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【動画】大集会「主戦場」糾弾する!10月25日憲政記念館

当日は大雨の悪天候にも関わらずおよそ100名にご来場いただきました。
有難うございました。
引き続きご支援いただけますようお願い申し上げます。

詐欺映画『主戦場』を糾弾する#1

映画「主戦場」と上智大学研究不正事件

①【開会挨拶 加瀬英明 外交評論家】

②【基調講演:藤岡信勝氏 詐欺映画『主戦場』と上智大学研究不正事件】

③【いもこじ討論会:司会 原口美穂氏 】
藤岡信勝・山本優美子・藤木俊一(ビデオ映像:ケント・ギルバート & テキサス親父トニー・マラーノ)

詐欺映画「主戦場」を糾弾する!①基調講演:藤岡信勝氏 令和元年10月25日

詐欺映画「主戦場」を糾弾する!② いもこじ討論会 令和元年10月25日 憲政記念館

東京スポーツ 2019.10.30(水)
慰安婦問題テーマの映画「主戦場」映画祭で上映見送り 出演者が”告発”「黒幕いる!」
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/movies/1602693/

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2019.10.25

二宮報徳連合 10月の特別シンポジウム
詐欺映画「主戦場」を糾弾する!

日本の保守系論者8人に、学問研究の名をかたって取材し「慰安婦=性奴隷」説に立ったプロパガンダ映画「主戦場」は、詐欺映画以外の何物でもない。
こんな詐欺によって、慰安婦=強制連行・性奴隷説を復活させよという
反日左翼のたくらみを許してならない!

【日時】
令和元年10月25日(金)17:00開場 17:30開会 19:50終了予定

【場所】
憲政記念館・講堂
地下鉄永田町駅から徒歩5分、国会議事堂駅から徒歩7分
東京都千代田区永田町1-1-1

【プログラム】
・開会の挨拶  加瀬 英明 先生(17:45~)
外交評論家、福田・中曽根政権時の首相特別顧問。日本を代表する保守派言論人。

・基調講演 藤岡 信勝 先生 (18:00~18:50)     教育研究者。東京大学と拓殖大学の教授を歴任。「自由主義史観研究会」を創設。「新しい歴史教科書をつくる会」の創立に参加し、現副会長。

・いもこじ討論会 (19:00~19:50)
司会進行:
藤田裕行 二宮報徳連合 代表
原口美穂 手本は二宮金次郎の会 会長
パネリスト:
加瀬英明 「慰安婦の真実」国民運動 代表
藤岡信勝  新しい歴史教科書をつくる会副会長
山本優美子 なでしこアクション 代表
藤木俊一  テキサス親父 日本事務局事務局長
ケント・ギルバート 米加州弁護士(ビデオメッセージ)
トニー・マラーノ テキサス親父(ビデオメッセージ)

【参加費】
1,000円、 どなたでも参加可能です。

【主催】
二宮報徳連合 代表 藤田裕行
問い合わせ先 herofujita7@yahoo.co.jp / 080-5543-0111
手本は二宮金次郎の会 会長 原口美穂

【後援】
「慰安婦の真実」国民運動
アジア自由民主連帯協議会
新しい歴史教科書をつくる会
生き証人プロジェクト
英霊の名誉を守り顕彰する会
国際歴史論戦研究所
史実を世界に発信する会
「真実の種」を育てる会
そよ風
正しい歴史を伝える会
調布『史』の会
テキサス親父日本事務局
なでしこアクション
日本時事評論
捏造慰安婦問題を糺す日本有志の会
捏造日本軍「慰安婦」問題の解決をめざす北海道の会
不当な日本批判を正す学者の会
誇りある日本の会
論破プロジェクト

【懇親会】
全国町会館の地下 「ペルラン」にて20時より。会費 4,000円
要予約 藤田まで herofujita7@yahoo.co.jp / 080-5543-0111

文部科学大臣への報告書~上智大学教授中野晃一と元大学院生出崎幹根の「主戦場」 研究不正事件と大学当局の対応について

映画「主戦場」被害者を支える会から文部科学大臣への報告書「上智大学教授中野晃一と元大学院生出崎幹根の「主戦場」 研究不正事件と大学当局の対応について(令和元年10月1日付)」を転載いたします。

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令和元年(2019年)10月1日

文部科学大臣 萩生田光一 殿

ケント・ギルバート
藤岡信勝
藤木俊一
トニー・マラーノ
山本優美子

上智大学教授中野晃一と元大学院生出崎幹根の「主戦場」
研究不正事件と大学当局の対応について(報告)

1 研究倫理の存在理由

上智大学の中野晃一教授とその指導下の元大学院生・出崎幹根(日系二世の米国人)が犯した研究不正事件と大学当局の不誠実な対応について、被害者の立場からご報告いたします。はじめに、研究倫理の存在理由について基本的な位置づけを確認いたします。

一般社会では、法に違反しなければ、ほとんどのことが許容されます。しかし、学術研究の世界では、法を順守するだけではなく、研究倫理規範にも従わなければなりません。そのような倫理規範が独自に存在するのはなぜかというと、それなしには学術研究そのものが成り立たなくなるからです。

研究倫理規範の一つは、「捏造・改竄・剽窃」をしないという規範です。即ち、「嘘をついてはならない」というものです。学術研究において「嘘をつく」ことがありうるとしたら、真理探究の手段としての学術研究はその存在価値を失います。

もう一つの研究倫理規範は、「研究対象者に被害を与えてはならない」という規範です。人の行動や思考その他に関するデータを研究調査の対象とする全ての研究は、研究対象者からの善意の協力がなければ成り立たないものです。もしも、この「研究対象者に被害を与えてはならない」という研究倫理規範が守られなければ、善意で研究に協力する者は被害を受けることも覚悟しなければならない、ということになります。そうなったら、研究協力者は誰もいなくなり、研究基盤が崩壊します。

研究倫理規範に反する研究不正が発覚した場合、研究機関(大学等)は、研究不正を厳格に調べ上げ、再発しないように処分を下さなければなりません。そこに故意が認められた場合は、違反者は学術の世界からの追放をも免れません。もしも、こうした研究不正に厳正な対処がとられなかったとすれば、学術研究が「嘘をつき」「研究対象者を攻撃する」こともあり得るということになります。そうすると、学術研究は成り立たなくなります。ひとたび許されると、別の研究において繰り返されないという保障は何もなくなるからです。

研究不正は、学術共同体全体の信用を左右するものです。信用修復に一次的な責任を負うのは研究機関ですが、個々の研究機関は学術共同体からその調査と処分を委任されているという関係にあります。もしも、当該研究機関に再発防止の自浄作用が働かなかったならば、次に学術共同体全体の付託を受けている監督官庁が、研究不正の解明とともに、研究機関についてもその適格性を問わなければならなくなります。そうして、当該研究不正に関与した研究者と、その是正に失敗した学術機関の両方に処分を実施して、学術研究への信用を回復することになります。

監督官庁がこの信用修復に失敗したとすれば、その国の学術研究は終焉を迎えます。

 

