pages/Membership.aspx

◆女子差別撤廃条約
原文英語 国連のサイト
https://www.ohchr.org/EN/ProfessionalInterest/Pages/CEDAW.aspx

日本語 外務省のサイト
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/3b_001.html

国連強制失踪委は本気で日本に勧告したのか?

英語/English

2020年4月
長尾秀美(元在日米海軍司令部渉外報道専門官、小説家、ノンフィクション作家)

 国連強制失踪委は本気で日本に勧告したのか?

1.皆さんは、2018年11月19日に国連強制失踪委員会が日本に対して提示した勧告(CED/C/JPN/CO/1)のことを覚えておられるでしょうか。

2.なでしこアクションの2018年11月21日付けホームページには以下の書き込みがあります。

「委員会に慰安婦問題を持ち込んだのは、日弁連女たちの戦争と平和資料館(WAM)、挺身隊問題対策協議会(*現在の正義連)です。この3団体が委員会に事前に慰安婦問題についてNGO意見書を出していました。これらのNGOの意見書や委員会への働きかけで今回の勧告になったと思われます。」

3.2018年7月12日付け意見書は慰安婦問題に関し、以下の提言をしています。

(1)公的な職にある者や指導的立場にある者が,「慰安婦」に対して行われた侵害に対する締約国の責任に関して軽率な発言をやめることを,確実にすべきである。

(2) 2015年12月の日韓合意の発表に対し,女性差別撤廃委員会が「被害者中心のアプローチを十分に取らなかったこと」を遺憾とし,「被害者の救済への権利を認め,補償,満足,公的謝罪,リハビリテーションのための措置を含む十分かつ効果的な救済及び賠償を提供すること」と勧告した総括所見を謙虚に受け止め,締約国は,被害者の思いに配慮しながら,誠実にこの問題に取り組むべきである。

4.最終的に強制失踪委員会が採択した勧告のうち慰安婦問題に関する事項は第25-26段落で、第26段落には以下のように書いてあります。

(b)事案発生時から経過した時間にかかわらず、又、正式な申し立てがなされていないとしても、それらの女性から産まれた児童の奪取を含め、強制失踪の対象とされた可能性のあるいわゆる「慰安婦」すべての事案が、徹底的かつ公平に遅滞なく調査されることを確保すること。

(c)容疑者が訴追され、かつ有罪と判断される場合、その行為の重大性に従って、処罰されることを確保すること。

5.この勧告は、強制失踪防止条約(強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約)に基づいています。同条約は2006年12月20日の第61回国連総会で採択され、2010年12月23日に発効しました。日本は当初から同条約に加盟していますが、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどは加盟していません。もちろん中国、ロシア、北朝鮮、韓国、イランも加盟していません。

6.そもそも、同条約に加盟していない韓国の正義連が提出者の一員として名を連ねているのは不合理だと思いませんか。「私たちは条約に拘束されないけれど、あなたたちは条約に加盟しているのだから、勧告を実行しなさい」と言っているのです。

7.それはともかく、日本政府が「徹底的な調査」をし、「加害者の厳重処罰」をすることになれば、非常に面倒なことが韓国と日本の間で表面化します。その度合いは韓国側の方がより大きいのです。

7.1.2017年、アーチ―・ミヤモト元米陸軍中佐(Archie Miyamoto)は 『Wartime Military Records on Comfort Women』(仮訳:慰安婦に関する戦時軍事記録)をアマゾンから出版しています。彼は外務省が保存している領事館報告書を読み、以下のように書いています(37-39ページ)。(注:筆者による翻訳)

(1) これらの報告書は、中国の各都市にいた朝鮮人や台湾人を日本人の同胞として記述している。さらに多くの慰安所が朝鮮人によって経営されていたことを具体的に証明している。この事実は朝鮮や日本ではあまり知られていない。

(2) 朝鮮人はいろいろな職業に従事していて、慰安所経営はその一つに過ぎなかった。慰安所は軍隊や軍属によって経営されてはいなかった。売春は合法で、慰安所経営も合法的職業だった。彼らの職業は写真屋、小売業、食堂、運輸業、貿易、薬屋など多岐にわたっていた。

(3)  慰安所を経営した朝鮮人は、多くの場合、女や子供を連れて来ていた。つまり家族単位で慰安所を経営していた。これは日本陸軍に所属する単身赴任や独身の男が経営していなかったことを証明する。日本人が経営する慰安所についても業態は同じだった。

(4) すべての報告書が、日本人が経営する慰安所には日本人慰安婦がいて、朝鮮人が経営する慰安所には朝鮮人慰安婦がいたと記述している。日本人経営者が朝鮮人慰安婦を雇ったという報告書は皆無だ。異なる時期に書かれた同じ町に関する報告書も多々あるが、記述に違いは見られない。

