Daily Archives: May 18, 2015

〈カナダ〉バーナビー市の皆様へ ~慰安婦像は平和の象徴にはなり得ません

AJCN(Australia-Japan Community Network)代表 山岡 鉄秀 氏が日本会議発行「日本の息吹」2015年6月号に寄稿した「〈カナダ〉バーナビー市の皆様へ 慰安婦像は平和の象徴にはなり得ません」をご紹介します。

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〈カナダ〉バーナビー市の皆様へ
慰安婦像は平和の象徴にはなり得ません

AJCN代表   山岡 鉄秀

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上の写真は米ニュージャージー州ユニオンシティに昨夏設置された慰安婦碑の近くに置かれた血だらけの人形である。このような感性を持つ人たちが主張する像が、今度はカナダにも飛び火しようとしている。果たして、これが〝平和の象徴〟たり得るのか!?

なぜcase closedとしないのか?

今年に入り、中韓反日団体による慰安婦像建立の動きがカナダにまで飛び火したとのニュースを聞き、心を痛めておりました。私共AJCNからもバーナビー市長宛てに反対の手紙を送りましたし、事務局を通じて現地で反対活動をしている方々への支援も行いました。幸いにもバーナビー市は本件がコミュニティを分断する問題であり、なおかつ、国際政治上の対立を無関係なコミュニティに持ち込む行為であると悟り、審議を継続しないことを宣言しました。ほっと胸を撫で下ろしたのもつかの間、現地日系社会の重鎮といわれる人々が韓国側と話し合いを持ち、その結果、韓国側が「想像以上に肯定的な反応だった」と喜び、慰安婦像推進委員会を作ったというニュースが流れ、「まだ油断は禁物」と緊張感が走りました。
実は、この「推進委員会」の正式名称は、「平和の少女像建設推進委員会」となっています。慰安婦像=平和の少女像としているのです。
これがいかにまやかしであるか、豪州で慰安婦像建立阻止の活動を行なってきた体験から以下、お示ししたいと思います。

慰安婦像の目的は日本を貶めて孤立させること

昨年3月、豪シドニー郊外のストラスフィールド市で、慰安婦像建立の発議がなされた時、推進派の韓人会の会長は日系コミュニティ紙のインタビューに答えて「慰安婦像建立の目的は、日本が如何に酷い国だったか、そして、今も如何に酷いか、世界中に知らしめるためです。その目的を果たすために、全豪に10基の慰安婦像建立を計画しています」とはっきり述べました。同時に地元の政治家を呼んで決起集会などを開いていましたが、そこでは「日本の軍国主義復活反対」が唱えられ、安倍政権批判が繰り返されていました。慰安婦像が日本非難の象徴に過ぎないことはこのことからも明らかです。
さらに、昨年7月の安倍首相来豪時には、反日団体の代表を務めるストラスフィールド市の副市長が、トニー・アボット豪首相宛てに公開レターを書いて国会議員や地方議員に拡散するという挙に出ました。その内容は、前述の日本非難に加えて、「豪州政府は日本をベストパートナーと見做すべきではない」などと政治的主張をした上で、その流れで慰安婦像を設置せよと要求しています。
また、9月にはこの団体が改めて韓国系の新聞に活動目標を掲載しましたが、「安倍のどす黒い魂胆」というような下品な表現に加え、在豪の団体でありながら、「米国政府に日本と距離を置くように」求めることまで主張していました。ここまでくると、彼らの目的が、慰安婦問題にかこつけた、日豪、日米の離反であることがわかります。それは海洋進出を謀る中国の政策とずばり一致します。韓国系の背後で、中国が糸を引いているのです。現に豪州では「中韓反日連合」であることを隠していません。