2 研究協力者の安全を保障するインフォームド・コンセント

学術研究において研究対象者の安全を保障するために設けられているのが、インフォームド・コンセントと呼ばれる次のような権利義務確認の手続きです。

第一に、研究対象者には、研究計画の全容について事前に十分に説明を受ける権利があり、研究者には、誠実に説明する義務があります。

第二に、研究者は、研究対象者の研究参加への同意を取り付けた上で、それを書面(研究参加同意書)によって表明してもらう必要があります。

第三に、最も重要な実体的権利義務として、研究対象者には、研究参加への同意をいつでも撤回する権利(撤回権)の行使が認められています。そして、その権利の存在を、研究者は研究開始の前に、研究対象者に明確に伝える義務があります。撤回権行使の具体的効果は、当該研究調査によって入手した研究対象者本人に関わる全ての研究資料を、当該研究で使用させず、また、他の研究を含む一切の別の用途にも使わせないことです。理由の如何に関わらず、本人が研究参加への同意を撤回した時点で、本人から取得した研究資料を回収・破棄しなければならない研究倫理上の履行義務が研究者に発生するのです。

上記3つの権利義務の履行を研究者が意図的に懈怠した場合、「人を対象とする研究」倫理上の重大な研究不正があったことになります。上智大学を含む各大学は、こうした研究不正が起こらないように内規を定め防止に努めています。ただ、個々の大学でどの程度の内規が整備されているかに関わりなく、上記の権利義務関係が成立することは学術共同体の共通了解事項であり、研究者なら誰もがわきまえている自明の規範です。

 

3 出崎の「卒業制作」研究の実施経過

今回の上智大学を舞台とした研究不正事件を時系列的にまとめると次のようになります。

① 大学院生出崎幹根は、指導教員中野晃一教授の指導の下に、自身の学位審査要件である学術研究(卒業制作)として、フィールド研究における聞き取り調査映像によって構成される映像作品を制作する研究計画を立てた。(2016年4月頃と推定される)

② 上智大学では、フィールド研究において聞き取り調査を実施する場合、その研究によって研究対象者に苦痛を与えるなどの利益侵害が起きることを未然に防ぐために、「人を対象とする研究」の倫理委員会の審査を事前に受けることを研究着手条件として定めている。ところが、本研究は、その手続きを完全に無視して研究に着手した。

③ 大学院生出崎は、2016年5月から翌年2月までの期間に、研究対象者8名(本報告発出主体の上記5名に加えて、加瀬英明、櫻井よしこ、杉田水脈の3名)に対してメールその他の方法で個別に研究協力を依頼し、8名のインタビュー映像を研究資料として入手した。

④ しかし、インタビュー調査は、「人を対象とする研究」の実施要件として上智大学が定める要件、即ち、研究対象者への研究計画書の交付、研究同意書書式の交付、同意書面の保管、同意撤回書式の交付、その他インフォームド・コンセントの手続きをことごとく無視して実施された。

⑤ その一方で、大学院生出崎は、インタビュー調査実施時に、学術研究への「研究参加同意書」であるかのように擬装して「承諾書」「合意書」のサインを詐取した。これは、被害者からの予想される抗議に対して法的に対抗するための準備であり、それを後に、商業的に公開された映画への「出演承諾書」であると強弁するための行動であった。

⑥ 指導教員中野晃一教授は、大学院生出崎に対して、上記のかくれた目的をもった「承諾書」の取得を、出崎の学位審査要件である学術研究課題作成の着手要件として課しており、商業映画への映像の転用は指導教員中野教授と示し合わせて行われたものであった。この点について具体的に言えば、承諾書へのサインを拒否した藤岡へのメールで、出崎は「私たちの指導教官(ママ)と話しましたところ、(中略)やはり承諾書へのサインなしには、ドキュメンタリーの製作へ着手することが難しいと言われました」(出崎から藤岡へ、2016年9月12日)と書いている。

⑦ 大学院生出崎は、完成した学術研究課題(卒業制作)を2018年1月10日、上智大学大学院に提出し修士の学位を得たが、卒業制作についても学位取得についても、何ら研究協力者8名には連絡しなかった。

⑧ その一方で、学術研究を通して入手した研究対象者らの研究資料(インタビュー映像)を研究対象者に無断で用いて映画を作成し、2018年10月釜山での映画祭において一般公開し、2019年4月からは配給会社を通して商業映画「主戦場」として日本で一般公開した。

⑨ 商業映画の一般公開後、8名の研究対象者(研究協力者)は、初めて出崎の学術研究の意図と性格を伝え聞くことになり、その内容が、8名の研究対象者(研究協力者)を一方的に攻撃し、反論を許さず、しかも人格的に侮辱するものであることを認知するに至った。

⑩ 7名の研究対象者(研究協力者)らは、5月30日、記者会見を開き、公開されている映画の上映中止を出崎に対して要求した。しかし、出崎は映画配給会社・東風とともに、6月3日、対抗して記者会見し、私たちの要求を拒否した。そこで、被害者5名は、6月19日、出崎と東風を相手取り、上映中止等を求めて東京地裁に民事訴訟を起こした(令和元年(ワ)第16040号)。

 

4 インタビューを受けさせるための詐欺的手口

出崎が私たちに研究協力を求めてアプローチしてきた方法は主にメールによるものでした。アプローチの具体的方法や文面は様々ですが、全てに共通していたのは、「上智大学」の「学術研究」として、協力を依頼してきたことです。出崎が最初にアプローチした山本優美子(上智大学の卒業生)に送ったメールには、インタビューについて次のように書かれていました。

「大学院生として、私には、インタビューさせて頂く方々を、尊敬と公平さをもって紹介する倫理的義務があります。これは学術研究でもあるため、一定の学術的基準と許容点を満たさなければならず、偏ったジャーナリズム的なものになることはありません」(2016年5月24日)
「公正性かつ中立性を守りながら、今回のドキュメンタリーを作成し、卒業プロジェクトとして大学に提出する予定です」(同年5月31日)

もし仮に、一人の映像作家が自身の自主制作映画のためにインタビューを依頼してきたのであれば、私たちは応じていなかったでしょう。映像作家の自主制作映画には、法律以外に何の制約も及びません。他方、出崎の場合には、「学術研究」であるため、研究協力者は学術倫理によって保護されるという期待が存在します。しかも、「上智大学」という権威ある学術機関の信用が、この期待を裏付けています。そのため、私たちは出崎の研究に協力しました。
しかし、このインタビューのプロセスには、出崎の数々の欺瞞が仕込まれていました。まず、上智大学の校章が大きく描かれた出崎の名刺には、肩書きに「大学院生」とだけしか書かれておらず、所属機関が全く不明です。そのうえ、住所や電話番号には四谷校舎の代表のものだけが記載され、連絡先として意味をなさないものでした。E-mailのアドレスも、XXX.sophia@gmail.comという、大学が正規に発行して学生に割り当てるアドレスを擬装するという手の凝ったものでした。もちろん、大学が正規に発行するアドレスのドメインは、XXX@sophia.ac.jpです。この奇妙な名刺が示しているのは、上智大学の権威によって私たちを信用させたいが、決して、身元につながるような情報は与えたくないという意図と作為です。
出崎は、「人を対象とする研究」において交付が義務付けられている「研究内容説明書」などの書式を一切見せていません。被害を受けた一人である櫻井よしこに対しては、唯一、「企画書」なる文書を提出していますが、そこにも「研究内容説明書」において明示が義務付けられている「研究責任者」「研究への参加と撤回」「予測されるリスク」「研究成果の公表」などの重要事項が省かれています。
そこまでして出崎が隠蔽したかった最大の事項は、研究責任者(指導教員)の名前です。その指導教員中野晃一教授は、従前より私たちを敵対視する言動を繰り返していました。映画「主戦場」においても、出演者の中で最長の時間を使って私たちを一方的に批判し、被害に遭った5名を「この顔見てるのは苦痛だなっていう人たち」などと、公の場で露骨に嫌悪の情を示してののしっている人物なのです。さらに、「今になって騙されたなんだって言ってるけど、全部自分がしゃべっている話なんですね」(4月19日、参議院議員会館における講演)などと言い、映画に使われているのが「自分がしゃべっている話」でありさえすれば、どのように騙しても、どのように不当なレッテルを貼って攻撃しても何ら問題ないという論理を展開する、研究倫理感覚が麻痺した人物なのです。
こうして出崎は、研究計画の全容について事前に十分かつ誠実に説明する義務を意図的に怠ることで、私たちから出崎の攻撃意図を見抜く機会を奪い、私たちを攻撃する映画の完成に漕ぎつけたのです。