7.2.ミヤモト氏はその具体例として、中国本土3カ所に関する以下の報告書を抜き出しています。

(1) 九江、領事館報告書第561号、1938年11月8日
日本人職業

慰安所 15軒
日本人経営者 男42名、女25名、子女1名
日本人慰安婦 107名

朝鮮人職業

慰安所 9軒
朝鮮人経営者 男26名、女8名、子女3名
朝鮮人慰安婦 143名

(2) 南昌、領事館報告書第217号、1939年8月9日
日本人職業

慰安所 3軒
日本人経営者 男5名、女3名
日本人慰安婦 8名

朝鮮人職業

慰安所 8軒
朝鮮人経営者 男19名、女9名
朝鮮人慰安婦 94名

(3) 巣湖、領事館報告書第170号、1939年8月2日
日本人職業

慰安所 4軒
日本人経営者及び日本人慰安婦 男10名、女31名、子女2名

朝鮮人職業

慰安所 2軒
朝鮮人経営者及び朝鮮人慰安婦 男2名、女30名、子女1名

7.3.上記報告書によれば、64名内外の朝鮮人経営者およびその家族が19軒の慰安所で260名ほどの朝鮮人慰安婦を雇っていたことになります。その260名の慰安婦のうち何名かが強制失踪の被害者だったとすれば、処罰しなければならない「加害者」とは誰になるのでしょうか。日本政府が今になって彼らを訴追・処罰できるのでしょうか。韓国政府は日本政府と協力し、正義を追及できるのでしょうか。

8.1998年のマクドゥーガル報告書は、「軍と政府の両方が直接アジア中のレイプセンターの設立に関わり、20万人以上のアジア女性を強制的に性奴隷にし、その多くが11〜20歳であり、彼女たちは毎日数回強制的にレイプされ、厳しい肉体的虐待にさらされ、性病をうつすなどの虐待を受け、生き延びたのは25%だった。日本軍は慰安婦を確保するために暴力や誘拐や強制や欺罔という手段を駆使した」と書いています。

9.韓国が主張するように20万人の朝鮮人女性が強制されて慰安婦となっていたならば、そしてその25%となる5万人しか戦中を生き延びなかったとすれば、残りの15万人が失踪したことになります。その失踪原因(病気、虐待による殺人、逃亡)が何であれ、彼女たちを管理していたのは朝鮮人経営者だったはずです。朴裕河教授は著書『帝国の慰安婦』113ページで、「慰安婦たちの身体に残る傷は、単に軍人によるものだけではない。監禁、強制労働、暴行による心身の傷を作ったのは業者たちでもあった」と述べています。彼女が触れている業者とは悪質な慰安所経営者のことです。

10.補足ですが、台湾の台北市内(現在の万華区)にあった遊郭について、橋谷弘教授は著書『帝国日本と植民地都市』96ページで以下のように記述しています。日本人や台湾人が下記3軒の妓楼を運営していたとは想像できません。

「1940年には妓楼が25軒あって、220人の娼妓を置いて営業していた。興味深いのは、娼妓のなかに朝鮮人が2割、42人も含まれていたことである。その具体的な背景はわからないが、妓楼のなかに朝鮮楼、新朝鮮楼、半島楼などの名前がみえる。」

11.意見書を受け取った国連強制失踪委員会は、本気で日本に加害者を処罰させようとしたのでしょうか。韓国がまだ条約加盟国でないことを知った上で勧告を採択したのでしょうか。

12.なお、ここでは強制失踪防止条約第35条と国連強制失踪委員会の勧告に対する疑義(意図的な解釈)については触れません。第35条の規定を常識的に解釈すれば、同委員会の勧告がこじつけでしかないと判断されるでしょう。

第1項 委員会は、この条約の効力発生後に開始された強制失踪についてのみ権限を有する。

第2項 この条約の効力発生後にいずれかの国が締約国となる場合には、委員会に対して当該国が負う義務は、この条約が当該国について効力を生じた後に開始された強制失踪に関するものに限る。

13.最後になりますが、朝鮮戦争中に韓国軍慰安所で働き、第五補給品や洋公主と呼ばれた韓国人女性や、ベトナム戦争中に韓国軍慰安所で働いたベトナム人女性が誰一人失踪しなかったことを願っています。なお、崔吉城教授は著書『朝鮮戦争で生まれた米軍慰安婦の真実』46-86ページで、自らの戦争体験を語り、「中国人民解放軍兵士は地元女性を強姦しなかったが、国連軍兵士は慰安所が設置されるまで地元女性を強姦した」と書いています。

2020年4月6日、エリザベス2世英国女王は、コロナウィルスに立ち向かう国民に対し、次のように述べています。
「私たちが何者かという誇りは、過去の一部ではなく、現在と将来を決める」