女性の人権という隠れ蓑

こうして極めて攻撃的な態度で攻めてきた中韓反日団体ですが、昨年4月1日のストラスフィールド市の公聴会で頓挫して以来、自分たちの主張がすんなりと通りそうもないと悟ると、一転して「慰安婦像は女性全体への暴力を防止するためのもので、家庭内暴力の被害者も含める」などと、論点をすり替える作戦に出て来ました。さらに、ナチスのホロコーストを記念するモニュメントを建てたからといって、ドイツ人が差別されるわけではないのだから、日本人も大丈夫だ、などという理屈まで持ち出す始末です。そして、米国でやったのと同じように、市長や議員たちに票田を背景とした圧力をかけ続けています。
さて、慰安婦像が純然たる女性の人権擁護が目的で、平和の象徴になり得るのなら、慰安婦像の建立を含む全ての活動は、和解(reconciliation)を目指すものでなくてはなりません。もし、和解と共存が目的なら、いきなり議会に持ち込む前に、日系人コミュニティに相談を持ち掛け、合意を形成しようとするのが筋ではないでしょうか? なぜ、意表を突いて強引に決めてしまおうとするのでしょうか? それも、世界中で同時多発的に行おうとしているのです。
それは前述したような敵対的動機があるからと言わざるを得ません。ニュージャージー州のユニオンシティに建てられた血まみれのマネキン人形をご覧になりましたでしょうか?(上写真)
それでもなお、慰安婦像が平和の象徴になり得ると思う方がいらしたとしたら、失礼ながら、現実から目をそらした恐るべきナイーブさと申し上げねばなりません。そもそも交流と和解を目指すなら、慰安婦像ではなく、文化祭などのイベントにすべきでしょう。

世界中の日系人のためにも毅然とした幕引きを

この問題は、カナダの一都市でたまたま発生したローカルな問題ではありません。中韓による、世界的な反日キャンペーンの一端がバーナビー市に飛び火した、ということです。したがって、万が一、ここで現地の韓国系と日系の住民が妥協して慰安婦像を建てることになった、などという前例を作ってしまったら、彼らは世界中に「慰安婦像は日本人も納得する平和の象徴」と喧伝して、さらなる慰安婦像を建てようとするでしょう。それが現実です。
私共AJCNは「非敵対的合理主義」をモットーとしており、どんなに相手が攻撃的でも、敵対的な言動は慎んで行動していますが、現実から目をそらすことはしません。カナダでの安易な妥協は、世界中で防戦している日系人に多大な損失を被らせることになるでしょう。
バーナビー市では、せっかく市長の良識的な判断を得たのですから、世界中の日系人のためにも、毅然として幕引きをして頂きたいと思います。
ストラスフィールドで慰安婦像阻止のために熱心に活動していたある日本人男性が、市議会で慰安婦像に関する議論を傍聴した数日後、自宅のアパート内を見慣れないアジア人の男性グループが徘徊し、奥様と目が合うと慌てて退去したという不審な出来事があり、その数日後に、男性の乗用車の前輪が鋭い刃物で切り裂かれる、という事件がありました。我々日系人(あるいは在外邦人)は、世界のどこに居ようとも、協力し合って、一日も早くこの問題に終止符を打たねばなりません。

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◆カナダの慰安婦像問題
カナダ西部のブリティッシュコロンビア州バーナビー市で、慰安婦像設置の動きが浮上している。カナダでは初めてのこと。同市の姉妹都市である韓国の華城(ファソン)市からの提案が発端。米国同様、姉妹都市提携から反日行動を展開する韓国側の戦略がカナダにも拡大した実態が浮かび上がった(4月2日付産経)。
これに対し現地在住の日本人やカナダ人らが反対活動を展開。日系住民からの500筆を始め、ネットでも1万3千人以上の反対署名が集った。
コーリガン市長は4月15日、「地元の日系カナダ人社会などにおいて懸念が生じる可能性があることに気付いた」として、判断保留を表明。
沈静化するかと思われたが、今度は、韓国系住民が「平和の少女像建設推進委員会」を発足させ、像設置に反対した日系住民の懐柔策に乗り出している(4月26日付産経)。ことに戦時中に収容所に送られたりして辛酸を嘗めた年配の日系人たちと接触し、同じ「戦争の犠牲者」だとして、「平和の」少女像への理解を求めようとしているという。コーリガン市長は、先述の保留表明時、「日系と韓国系の双方が納得する提案がなされればそのとき検討する」とも述べており、予断を許さない状況だ。

◆プロフィール
やまおか てっしゅう
AJCN(Australia-Japan Community Network)代表。
豪ストラスフィールド市において推進されていた慰安婦像設置計画を阻止するため、地元在住の日本人を集めてJCN(後にAJCNへ改称)を結成、コミュニティの和の大切さなどを訴え、市議会に設置可決を見送らせた。その経緯については、月刊『正論』2月号に執筆している。