※補足説明 出崎氏が櫻井よしこに送った企画書

 

5 出崎と中野教授の研究不正

今回の事件を研究不正の観点から整理すると、次の4点が倫理違反となります。

① 参加同意撤回要求に対して研究資料の破棄を履行しない義務違反
研究資料の社会的公表の中止と回収は、学術倫理上、研究協力者に保障された最重要の権利であり、研究者はそれに応じる絶対的な義務があります。5月30日、私たちが「上映中止」という形でこの要求を突きつけたのに対して、出崎はこれを拒否し、現在も映画の公開を続けています。研究協力者からの研究撤回要請を履行しないという行為は、重大な研究倫理義務違反であり、悪質な研究不正です。私たちは、今後、出崎の学位(修士号)の取り消しを大学に求めます。

② インフォームド・コンセントの手続きを履行しない義務違反
出崎は、私たちの取材において、誠実な研究であれば当然に履行するはずの、インフォームド・コンセントの手続きを全く履行していません。研究計画書の交付、研究同意書の交付および同意書面の提示と保管、同意撤回書の交付、その他インフォームド・コンセントの要件などがことごとくネグレクトされました。それによって、私たちを一方的に攻撃し侮辱する内容の映画を作成する意図が隠蔽され、私たちがその被害を受ける前に研究参加を撤回する機会が失われました。

③ 研究着手要件である倫理審査を受けていない義務違反
もしも、出崎が倫理委員会の事前審査を受けていれば、インフォームド・コンセントの手続きを義務付けられたはずです。もちろん、審査を受けなかったからといって、研究倫理上の義務を免れるものではありませんが、上記の②に挙げた事実に鑑みれば、倫理審査の回避は、実質的な研究不正です。

④ 許諾書面を詐取した研究遂行上の倫理違反
出崎は、私たち研究対象者にインタビュー取材を実施する過程において、研究倫理上必要な「研究参加同意書」を全く提示しない一方、「承諾書」なるものへのサインを執拗に迫っていました。この「承諾書」 なる文面は、現在公開されている商業映画への「出演承諾書」であるとして、私たちの抗議に法的に対抗する口実に使われているものです。
もしも、取材の過程で、卒業制作への「研究参加同意書」と、それとは別に商業映画への「出演承諾書」が研究協力者に提示されていたら、どうだったでしょう。「研究参加同意書」にはとりあえずサインするが、「出演承諾書」に対しては、完成して全編を見てから、改めてサインをするかしないかを決めるとしてサインを保留したはずです。
他方、「出演承諾書」だけが示された場合はどうでしょう。研究協力者においては、今しがた受けたインタビュー取材は、学術研究への協力であるという頭があります。学術研究は学術倫理の制約下にあり、研究協力者は保護されるという信頼があるため、サインが卒業制作の完成に必要だと言われれば、「研究参加同意書」のようなものとして受け取り、容易にサインしてしまうでしょう。そして、実際に、何人かは、そのままサインさせられたのです。
そもそも、真面目な研究において、学術研究として作成した映像作品が高評価を博し、配給会社を通じた一般公開を企画するのであれば、その時点で研究協力者に完成した全編を見せて、改めて出演承諾書にサインをもらえばよいことです。そうした手続きを踏まないで、研究調査の過程で研究対象者を法的に拘束しようとする書面を入手しようとすること自体、学術研究に対する信頼を毀損する行為です。ましてや、「研究参加同意書」と錯誤される状況を巧妙に作り出し、のちにそれを盾に法的に対抗しようとするなど、「詐欺」と言われても仕方のないものです。

今回の研究不正は、単なる規定上の手続きの形式的な懈怠ではありません。研究倫理規定の立法趣旨である「研究協力者の権利保護」を侵害することを目的として、規定上の手続きに意図的に違反したのです。本件研究不正は、形式的なものではなく、実質的で本質的なものなのです。

また、以上の研究不正は、直接の実施者は出崎ですが、その最終責任者は中野晃一教授です。中野教授の言動と証拠から、一連の研究不正行為が中野晃一教授の実質的な指導によるものであることは明らかです。

 

6 研究協力者の権利回復の進捗

前述の通り、私たちは5月30日の記者会見において、元大学院生出崎に対して、現在公開中の映画の上映中止を要求しました。出崎には、研究実施者として、研究資料を自身の研究で使用せず、また、他の研究を含む一切の別の用途にも使わない学術倫理上の責任が生じました。しかし、これを、出崎は拒否しました(6月3日の記者会見)。
次に責任履行義務があるのは、研究責任者(指導教員)です。研究責任者が誰であるかは、本人および上智大学当局の隠蔽により長らく確定的には判明しなかったのですが、東京地裁にて係争中の前記民事訴訟の被告側答弁書(9月17日付け)において、研究責任者(指導教員)が中野晃一であることが、初めて公式に判明しました。私たちは、その研究責任者である中野晃一教授に対して、本日付で出崎の「卒業制作」作品及び現在公開されている映画「主戦場」から、私たちの研究資料を回収し、残余の全てのコピーを破棄するよう要求する「研究参加同意撤回書」を配達証明郵便にて送付します。私たちのこの要求に対して、中野教授が誠実に履行する姿勢を示さなければ、故意による研究倫理違反が確定し、処分の対象となります。
中野教授が誠実に履行義務を果たさなかった場合は、履行責任は中野晃一教授の所属する研究機関である上智大学に移ります。上智大学は、回収・破棄を機関の行為として誠実に取り組むとともに、回収・破棄の履行義務に意図的に違反した、出崎および中野教授に対し、故意の研究倫理違反として処分を実施しなければなりません。
上智大学が仮に、この回収・破棄の履行に誠実に取り組まなかった場合、監督官庁(文科省)に責任は移り、監督官庁は指導・省令その他の方法により、同学に対して履行を命じなければなりません。同時に、学術研究機関としての上智大学に対して、研究不正への自浄能力の欠如に関して一定の処分を実施しなければなりません。

 

7 上智大学当局による研究不正調査の懈怠と進捗

被害者の藤岡信勝、藤木俊一、山本優美子の3名は、4月27日、不正な研究が行われた上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科の委員長あてに問題の発生した経緯を説明するとともに、インタビューに訪れた3名の元大学院生に関する質問状を送りました。すると、デヴィッド・ワンク委員長から、出崎本人からの書面による同意がない限り対応しないとの返信があり、回答を拒否されました。つまり、門前払いです。
そこで、6月21日、藤岡信勝は、山本優美子の協力のもと、「告発窓口」として大学が指定している監査室に電話をし、窓口担当者に30分ほど説明をしました。そして、同学の責任者の立場にある学長または研究倫理担当の副学長に説明のための面会のアポを求めました。ところが、当方への返事は、学長・副学長との連絡がつかない、連絡はついたが検討中である、面会するかどうかも検討中だ、いつまでに結論を出すかは答えられない、などの極めて不誠実な、際限のない引き延ばしでした。
上智大学当局において、事件に誠実に向き合う姿勢が全く見られないために、私たち5名はやむなく、出崎幹根および中野晃一の研究不正に関する「通告書」(8月28日付け)を内容証明郵便として代理人経由で、上智学院佐久間勤理事長と上智大学嘩道佳明学長あてに送付しました。すると、事件の最初の告発から実に4か月以上も経過した9月2日、告発者側は、大学が調査委員会を組織する予定であるとの連絡を電話にて受けました。9月4日には、「上智大学における研究活動上の不正行為に係る調査の手続きに関する内規」の規定に従って、大学から9月3日付けの調査委員名簿が送られてきました。しかし、5名で組織される調査委員のうち、研究者は2名であり、驚くべきことに、その両名ともが、明らかに研究上・運動上、中野の人脈に属する人物でした。私たちは、三度、裏切られたのです。当然、私たちは、詳細な忌避理由を記した異議申立書を提出しました(9月11日)。
その後、9月25日付けで、①「通告書」および「異議申立書」を踏まえ、②調査対象事項を改めて検討すべく、③調査委員を一部交代させたうえで、④予備調査の実施を予定している旨の「ご連絡」が学長からありました。しかし、①「通告書」の発出主体は5名であるにもかかわらず藤岡信勝のみを告発者として位置づけ、②交替する調査委員が誰なのかも明示されず、③予備調査の役割は本調査を実施するかしないかの判断材料を集めるものであるため、本調査を取りやめにする意図と可能性も否定し得ないものです。
私たちは四度裏切られるわけにはいきません。そこで、今度は「公開質問状並びに異議申立書」として、本日付けで文書を発出しました。

8 文部科学省への報告

学術は真理を探究するための厳粛な手段であって、人を攻撃するための道具ではありません。そうであるがゆえに、学術には高度の倫理的規範が課されると同時に、その信用が社会的に担保されるのです。今回、研究不正の実行者たち(中野晃一、出崎幹根)がやったことは、人を攻撃するための手段として学術的信用を利用するという、最も悪質なものでした。
ことは、日本の学術共同体全体の信用にかかわる問題です。もし仮に、この研究不正が放免されれば、わが国の学術共同体全体の信用毀損として、日本のアカデミズムは深刻な事態に陥らざるを得ないでしょう。この事件によって、日本の学術研究は危機にさらされているのです。
研究実施者および研究責任者において、研究協力者への攻撃意図が明白であり、権利回復を完全には期待できず、また、研究機関である上智大学の対応も自浄能力に疑いを持たざるを得ないものであるため、本日、やむなく私たちは文部科学大臣に事態を報告することとした次第です。

以上

ニューヨークタイムズは映画「主戦場」 をどう報じたか

2019年10月9日
なでしこアクション代表 山本優美子

ニューヨークタイムズは映画「主戦場」 をどう報じたか

ニューヨークタイムズに日本支局発の映画「主戦場」の記事が掲載された。インターネット版は2019年9月18日付でタイトル「戦時中の日本による女性の奴隷化を探求した映画監督が提訴されるA Filmmaker Explored Japanʼs Wartime Enslavement of Women. Now Heʼs Being Sued.)」。紙面は9月19日付ニューヨーク版第8面でタイトル「日本による性奴隷化の映画で米国人が提訴される(American Sued Over Film on Sexual Enslavement by Japan)」だ。 ( 記事日本語訳はこちら

この記事が出る前の9月3日、私はニューヨークタイムズ日本支局長リッチ素子記者の取材を受けた。写真撮影も依頼されたが写真はお断りした。結局私の発言は記事の中で使われなかったが、記事を書いたリッチ素子記者と直接話し、日本支局スタッフと接することができたのは、ニューヨークタイムズ関係者の考え方を知る上で良い機会であった。

 

■     「主戦場」全米大学上映ツアー開始と同時の記事

記事がニューヨーク版紙面となった9月19日は「主戦場」の監督ミキ・デザキ(出崎幹根)氏が「米国大学上映ツアー」を開始しした日だ。出崎氏もこの記事をツイッターで「素晴らしい記事(Great NY Times article)」 と喜んでいる。

ツアーは10月11日までのおよそ3週間、米国東海岸の北部バーモント州からジョージア州まで南下し、大陸を横断して西海岸まで、ブラウンやエール、UCLAのような有名大学を15か所回った。出崎氏のツイッターでは各大学での上映会が成功した様子が投稿されている。コネクチカット大学では、反日で有名な歴史学者アレックス・ダデン教授も参加したとのこと。UCLAではグレンデールとサンフランシスコで慰安婦像建立に協力した市民団体関係者も参加すると宣伝されていた。

記事と上映ツアー開始が同日とは、偶然とは思えないタイミングの良さだ。日本支局によると日本発の記事であっても、掲載日は本部が決めるので掲載されて初めて日本支局が知るそうだ。

全米15もの有名大学を3週間で回る手配の良さにも感心する。

出崎氏自身は一年半前に日本で大学院を卒業したばかりの36歳の一日系米国人男性だ。特段影響力のある人物とは思えない。出崎氏と映画を支援する勢力が日本だけでなく米国内にもいるのではないだろうか。

 

■    慰安婦問題  記者が理解できない三点

慰安婦は性奴隷ではないと主張する私は映画「主戦場」でレイシスト(民族差別主義者)扱いされている。これまでも米国訪問の際に「山本優美子レイシスト、ナショナリスト出ていけ」のデモに遭ったり、誹謗中傷のチラシを配布されたりして不愉快な思いを何度もしてきた。

今回取材の際、リッチ記者に「またメディアに酷いことを書かれて嫌な思いをすると思うと今日の取材も躊躇した」旨を伝えると、そんなことはないと驚いた様子だった。リッチ記者も日本支局の女性スタッフも非常に感じの良い方たちで、取材は言葉を一つ一つ確認しながら丁寧に進められた。

そんなリッチ記者と話す中で、慰安婦問題についてどう説明しても理解してもらえない点が改めて分かった。慰安婦制度と河野談話と教科書だ。

リッチ記者は、慰安婦制度について当時と現在の社会や人権状況が違うということは分かっても「軍用に慰安所があること自体があってはならない。女性への人権侵害」というという考え方だ。

記事では1993年の謝罪と表現されている河野談話は、リッチ記者は日本軍の強制性の証拠だという。確かに外務省のホームページの河野談話の英文日本語よりも更に酷い印象を与えるものだ。たとえ談話が韓国との政治的妥協であっても、2014年に日本政府が河野談話を検証しても、2016年に日本政府代表が国連人権委員会で強制連行、20万人、性奴隷を否定する発言をしても、1993年から四半世紀以上にわたって広められた河野談話は今も強制連行の証明として使われる。海外メディアの慰安婦問題記事では必ずと言っていいほど引用されている。

教科書については、リッチ記者は「米国では奴隷制度を教科書に載せている。なぜ日本では慰安婦について教えないのか」という。慰安婦制度と奴隷制度は全く違うものだし、子供たちに教えるべき重要な歴史は他にたくさんある、と説明しても「歴史の悪い面も子供には隠さず教えるべきだ」と納得できない様子だった。

 

■     ニューヨークタイムズらしい 日本は植民地で残虐行為

日本の保守層からは反日的メディアと呼ばれるニューヨークタイムズだが、今回の記事も日本は韓国を植民地にして残虐行為をしたことが前提となっている。

記事には「朝鮮半島を植民地として占領した日本」、「慰安婦の処遇を含めて、そこで行った虐待行為」、「国家の名誉を損なうべきではないとして、これまでドイツがホロコーストへの償いを通して行ったような贖罪を避けてきた」とある。

残念ながらこれらは海外メディアのお決まりの表現でもある。

 

■   影響力のある保守主義者が脅し?

記事では「出崎が映画の中でインタビューしている保守主義者たちは、日本政府の最高位の層に影響力を持つグループに属している」として、「日本の子供たちの教育のあり方や、どのような芸術作品を鑑賞させるかなどの政策の形成に係っているほか、恐らくは日本の外交政策の主なあり方、特に韓国との間の外交政策についても影響力を持っていることが注目される」とする。あまりにも過大評価だ。我々側には著名なジャーナリストや評論家もいるが、残念ながらこれほどの影響力はない。

その「保守主義者たちの感情を逆なでする」ものとして「愛知国際芸術祭は、朝鮮人慰安婦を象徴する像に対するテロの脅しによって中止に追い込まれた」との例を挙げる。その後に出崎氏の言葉「映画に対する提訴は、国家主義者たちが、いかに自らに抵抗する者たちを黙らせようとしているか」、「この映画の最重要テーマは、なぜ彼らが歴史を消したいのか?である」と続く。

慰安婦像展示へのテロの脅しと映画への抗議や提訴が両方とも保守主義者の圧力、という印象を与える書き方だ。日本の保守、国家主義者、は権力を振りかざして暴力的というイメージ。これも海外メディアのお決まりの表現だ。

出崎氏は自分がまるで権力者に圧力を受けた被害者のように語っているが、我々が「歴史を消したい」などとは彼の勝手な思い込みだ。我々が訴えたのは出崎氏の詐欺的行為と人権侵害が理由だ。被害者は我々の方である。

 

■     ニューヨークタイムズも認めた 慰安婦20万人証拠なし

記事は評価できる点もある。取材の時リッチ記者は、映画では結局「慰安婦20万人」は誰も証明できなかった、と話していた。確かにその通りで、映画では慰安婦の「強制連行、性奴隷、20万」の三点について左派の学者はだらだらと話してはいるが、結局は誰も証明出来ていない。

今回の記事ではその点をこのように書いてある。「主流派の専門家たちは、日本軍が力づくで婦女子を誘拐したことを示す直接的証拠がないこと(保守主義者たちは、この点を衝く)についても隠さず打ち明け、慰安婦とされた婦女子の人数の見積りにも大きな開きが存在することについても率直に語った」

 

■  映画は学術研究倫理違反の卒業プロジェクト

この記事をよく読むと大学関係者、研究者であれば気づくことがある。映画はそもそも卒業研究であったこと、その研究対象者が提訴したということ。つまり学術研究倫理に反した行為があった可能性が高いことだ。そして指導教授は教え子の研究協力者に対して配慮している様子が全くないこと、だ。

記事で出崎氏は「卒業テーマの研究のためにドキュメンタリー作品の制作を思い立った」とし、原告側は「映画があくまで出崎の卒業テーマ作品であって商業映画ではないことを前提としてインタビューを受けることに同意した」ことを明らかにしている。

また、「映画にも登場する、出崎の指導教官で東京・上智大学で教鞭を取る比較政治学者・中野晃一」は、「原告らは映画の解釈が自分たちにとって完全に気に入るものではなかったので、提訴をするための理由を捜していると思うと述べている」と書いている。学術研究倫理を守る指導教官であれば、教え子の研究協力者に対して配慮を欠いたこのような発言ができるはずはない。

日本では文科省の指導で多くの大学で学術研究倫理規定が設けられている。もちろん上智大学にも研究対象者・協力者の人権を擁護する学術研究倫理規定がある。研究対象者は自分が納得できなければ研究参加協力を撤回できるし、データの破棄を求めることも出来る。

米国の大学では研究倫理規定が日本よりずっと厳しいと聞く。研究者は大変な苦労をして倫理規定に則って研究に取り組んでいるのだ。研究倫理に問題のある映像が大学で上映されてよいのだろうか。

 

■     「表現の自由、言論の自由への侵害」へのすり替え

出崎氏は、9月23日付ロシア国際テレビネットワークの記事で「日本の戦時女性奴隷化についての映画『主戦場』に対する差し止め訴訟は、言論の自由、表現の自由への攻撃、議論の口封じ」と語っている。彼にとっては自分の権利だけが大切なようである。

我々が止む無く提訴するに至ったのは、彼の卒業研究に協力した我々研究対象者の訴えに出崎氏が聞く耳を持たなかったからだ。

詐欺的手法を用いて、学術研究倫理を守らずに制作し、研究対象者の人権を蔑ろにする映画は「表現の自由」でも「言論の自由」でもない。

以上

 

ニューヨークタイムズ記事 日本語訳「戦時中の日本による女性の奴隷化を探求した映画監督が提訴される」

ニューヨークタイムズが報じた映画「主戦場」の記事の日本語訳をご紹介します。
公式の日本語版がないため、有志の方に翻訳していただいたものです。

【 元の記事 】
New York Times   Sept. 18, 2019
A Filmmaker Explored Japan’s Wartime Enslavement of Women. Now He’s Being Sued.
By Motoko Rich
https://www.nytimes.com/2019/09/18/world/asia/comfort-women-documentary-japan.html

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戦時中の日本による女性の奴隷化を探求した映画監督が提訴される

東京発-出崎幹根(以下、「出崎」という。敬称略)が卒業テーマの研究のためにドキュメンタリー作品の制作を思い立った時、日本の政治に波紋を及ぼしている、ある疑問点について考証を試みた。その問題とは、終戦から75年を経た今、なぜ、政治的な影響力を持つ少数の保守勢力が、既に国際的に認知され受入れられている日本の戦時中の残虐行為について、熱心かつ声高に論争し続けるのか?ということである。

出崎が焦点を当てている問題は、具体的には、歴史研究者が呼ぶところの、第二次大戦中の大日本帝国軍隊による数万人の朝鮮人女性及びその他の婦女子の軍事用売春宿における性奴隷化である。いわゆる慰安婦は、実際には賃金支払いを受ける売春婦であると保守勢力は主張しているが、これについて出崎は詳細に追求してみたのだ。

結局のところ保守勢力は、出崎を納得させられなかった。出崎は保守勢力の主張の性格について「人種差別主義」や「性差別主義」などの言葉を使って表現したうえ、保守主義者らは「歴史修正主義者」であると結論づけた。すると、今度は保守勢力のなかから5人が彼を名誉毀損で裁判に訴えたのである。

出崎が映画の中でインタビューしている保守主義者たちは、日本政府の最高位の層に影響力を持つグループに属している。日本の子供たちの教育のあり方や、どのような芸術作品を鑑賞させるかなどの政策の形成に係っているほか、恐らくは日本の外交政策の主なあり方、特に韓国との間の外交政策についても影響力を持っていることが注目される。

慰安婦について、どのように表現しても、保守主義者たちの感情を逆なでするようだ。先月開催された愛知国際芸術祭は、朝鮮人慰安婦を象徴する像に対するテロの脅しによって中止に追い込まれた。

出崎と彼の支援者・外部の歴史家らは、かかる映画に対する提訴は、国家主義者たちが、いかに自らに抵抗する者たちを黙らせようとしているか、また同時に、1993年に日本政府が正式に行った慰安婦への謝罪に対してさえ、これに異を唱える見解を広めるためなら手段を選ばないことを示している、とする。「この映画の最重要テーマは、なぜ彼らが歴史を消したいのか?である」と36才の出崎は言う。

1993年の謝罪は、安倍晋三首相を含む政治的右派にとって、日々悪化する傷のようなものである。彼らは、朝鮮人慰安婦は、物理的強制力をもって売春宿に押し込められたことを示す証拠はないので、すなわち性奴隷ではないと主張しているのだ。

日韓両国の外交的、経済的または安全保障上の紐帯が、近年、これほどに悪化したことはない。朝鮮半島を植民地として占領した日本が、慰安婦の処遇を含めて、そこで行った虐待行為に対し、今なお負っているものに関する長年の紛争が、ついに決裂の状態に至ったかのようである。

保守主義者らは、日本が大戦中に行った行為は他の国々ほど過酷なものではないから、それをもって国家の名誉を損なうべきではないとして、これまでドイツがホロコーストへの償いを通して行ったような贖罪を避けてきた。

慰安婦に関する主流派の見方に対して声高に批判する日本の右派勢力の多くは高齢者層であるが、それに加えてソーシャル・メディアに精通した若い活動家らも、慰安婦を性奴隷と説明する人々には手厳しく批判するのが常である。

「これは人々の目を怒りで燃え上がらせる問題だ」と、日本の戦争記憶を専門にするニュー・ハンプシャー州ダートマス大学の准教授ジェニファー・リンドは言う。

「熱情の強さでは韓国でも同じであり、韓国の活動家らは、婦女子が暴力的に奴隷化されたという筋書きから一歩でも外れた解釈を許そうとしない」と彼女はいう。 2015年には、ある韓国の学者が「兵隊と慰安婦の関係は、一般に考えられているよりも複雑である」とする本を書いたところ、多くの箇所について見直すよう裁判所命令が下った。

出崎の2時間ドキュメンタリーである「主戦場」とは「慰安婦問題の主戦場」という意味である。この映画は既に日本と韓国では商業放映され、今秋にはアメリカ各地の大学キャンパスで上映される予定になっている。

フロリダ育ちの日系2世である出崎は、日系移民である両親から慰安婦について、ほとんど何も聞かされたことがない。出崎がこの問題について研究を始めた頃、彼は西側の報道メディアは史実について「何か思い違いをしているのではないか」と思ったという。

主流派の見方を理解するため、彼は、種々の証拠を示して説明をする歴史家、支持者、弁護士たちにインタビューを試みた。文書資料は、日本軍が売春宿の運営に直接的な役割を持っていたことを証明し、何百人という女性が、いわゆる慰安所に於いて悲惨な状況下で働かされたと証言していた。

しかし、主流派の専門家たちは、日本軍が力づくで婦女子を誘拐したことを示す直接的証拠がないこと(保守主義者たちは、この点を衝く)についても隠さず打ち明け、慰安婦とされた婦女子の人数の見積りにも大きな開きが存在することについても率直に語った。

映画の中で出崎は、保守派が指し示す1944年の米陸軍報告書に焦点を当てる。この報告書はビルマでインタビューした20人の朝鮮人慰安婦についてまとめたものであり、報告書は彼女らを「日本兵のために日本軍に付属せられた売春婦にすぎない」としたうえ、「騙されて」連れてこられたと説明する。

売春宿の運営に軍が直接係っていたことを示す重要文書を世に明らかにした歴史学の退職教授である吉見義明は、「保守派は、ある部分を否定することで、全部の状況を否定しようとする」と話す。

強制性の扱いが映画の主要な部分を占める。最終的に出崎は、女性たちは強制され又は騙されて、本人の意思に反して兵隊らに性サービスを提供させられたと話す研究者の説明に納得する。映画の中で彼は、慰安婦の存在を忘れないことは「人種差別、性差別、ファシズム」と戦うことだ、と結論づける。

保守派について出崎は、「自分は彼らを名誉毀損していない」という。「自分は、慰安婦問題とそれに係っている人たちについてドキュメンタリーを創っただけだ」と。「映画は情報を明らかにする。その情報をどう解釈するかは観客次第である」と付け加えた。

しかし、出崎を提訴した側に言わせると、彼にはバイアスが掛かっているという。「新しい歴史教科書をつくる会」の副理事長で、その名刺に「誇りある日本人をつくる!」の文字を刷り込んでいる藤岡信勝は、「“歴史修正主義者” というのは、最大の悪意がこもった単語ですよ」と話す。

別の原告の一人である藤木俊一は、当方宛てのメールの中で「これは、歴史を捏造しているのは誰かを明らかにする戦いであると私は確信する」と述べている。また、「アメリカでは、リベラル派は保守派の人間に向かって“人種隔離主義者”“KKK”“ナチス”“ヒトラー”などのレッテル貼りを好んでするけれども、彼らのいう“人種隔離主義者”とは、自分たち自身のことだ」と付け加えている。

日本に30年以上在住する米人弁護士で、TVコメンテーターとしても人気を博しているケント・ギルバートは、「映画は私の見解を誤って伝えてはいない」が、「大衆ウケを狙ったプロパガンダ映画」であるという。彼によれば「慰安婦とは売春婦にすぎない」という。「皆誰でもが知っていることだ。売春婦に会いたかったら朝鮮人を捜せ、と。朝鮮人は世界中に売春婦をばら撒いているよ」とも。

彼らは出崎と配給会社の東風映画を名誉毀損のほかに契約違反でも訴えている。原告側は、映画があくまで出崎の卒業テーマ作品であって商業映画ではないことを前提としてインタビューを受けることに同意した、としている。原告側は損害賠償の支払いと放映差し止めを求めている。

出崎と配給元の代理人弁護士の岩井信(いわい・まこと)によれば、出演者全員が署名した合意書(release form)において、出崎に全面的な編集権と著作権を委ねている旨を規定しているという。NYTでは発表された2つのバージョン合意書について精査をした。

映画にも登場する、出崎の指導教官で東京・上智大学で教鞭を取る比較政治学者・中野晃一は、原告らは「映画の解釈が自分たちにとって完全に気に入るものではなかった」ので、提訴をするための理由を捜していると思う、と述べている。

映画を観た日韓両国の観衆は、映画は慰安婦論争を理解するための新しい手法を提供するものと述べている。先月末、西江大学校 (Sogang University)で上映した際には、Chae Min-jin (26才)は「日本の右派が主張する内容とロジックを韓国人が理解することは結局のところ無理」だという。

日本の観客のうち、ある者は 自分たちの歴史教科書では得られない情報を映画は提供している、としている。フリーランスのコピーライター・広瀬つばさは、自身の映画批評ブログに、慰安婦とは「看護婦のように病院で働いて人に接するもの」とずっと思っていたと書いた。彼女は、自分が慰安婦のことを「何も知らなかったし、知る機会さえなかった」とも述べた。

出崎は、慰安婦を巡る論争に終止符が打たれるとは思わない、という。「私の結論は、これで終わりというわけではない。私は全てを知っているわけではない。自分が知っている事を基にして自分の結論を擁護できるとは思う。しかし、自分の論点のうち、あるファクターについては維持できない可能性があると考えている」としている。

 

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東京支局長 リッチ素子
井上真己子、山光瑛美は東京から、Su-hyun Lee は韓国ソウルから、報告のため情報提供に寄与した。

この記事は2019年9月19日付ニューヨーク版紙面8ページAセクションにてタイトル「日本による性奴隷化の映画で米国人が提訴される(American Sued Over Film on Sexual Enslavement by Japan)」で掲載される

映画「主戦場」 上智大研究不正調査委員会の主題と人選に関する異議申立書

映画「主戦場」被害者を支える会から「上智大研究不正調査委員会の主題と人選に関する異議申立書」の記事を転載いたします。

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【 PDF版はこちらをクリック 】

*9月4日付け学長名による通知の求めに応じて9月11日に学術情報局研究推進
センターに提出した異議申立書。ただし、委員名は、A,B、Cなどと匿名化した。
3回に分けて連載する。(藤岡信勝記)

 

2019年(令和元年)9月11日
上智大学 学長 嘩道 佳明 殿

藤岡 信勝
〒112-0005東京都文京区水道2丁目6-3
新しい歴史教科書をつくる会気付け

異 議 申 立 書

 (1)9月4日午前、貴職から「研究活動上の不正行為に係る調査について(調査の実施及び調査委員会委員の通知)」と題する文書を落手いたしました。私は、「上智大学における研究活動上の不正行為に係る調査の手続きに関する内規」(以下、「内規」と言う)第15条第2項に基づき、「調査委員会委員に関する異議」を申し立てます。

しかし、調査の内容(主題)に関しても重大な異議がありますので、併せて申し述べます。その理由は、調査の内容(主題)と調査委員会の委員に対する疑義が密接・不可分に関係しているからです。そこで、話の順序として、調査の内容(主題)に関する問題から先に述べることといたします。

(2)私は、上智大学を舞台にして、学術研究の名を騙って行われた一連の不正行為によって、自身の社会的名誉と信用を毀損される被害を受け、その被害は今現在も継続・拡大しております。事件の概要は、上智大学の大学院生の学術研究に私たちが研究対象者として協力したところ、その研究資料(インタビュー映像)を、私を一方的に攻撃し侮辱する内容の商業映画の作成に無断で利用され、全国で一般公開されているというものです。
その研究手続きは、研究協力者への権利侵害を未然に防ぐために大学が定めている研究着手条件に一切従わず、また、実際にも、必要な措置を全く履行しない形で実施されました。この研究上の不正行為によって、私は被害を未然に防ぐ機会を奪われました。
しかし、この不正行為は、単に貴学の元大学院生の暴走によって起こったというものではありません。その不正行為において、主たる実行犯である大学院生を指導する立場にあった指導教授自らが、着手段階から一貫してこの計画を企画・推進していた、いわば「共同正犯」であることが明らかになっているのです。
ですから、私たちの告発は、当然ながら元大学院生・出崎幹根のみならず、担当指導教授であった中野晃一氏をも対象としているのです。このことは、私が執筆し、市販雑誌に掲載された二つの文章のタイトル、すなわち、「慰安婦ドキュメント『主戦場』 デザキ監督の詐欺的手口」(『月刊Hanada』2019年8月号)と「『主戦場』指導教官中野晃一上智大学教授の責任」(『同誌』2019年9月号)からも明らかです。これらの文章は、貴学の側でも十分に承知されているはずです。

(3)私は、このように、この問題を社会一般に向けて発言しているだけでなく、貴学に対しても直接告発し、問題を提起して参りました。まず、4月27日、私は同じ被害者の藤木俊一、山本優美子とともに3名の連名で、不正行為が行われた上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科の委員長あてに、問題の発生した経緯を説明するとともに、インタビューに訪れた3名の元大学院生と指導教授に関する質問状を送りました。ところが、委員長からはこれに対し、本人の文書による許可がなければ答えられないとの返信が送られてきました。これは、被害者が、加害者の所属機関に被害を訴えているのに、加害者の同意がなければ、機関として対応しないということです。あまりに不可解ゆえに、私たちは再度、念を押して質問しましたが、同じ返答が返ってきました。以上が第一段階です。
そこで、6月21日、私は上智大学の卒業生である山本優美子の協力のもとに、研究倫理上問題のある事案の告発窓口として「研究倫理に関するガイドライン」で定めている監査室に電話をし、窓口担当者に30分ほど説明をしました。そして、貴学の責任者の立場にある学長または研究倫理担当の副学長に説明するためのアポを求めました。その趣旨は、事態が悪化する前にこの件について、学問の府である大学にふさわしい主体的な判断によるけじめをつけてもらうことを期待したからです。
ところが、これに対する当方への返事は、学長・副学長との連絡がつかない、連絡はついたが検討中である、面会するかどうかも検討中だ、いつまでに結論を出すかは答えられないなどの全く誠意を疑われる対応に終始するものでした。なお、この時点までには、4月19日の参議院議員会館における中野晃一教授の講演で、同教授が出崎の担当教授であることを自ら名乗り出ていました。以上が第二段階です。

(4)上智大学当局において、事態の深刻さを理解する様子が全く見られないために、私たちは、やむなく、8月29日、内容証明郵便にて「通告書」を上智学院理事長並びに上智大学学長宛てに代理人経由で送付しました。これが第三段階で、この内容証明郵便による「通告書」の送付は、上記の第一段階と、第二段階の貴学の対応の結果として生じたもので、事態は一貫した一連の流れの中にあるものです。
従って、調査委員会は、その検討課題として、「通告書」の中で触れている研究不正について遺漏なく検証することが義務づけられています。また、調査委員会の人的構成も、「通告書」において告発している内容を踏まえて構成されなければなりません。
もしも、本調査委員会と「通告書」に直接の因果関係がないと主張されるのであれば、貴学は6月21日の告発電話の続きとして当方の事情聴取から始めなければならないはずです。私たちに告発の趣旨を説明させ、文書その他の証拠を受領する必要があります。「通告書」を調査委員会でとりあげないのであれば、私たちの告発のステートメントは完結しておらず、何を検討課題としてどのような人選をすべきなのかの起点が存在しなくなるからです。

(5)次に、以上を踏まえた上で、9月4日に送られてきた文書が求める、委員の人選に関する異議申立を行います。しかし、具体的な内容に入る前に、まず一般的に、この種の調査委員会の人選に関する原則を検討しておきます。
 今回のようなケースの場合、調査委員となるべき人物は、次の条件を満たすべきです。
 (a)本件卒業制作に主題として扱われているテーマに関連する言論や運動に関わっていない者でなければなりません。それは、判断の中立性を確保し人脈的繋がりを避けるためです。
 (b)外部有識者については、上智大学に在籍していた経歴のない人物であるべきです。
 (c)研究者については、現役の研究者であることが必要です。本委員会の中立性は、委員が自身の職業的信用を賭けて判断を下す点によってのみ担保されうるものといえます。証拠を無視したり、必要な検討を懈怠して判断を導いた場合、本人の学術的信用が打撃を受けるという重みがなければ、どのような恣意的な結論も導いてしまうことが可能です。従って、研究者として現役を退いた者は不適格である、ということになります。

(6)9月4日に着信した文書によれば、今回の調査委員会委員(候補)の名簿は次の通りです。

 ① A(本学教員 外国語学部ドイツ語学科)
 ② B(本学職員 学長付)
 ③ C(外部有識者)
 ④ D(外部有識者(弁護士 卓照綜合法律事務所))
 ⑤ E(外部有識者(弁護士 卓照綜合法律事務所))

(7)まず、①のA氏は、外国語学部ドイツ語学科の教授で、選出根拠は、内規第11条第4項の(1)に、「研究活動上の不正行為が疑われる被告発者の所属組織(学部又は研究科等)以外の教員1名」とあることによるもので、被告発者の所属組織(大学院グローバル・スタディーズ研究科)とは異なる、外国語学部ドイツ語学科に所属していますから、形式的にはこの内規の規定に合致しているように見えます。
 しかし、そもそも、内規第11条第4項には、「調査委員会の委員は、告発者及び被告発者と直接の利害関係を有しない者で、学長が指名する次の各号に掲げる者とする」という規定があって、その原則の一つの適用例として、(1)の同一の研究組織からの選出を避けるという規定があるものと解されます。
 そこで、この原則に基づいて検討してみると、A教授は中野晃一教授とは所属こそ異なるものの、両者は研究上密接な間柄にあることがわかります。例えば、A教授は、「ソフィア・コミュニティ・カレッジ」の2016年度秋期教養・実務講座「18歳からのメディア・リテラシー」のコーディネーターを務めていますが、10回の講座の中で基調講演の位置を占めると考えられる第1回の講師として中野晃一教授を据えています。
 しかも、10人の中には、荻上チキ(評論家)と堀潤(ジャーナリスト・元NHKアナウンサー)の両氏が含まれています。両氏は、4月20日に「主戦場」の一般映画館での上映が始まった直後の4月24日と25日に、それぞれ、TBSラジオとJ-WAVEの番組に出演し、出崎を招いて彼の商業映画のプロモーション番組の司会役を務めていた人たちです。すなわち、学術研究ではなく同一の方向性の運動に熱心に取り組んでいる、いわば運動上の仲間であり、中野教授につらなる運動上の人脈の中にいる人です。
 従って、A教授は決して中立的な第三者ではなく、中野教授と共通の利害関係をもつ、深いつながりのある人物であり、今回の件について公平な判断を期待することはできないと言わざるを得ません。すなわち、上記(a)の原則に反します。しかも、同教授は学内から選ばれた唯一の教授職の方であるため、内規の規定によって自動的に調査委員会の委員長に就任することになります。
 従って、私はA教授について委員として忌避いたします。800人もいる上智大学の教授の中から、形式的にも実質的にも中野教授の人脈に属さない人を選ぶのは容易なことと想定されます。よりによって、中野教授と人脈的につながる人物は避けるのが常識ではないでしょうか。

(8)次に、②のB氏は、学長付の職員ということで、特に異議をはさむ理由はありません。

(9)③④⑤は、「外部有識者」となっていて、委員5名中3名を占めていますが、これは内規第11条第3項で「調査委員会の委員の過半数は、上智学院に属さない外部有識者でなければならない」という規定によるものと理解できます。しかしながら、③のC氏は、肩書きは単に「外部有識者」とのみ表記されていますが、上記の(a)(b)(c)いずれの原則からも、調査委員会の委員としては不適格と言わざるを得ません。
 第一に、C氏は、上智大学に在籍(1992~2009)していた現上智大学名誉教授です。そのうえ、本件被告発者である中野晃一氏(上智大学比較文化学部講師としての着任が2002年)と在任期間も重なります。上記(b)の原則に明確に違反し、「外部」有識者としての客観性を全く欠いております。
 第二に、C氏は、既に現役を退いた名誉教授であり、調査報告でどのような結論を導こうと自身の学術的信用が今後のキャリアに影響するリスクがないため、中立性を担保する資格に欠けると言わざるを得ません。すなわち、上記(c)の原則に反します。
 第三に、すでにA教授について述べたのと同じ理由で、中野教授と同質の方向性を共有している方であり、本件研究において扱われたテーマに関連して、私たちを敵対視するような政治的立場から活発に発言・活動する人物です。
 例えば、C氏は「憲法9条にノーベル賞を」という運動団体の支援者であり、中野、C両氏がこの団体の呼びかけ人になっています。また、「表現の自由を考えよう 市民らが25日、茅ヶ崎で学習会」(2019年1月22日付け神奈川新聞ネット記事)のように、活発な活動を地元でも行っています。このような人選は、上記(a)の原則に反することは明瞭で、この段階に至ってさえもなお、厳正中立な観点から事件を解明するのではなく、研究上の不正行為の実行者らと通謀し事件を有耶無耶にしようとする意図があるのではないかと、疑わざるを得ないものです。
 以上の理由から、C氏についても、忌避させていただきます。

(10)外部有識者のうち、残りの2名は、いずれも弁護士となっております。しかも、二人の弁護士は、同一の法律事務所に所属しています。お二人は上智大学の顧問弁護士なのかもしれません。こういう状況のもとで、公正な調査と審議が期待出来るのか、はなはだ疑問です。かりに貴学の顧問弁護士でなくても、なぜ同一の弁護士事務所から外部有識者を任命しなければならないのか、疑念を禁じ得ません。外部有識者には公平な判断をできることが外見上も明らかな人物を選ぶべきです。この点、人選枠組みの再考を求めます。

(11)先に述べたとおり、私たちは三つの段階を経て貴学に研究倫理に反する不正行為を訴え続けてきました。この告発は完全に貴学の研究倫理規定に則したものであるにもかかわらず、貴学は門前払いをするか、無視するという態度に出ました。最後の段階では、内容証明郵便にて「通告書」を直接、学長・理事長宛にお送りしたわけです。
 すると、そのとたんに調査委委員会の発足が告げられ、人選の原案が届けられる展開となりました。4月27日から数えてまる4か月、6月の監査室への通報から数えても2か月半という長期間にわたって、全く私たちの告発を取り上げようとせず、内容証明郵便を受け取って初めて当方ににわかに連絡をするとは、問題の認識の欠如と誠意の欠落を疑います。

 (12)貴学がそのような行動をとった理由は、いただいた文書の中から垣間見えるものです。私あての文書の冒頭には、次のように書かれています。
 「標記の件について、2019年6月21日及び同月24日に貴殿から本学修了生が在学中の2017年度に制作したGraduation Project について『上智大学人を対象とする研究に関するガイドライン』に基づく審査や手続きを経ておらず、研究活動上の不正行為の疑いがある旨の通報がありました。」
 ご覧のとおり、ここには大学院生の指導教授である中野晃一教授の責任が、調査の主題として全く書かれていません。先に言及したとおり、中野教授は単に出崎の形式上の指導教授であったのではなく、学術研究の名を騙って承諾書を詐取しようとした行為の共同正犯であり、しかも私から承諾書のサインを取らなければ研究に着手してはならない、とまで課して、この詐欺行為を先頭に立って推進していたのです。
 貴学学長におかれては、通知を私あてに発信する時点ではすでに内容証明郵便による「通告書」が手もとには届いていたわけですが、それを無視するかのような対応をしています。そのことは、この問題を、卒業した大学院生のみの問題として矮小化し、中野教授の責任を全く不問に付すという態度の表れと断じざるを得ません。だからこそ、よりによって、中野教授の人脈にあることが明白な人物を委員や委員長に選んで、調査委員会を組織したという形だけを作って見せた上で、問題なしという結論を出して終わりにする、という狙いであることは見やすいことです。遺憾なことに、こういうやり方にはそのどこにも、公正性・中立性・客観性を求める学問共同体のリーダーとしての真摯な態度が感じられません。

 (13)私たちは二つの異なる告発をしているわけではありません。事件は一つで、不正行為が疑われる対象者は二人です。6月時点の告発が主に元大学院生を対象としていたという屁理屈をつけるのであれば、直ちに中野教授に関する告発を監査室に対して行います。しかし、それは時間とエネルギーのロス以外の何ものでもありません。「通告書」を正面から検討するのか、あくまで無視するのか、この点に関して明確なご返答をいただきたいと存じます。
 予備知識のない当方には、僅か7日間で異議申立の判断を迫ったのですから、この異議申立への返答はそれと同等ないしそれよりも短い期間で回答するように要求します。私たちは調査に協力することはやぶさかではありませんが、もし明確に忌避した当方の人選に関する異議が無視されるなら、可能なあらゆる手段をもってことの真相を明らかにし、上智大学の責任を追及することになると申し上げておきます。
学長におかれましては、貴学の信用と名誉がかかっていることを十分ご認識いただき、研究者としての真摯で適切な対応をされるよう強く要請いたします。なお、この文書の写しを、上智学院理事長にもお届け下さいますようお願いいたします。

(以上)